見出し画像

新感覚!解決しないミステリー小説 ロンドの旅Part1ロンドの旅 Chap2プサンの事件

6.証言

現地に辿り着いたが、別荘地のせいか人の気配がない。効率よく情報を得るべく、二手に分かれて調査することにした。

 じゃあメライ、別荘の中を頼むよ。

 分かったわ。
 行きましょう。

 はい。
 では、周辺の確認はお願いします。

 わかりました。
 バルカ、僕らは目撃者を探しに行こう。

 …。

しばらく周囲を歩いたが成果はなく、あたりは暗くなっていった。

 聞き込みと言っても、誰もいないな。

 …。

 このまま誰も見つからなければ、この辺りの土を持ち帰り成分を調べ遺留品と照合するか、若しくは…

 ひと

 ん?あ、向こうに誰かいるね!よし、話を聞いてみよう。

娘を抱き上げ、猛スピードで駆け出した。相手は牛歩のごとくゆっくりと進んでいたためすぐに追いついた。

 あの、すみません。お尋ねしたいことがありまして、お時間よろしいでしょうか。

前に回り込み、娘を下ろすとともに問いかけた。あれほど俊敏に動いたにも関わらず、呼吸の乱れが一切ないのは、やや不気味だ。

 おお、びっくりした。はて、何用ですかな?

 驚かせてしまい、すみません。僕らは16日にここで何が起きたかを調べてます。失礼ですが、この辺りにお住まいでしょうか?

 ああ、仕事を引退してからは、ほとんどこっちで過ごしてるよ。君は探偵か何かか?警官には見えないが…

 ええ、ある意味ではそれに近い仕事かも知れません。

口角を上げ、白い歯をこぼして答えた。正確に職業の説明をし始めると、理解を得られるまでにある程度の時間を要することは何度も経験した。いつしか、特に必要のないときは訂正せず、相手の認識に合わせるようになっていた。

 そうかい。えーと、16日って言うと…あの日か。

 あの日と言いますと?

 あの有名な政治家先生の別荘に何十年ぶりに車が停まってた日だよ。

 あなたが仰る政治家、別荘、車はこの写真のとおりで間違いありませんか?

 うむ、間違いない。数日前のことを忘れるほどまだボケとらんよ。

 貴重な情報をありがとうございます。この政治家さんとはお知り合いで?

 何十年も前はよく家族で来てたからね。別荘も近かったし、何度かお邪魔したこともあるよ。

 そうでしたか。当日はご本人とお話しは?

 いや、ワシが見たのは車が停まっていたことだけで、人は見てないな。

 車を見たのは何時ごろか覚えてらっしゃいますか?

 うーん、たしか朝散歩していたときだな。

その時の状況やほかに気になることなどを聞き、老人と別れた。さらに周辺を歩き、何軒か訪ねるも不在で、これ以上の有力な情報はなかった。

 バルカ、あちらの状況も気になるしそろそろ戻ろうか。

 …。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?