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読書感想

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自分の読書感想noteまとめ
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2023年7月の記事一覧

読書感想/『夜間飛行』サン=テグジュペリ

サン=テグジュペリを読もう(個人的)月間! 『星の王子さま』『人間の土地』に続きラストこちら。 ▼『人間の土地』感想はこちら。(ほぼ名言の引用ですが…) 『夜間飛行』は、 標題の『夜間飛行』と『南方郵便機』の2編の小説が1冊になった新潮文庫版。 『人間の土地』で、彼の読みづらい文章には一通り慣れたつもりだったのですが、 やはりこちらの2作品もなかなか苦戦しました。ちびちび読み進めながら、結局読み終えるのにい1ヶ月弱かかったような気がします。 特に『南方郵便機』。 『

読書感想/『奉行と人相学』菊池寛

最近、「見た目で人を判断する」みたいな昔の当たり前な感覚に触れるのが好きでして。 今はそういうのダメっぽい空気感あるのは分かってるし、事実そうだと分かりながらも、とはいえそういう感覚に共感してしまう自分もいるのが事実でして。 この入りがもういいじゃないですかー。 こういう前提が置かれてから始まるんですよ。 なんかしびれません? ここから始まるストーリーは、人好き好きというか(正直私的にそこまではまらなかったのですが笑)。 もうこの序文が好きですね。ここだけでお腹い

読書感想/『まぼろしのパン屋』松宮宏

読んでいると、焼きたてのパンのこうばしい香りがしてきた。 ・・・と思ったら。 実際に、台所のパン焼き機くんがパンを焼いていただけだった。 こういった読んでいた状況や読んでいた場所とか含めての「読書体験」だと思うのです。 そういう意味で、私に思い出に残る読書体験を提供してくれた本でした。 標題の『まぼろしのパン屋』という中編作品と 『ホルモンと薔薇』『こころの帰る場所』という2編の短編で1冊になった本。 『まぼろしのパン屋』は、面白くなってきたぞ、と思ったところで 尻す

読書感想/『一房の葡萄』有島武郎

小学校か中学校かくらいのときに、学校で読まされたような記憶・・・。 こんな淡いお話だったんだなぁ。 こういう類の少年時代を振り返る系は、子供時代に読んでも「ふーん」で終わるけど、 大人になって読むと、なんでこんなにも切ないんだろう。 子供時代の大切さって、大人が散々語って聞かせるけど、 どうやったってその当時・当事者の子供達は 「今」の貴重性のほんとうの意味には気付けないから、 もどかしいですよね。 記憶持続して、人生やり直したいわー。 ▼窪田等さんの朗読で読了。

映画感想/『君たちはどう生きるか』

ネタバレしません。というかできません。 まず序盤はこう思いながらずっと観ていました。 「本当に何も内容を知らない物語に触れるのって初めての体験だ」なんだこれ、なんだこの体験。めっちゃ異質な感覚。 この体験をするだけでも、なかなか面白いと思います。 だって、どんな映画でも小説でも、 なんとなく予告やあらすじを見ていたり、 内容を想起できるようなポスターや表紙絵があったり、 出演者を知っていたするじゃないですか。 でも今回のこれは、 ・ジブリが作ったアニメ映画であること

読書感想/『檸檬』梶井基次郎

「檸檬」ひとつでここまで想像を膨らませられますか。 まともな人間には無理だよ。やはりこういう繊細な感覚の持ち主というのは、先天的な飛び出た何かがある気がしてならない。 そもそもこれは想像なのか? 想像だとしてもすごいし、リアルに作者が体感したことだとしてもすごいし。 いや・・・「すごい」とオブラートに包んで言ったけど、 正直言ってしまうと「気持ち悪い」「不気味」まである。正直、異様だ。 けれど、異様なのに、なんだか分からなくもないというのが不思議なもので。 読み手各々

