横浜元町にある博物館のようなお店、荒井鈑金製作所

マザーハウス横浜元町店スタッフが、個人的におすすめする横浜元町周辺のお店やスポットを紹介します。横浜元町に「来る人」と横浜元町に「居る人」が一緒に街を楽しみながら、たくさんの喜びが生まれることを願っています。

こんにちは、マザーハウス横浜元町店スタッフの若井です！大きな博物館も小さなギャラリーもどちらも好きで、時々訪れます。

博物館のようなキッチン用品店

マザーハウス横浜元町店を出て左に数十メートル先にある「荒井鈑金製作所」をご紹介します。創業明治五年と書かれキッチン用品が並ぶ入口は、ここだけ浅草かっぱ橋の道具街かと錯覚してしまいます。

叩いて作られたであろう銅のタンブラー、重厚感ある急須、歴史がありそうなコーヒーミル、アートのようなワイングラス、目玉焼きサイズの小さなフライパン、白地にフルーツ柄のホーローのお鍋・・・2階には、山手の洋館で使われていた1916年製のイギリスのガスコンロや、オーダーメイドのシンクの見本がありました。店内をぐるりと回って受けた印象は「博物館みたい！！」

実はキッチン用品店ではない

取締役の荒井さんにお話を伺うと、実はこちらのお店、メインはキッチン用品専門店ではないそう。「荒井鈑金製作所」の名前のとおり本業は製造業で、一般のお客様で多いのがオーダーメイドのシンクやキッチンラックの制作だそうです。

特別にお店の奥にある作業場を見せていただきました。表のお店より広い場所に、金属の板を裁断したり、曲げたり、溶接したりする大きな機械が並んでいます。年季の入った作業場からは、職人たちがここで作業している音や空気が伝わってきます。

全国の個人宅からオーダーが入ると、まずは1ヶ月かけてじっくりとヒアリング。わざわざオーダーする方はキッチンへのこだわりが強いからこそ、出来ること・出来ないことを丁寧に説明し、アイディアをきっちりと詰めて、納得してもらうことが大切だそうです。そこから実際に製作するのにさらに1ヶ月を費やします。

「とがったこと」をするお店

そんなオーダーメイドのプロセスを大切にしているからでしょうか。お話しを伺う中で、荒井さんのお店に対するこだわりも、徐々に知ることができました。

製造業としての創業は明治5年（1872年）ですが、キッチン用品を取り扱うお店をオープンしたのは昭和47年（1972年）だそうです。
キッチン用品を買おうとするほとんどの人は、百貨店やホームセンターへ行きます。荒井さんの言葉を借りると、そこで「事足りる」。必要な機能の備わったものを安く見つけることができます。
荒井鈑金製作所のように個人でキッチン用品を販売しているお店は、他にはなかなか無いそう。ではなぜやっているのか…？荒井さんは「とがったこと」と表現されていました。

例えば、やかん。ただお湯を沸かせれば良いだけではなく、持ち主が気に入って愛着を持って使っていただけるか。デザイン・耐久性・使いやすさ・軽さ・希少性など、その商品のポイント＝「とがり方」は様々です。そしてその商品のどの部分が刺さるかは人それぞれです。
こだわりを持って、狭めて狭めて、ドンピシャな商品を一人のお客様へ届ける。だからそれぞれの商品が輝いていて、個性的で、博物館のように感じられる美しさがあるのだと納得しました。

そんな大衆受けしない「とがった」お店は、正直リスキーでなかなか儲からない。それでも、「そういう店でありたい。そんなお店があるのが元町ショッピングストリートの面白さだと思います。こういう多様性が無くなってしまった世の中は、本当に豊かと言えるのか。こだわりは持ってるつもりなんですよ。」と語る荒井さん。その落ち着いた声の奥に、長い間この街に燈し続けているものを感じます。

こだわりの店がある元町ショッピングストリート

荒井鈑金製作所では海外製品も取り扱っています。手作りの個体差があったり、ひとつひとつにストーリーのある商品です。「もちろん商売だから流行りのものもあるけど、こだわりはしっかりありますよ。」と荒井さん。昔は国産で作っていたメーカーも、どんどん海外製に切り替わってしまっているそうです。でも、日本ならではの技術や文化が少しでも残って欲しいという思いを持って、荒井鈑金製作所の商品は並べられています。

「マザーハウスさんとも、通じるものがもあると思います。」と荒井さんは言ってくれました。長い歴史のあるお店と街を守り続けている人からの言葉。まだまだ働き始めて日の浅い私は、おこがましいかなと思いながらも、共感でき、ご近所で仲間を見つけたような気がしました。

日々お店に立ってお客様とお話ししていると「久しぶりに元町に来たよ、何年ぶりだろう！変わったね〜」という声をよく聞きます。閉店してしまったり、また新しく開店したり、街は年月を経れば変わっていくものです。
そんな元町に、荒井鈑金製作所のようなこだわりのあるお店が昔から変わらずあることを知り、私は自分が働く街への愛着がまた強くなりました。

マザーハウス横浜元町店　若井

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