観劇記録/木下歌舞伎『桜姫東文章』

京都で観てきました。

初・木下歌舞伎です。ずっと観てみたかったのですが今回タイミングが初めて合いました。

おーもしろかった!!

私、歌舞伎は全くなんです。
歌舞伎の楽しみを知りたい!と思って何度か観たのですが、どうも分からんのです。

唯一まあ楽しかった気がする…?というのが、ナウシカ歌舞伎を映画館で上映されたものです。でもそれでも途中は寝ちゃったのです(笑)

『桜姫〜』は歌舞伎で有名な本である、というのみのうすーい知識のみで行きました。あらすじ情報とか皆無。

木下歌舞伎自体も「なんかおもろいらしい」という知識くらいで、普段からどんな風な公演をされてるのか全く知らない。

そんな私なので、以下『桜姫〜』という演目に言及するというより、「木下歌舞伎」というものにいかに魅力を感じたかという感想文になります。

歌舞伎の「?」を正当化してくれる。

歌舞伎は、

イヤホンガイドを付けて観てても「?」という展開が多い。登場人物の行動や気持ちに理解が追いつかない。

それから、大筋に関係ないのに主役級の扱いで唐突に出てくる役が多くて「?」となる。

あと展開が回り回ってくどい。例え話とかもとにかく長い。なので途中から何の話してるのか「?」で置いてかれる。

私が歌舞伎がどうも好きになれないのが、上に挙げたような理由なのですが…(笑)

木下歌舞伎はそれを
「ま、そういうもんなんだよ歌舞伎って、許してちょ」と言ってくれた気がしました。

例えば、登場人物のよく分からない行動にちょっとツッコミを入れてくれたり、笑いに変えてくれたり、

現代語訳として上演するなら省いても良さそうな登場人物や展開も敢えてきちんとやり切ることで、「そうそうこういう冗長なやり取り多いよな(笑)」と共感できた。

歌舞伎の「様式美」を教えてくれる。

現代語訳ではあるのですが、

歌舞伎のとうとうとした語りや、長すぎると感じるほどの間の取り方なんかも敢えてコピーされていて「ああなるほど、この空気感を楽しむのか」と改めて理解できたり、

立ち回りや見得も簡略化しつつもやってくれるので、「ああなるほど、このアクションを楽しむためにこれまでのうっとおしい(笑)話の流れが必要だったのね」というのが分かったり。

それと役者が役を演じていないときも、観客役として舞台の周りに寝たり座って飲み食いしながら、登場人物が見得を切ると大向こうを言ってくれます。

観客としてこれぐらいだら〜んと見ていいんだよと教えてくれると同時に、大向こうの本来の意味みたいなものを体感できたようなそんな気がしました。

歌舞伎が元々が大衆娯楽だということは、知識としてはよく知ってるのですが、どうにも実感として分からなかったのですが、それがすこーしだけ分かった気がします。

歌舞伎のお話を教えてくれる。

歌舞伎の作品を元ネタにしているので、当たり前っちゃあ当たり前ですが、ストーリーを知ることができます。

これの何がそんなにメリットかというと、歌舞伎のお話って長くて登場人物も多いので、文章であらすじを読んでも皆目分からないんですよねえ。

それから、全く違う役を同じ俳優が演じるのが楽しい、みたいなちょっと特殊な楽しみ方も多いのが歌舞伎。それをそのまま理解できるのも面白かった。

芝居の進め方も、一場面ごとを先に字幕で簡略化したあらすじが2行程度で映されて、そしてその場面を演じる、という言ってみれば「ネタバレ」してから進みます。

「AとBがCの持ち物を奪おうとして、Cを殺す。」みたいな「ええ!それ先言っちゃう??」みたいなものも先に文字で映し出されます。

でもこれも却って面白いんですよね。歌舞伎ファンの方というのは、演目の「物語」は知った上で「物語」を楽しみに観ているというより、この俳優がこの役のこの場面を「どう演じるか」を楽しむのだと思うので、そういう楽しみ方を疑似体験できます。

(ちなみにこの字幕に幕はじめには「一幕」「二幕」とかも映されるのですが、さすがに「六幕」まで来ると、「えええまだあるの」という少々うんざりするような観客の空気感も感じることができる。・・・私だけがそう感じたのかもしれないが。いやでもやっぱり長いでしょ。どこまで話引っ張るねん、と。でもこれも、今で言うといつまでも完結しない人気漫画みたいなものなのかなと考えたり。)

また他の「木下歌舞伎」作品もぜひ観たい。

そんな感じで、とても楽しい演劇体験でした。

上記には詳しく書いていませんが、

俳優さん達も個性豊かで楽しかった。

衣装や美術は現代アート風な「○○コレクション」とかでランウェイを歩いていそうなくらい、私のような凡人には理解できないような奇抜なファッションだったり、

BGMや効果音も面白くて、舞台上にミキサー卓があってそこでDJのように一人、芝居に合わせて音を作っている。

とにかく言葉では説明できない、異次元の舞台作品でした!

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