読書感想/『猫と庄造と二人のおんな』谷崎潤一郎

開いて1ページ目に、 ですよ。 こんなん、しょっぱなからおもろいやん。 とても短い物語です。 寝る前に枕元でちょっとだけ読んで、を繰り返すこと たった二晩で読めてしまいました。 谷崎潤一郎ってこんな読みやすい文章も書いてるんだ。・・・なーんて。偉そうなこと言えるほど読んだことないです。ちゃんと読んだのは『春琴抄』くらいです。 猫に翻弄されるおとこと、 その男に翻弄される二人のおんな。 「嫉妬」という感情をとてもリアルに卑屈に、 それでいて「猫」を通して描かれている

読書感想/『ナイルに死す』アガサ・クリスティ

Audibleで聞きました。 途中から惰性で聞いてたので細かいところは覚えてないんですが(笑) 割と最近、映画の方で『ナイル殺人事件』を観て、おおまかにはストーリーを分かっているつもりだったので、あまり真剣に聞いていなかったという理由もあります。(でもやっぱりちゃんと聞かないとだめだった。今度は活字で読みます。) けれども、最後の犯人が動機を語るところだけでも聞いた甲斐はあった。 クリスティの人物像の描き方はやっぱり好きですね〜。 終盤、推理を披露するあたりで、 「

読書感想/『読みたいことを、書けばいい』田中泰延

最近noteを書くようにしているので、文章術の本でもひとつ読んでおくか、と思いまして。 家の本棚に唯一あったこちらを読みました。 この本を買った理由は、『ゆる言語学ラジオ』にはまり、↓ スピーカーのおひとり堀元見さんの「ビジネス書100冊」企画を、Youtubeで流し見していた時期がありまして、↓ 基本これは、ビジネス書を小馬鹿にしながら楽しむという、あまりお行儀のよくないエンタメのひとつなのですが(私はそういうの好きですよ。そういう笑いもあっていい)。そのなかで珍しく

読書感想/『カラフル』森絵都

森絵都さん。 たしか高校生くらいのときに『風に舞いあがるビニールシート』を読んで、なぜか自分にはまらなくて、内容とか全く覚えていないのに、そのはまらなかったという事実だけを覚えていて、今までなんとなく敬遠していた作家さんでした。 今回そんな作家さんの作品を手に取ったのは、 『カラフル』が作品として有名なのは知っていたからかなぜか自分の積読本のなかにあり、 ちょうどさくっと読めそうな雰囲気の本を読みたいなと思っていた時期でもあり、 今度舞台版を上演するというのを知りまだ観に

読書感想/『赤いモレスキンの女』アントワーヌ・ローラン

「モレスキン」がタイトルに使われてることに惹かれて、手に取りました。 モレスキンといえば、厚手のしっかりしたカバーの高級ノートブック。何か大切なものを書き留めておきたくなるような、そんなノートブックです。 私は文房具好きなので、このタイトルに一目惚れしました。 訳者あとがきとか読んでいる限り、有名な作家さんなんでしょうか・・・?アントワーヌ・ローラン。 私は全く知らず、とにかくタイトルに惹かれた、ただそれだけです。 物語は・・・ この裏表紙がとても分かりやすいのでこ

読書感想/『人間の土地』サン=テグジュペリ

『星の王子さま』を読む機会があったので、ずっと読みたいと思っていたテグジュペリの他の作品にやっと手を出しました。『夜間飛行』もこれから読む予定。 当時まだ飛行機という乗り物が命の危険と隣り合わせだった頃、常に死を感じながら、砂漠が広がる大地を、星の明かりだけを頼りに飛んでいくということの、その感情をまざまざと追体験させてくれる文章。 飛行機乗りとしての、作者本人の体験を書いた紀行文というか随筆というか冒険譚というか。 でも事実をありのまま書くというよりも、作者の思考や思

読書感想/『サピエンス全史(上下)』ユヴァル・ノア・ハラリ

やっと読み切った。かれこれ半年ぐらいかかった気がする。ずっと枕元に置いて、寝る前気が向いたときに読んで、を繰り返してた。 長期間かけて読み過ぎて、正直細かい部分は頭に残ってないです。 概要を端的に説明できるほどの言語化能力はないのですが、 人類がどういう理由・経緯で今日まで繁栄を極めて来たのか、そして今、果たして人類は本当に幸せになったのか?これからなっていくのか? という壮大な歴史を、実際の史実と客観的な視点から、分かりやすい身近な例を取り上げながら、読者のなかに落