映画感想/『君たちはどう生きるか』
ネタバレしません。というかできません。
まず序盤はこう思いながらずっと観ていました。
「本当に何も内容を知らない物語に触れるのって初めての体験だ」
なんだこれ、なんだこの体験。めっちゃ異質な感覚。
この体験をするだけでも、なかなか面白いと思います。
だって、どんな映画でも小説でも、
なんとなく予告やあらすじを見ていたり、
内容を想起できるようなポスターや表紙絵があったり、
出演者を知っていたするじゃないですか。
でも今回のこれは、
・ジブリが作ったアニメ映画であること
・タイトルが『君たちはどう生きるか』ということ
・ポスターのよく分からない絵
という事実しか分かってないんですよ。
現実の話なのかファンタジーなのか
現実だとして、時代は現在なのか過去なのか未来なのか、場所はどこなのか
ファンタジーだとして、どんな世界観でどういうキャラクターがいるのか
ぜーんぶ分からないんですよ。
その状態で、いざ本当に上映が始まると、
あ、そうか、「本当に何も内容を知らない物語に触れるのって初めての体験だ」ってなって。
うわ何これ。なんだこれ。と。
物語云々よりこの、これまで味わったことのない、
異質な体験を味わっていることに気持ちを持っていかれている部分が結構ありました。
これが、私的には結構面白かった。
で、なんとかその感覚に慣れてきて、やっと意識が内容の方に向いていくのですが、
最後まで、この感覚が根っこに残っていて、
良い意味でも悪い意味でも「なんだこれ」体験で終わる。
もちろん細かく「あれはどう」「これはどう」と考えられる語れる部分はたくさんあるのですが、
なんだかそれは逆にもったいないような。
各々が感覚で受け止めて、その感覚のまま感じて終わるのでいいんじゃないかなと。
無理して考えなくてもいいんじゃないかなと。
私、この作品に限らずなのですが、
物語の「解説」「解釈」とかにあまり興味がないタイプでして。
もちろん面白いなーと思うこともあるし、
そこまで解釈して言葉で噛み砕ける人は純粋にすごいなーとも思うのですが、
でも結局、
物語って受け手がどう受け取ったかが大事でしょ、
出来上がった「作品」が全てでしょ、と思うのです。
作者が「実はあそこはこうでこうでね・・・」とか言ってても、
「いやあ。分かってほしいなら分かるように入れるか、誰にも語らずに自分の心の底にしまっといてよ」って思っちゃうし。
第三者が「あそこのあれは、元ネタが・・・」と言ってても、
「まあ。そうなのかもしれないけど、でも本当の本当は作者も何も考えてないかもよ」とか思っちゃう。
なので、映画だとパンフレットも基本買わないし、
「作成秘話」とかもそんなに興味がないのです。
だって出来上がったものが全てだから。
(お金を落とさないという意味ではあまり良いお客さんではないことは理解してます、すみません)
というわけで。敢えて無理して考えたり語る必要はないのでは、と。
だからこそ。
この異色の内容を開示しない宣伝をしない方式を取ったのでは、と。
それを含めてひとつの作品になっているのでは、と。
私はそう受け取りました。
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