![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/84515674/rectangle_large_type_2_334542b7b4747a7b8c90e6a540bb1e1a.jpg?width=1200)
ネジ
彼が帰ってきた。
とても長い旅であった。
どこへ行っていたのかは知らない。
何処であろうと気にすることではない。
彼がアパートを借りた。
もう旅には出ないのだろう。
私は、引越しを手伝った。
彼の宝ものたちを飾った。
どこかの喫茶店のコースター。
町のチラシ。押し花。
どこで撮ったのかも分からない写真。
それを大きく引き伸ばし、額に入れて。
「鋲でなくて大丈夫かしら」
少し、不思議がって聞いた。
「いいんだ。もうしばらくここにいるから」
少し、悲しく嬉しそうに彼は言った。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?