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#3 「社員は1人、お互いの顔も知らない?」秘密結社モテアソブで働く人達

前回の記事では、秘密結社モテアソブ三軒茶屋の気になるお財布事情について伺いました。「外貨を稼ぐ」というコンセプトに始まり、住民の関わりしろを増やすことの目的や、「御社と友達になる」から生まれる新規事業の創出など、どれも興味深いテーマばかりです。
ところでこの会社、一体どんな人たちが働いているのでしょうか。
「実はお互いの顔も知らない」という不思議な人間関係について紐解いていきます。

モテアソブのメンバーはお互いのことを知らない?

ー 改めてモテアソブ三軒茶屋(以下、モテアソブ)の会社情報を見てみましょう。 社員は一人とありますが、本当に他にはいないのでしょうか。

カズキタ はい。社員はぼく一人です。関わるメンバーは多いですが、だいたいは外注の形で仕事をしてもらっていますね。

ー なるほど。雇用はしていないのですね。

カズキタ そうです。モテアソブでは案件ごとにプロジェクトチームを組んでいるという話をしました。案件によって、必要なメンバーをぼくがアサインしているのです。

カズキタ たとえばWebサイトを作成する案件であれば、デザイナーにプロジェクトマネージャー、 Web エンジニアなどでチームを組みます。 クラウドファンディングのサポートであれば、ライターはもちろん、リターンを提供できる人や、クラウドファンディングを過去に経験したメンバーをアサインしたり、といった形です。

ー 案件の性質に合わせて、適正なメンバーをカズキタさんが見繕っているというわけですね。

カズキタ はい。メンバーの忙しさも場合によってまちまちなので、その時の状況によって「これ、一緒にやらない?」と声掛けをしています。

ー フリーランスはもちろん、会社員が副業で関わっているケースも多いということでしたね。

カズキタ クライアントに「今回はこういうメンバーで取り組みます」と説明するために、会社説明資料もトランプ型で制作しています。

カズキタ 案件を通じてプロジェクトをともに経験すれば、そこにコミュニケーションが生まれます。逆に、プロジェクトチームを組んだことがない人達同士というのも多くいますので、お互いに面識がないという間柄のメンバーもいると思います。

ー 数十人の規模なら、一般的な会社ならお互いの顔と名前が一致しそうなものですからね。このあたりに秘密結社感をおぼえます。

カズキタ そうですね。普段はSlackを中心にやり取りしています。アカウント名をニックネームにしている人も多く、「ずっと仕事をしてきたけど、フルネームは知らなかった」なんてケースもあるかと。

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カズキタ とはいえ、モテアソブはシェアハウス「モテアマス三軒茶屋(以下、モテアマス)」から生まれた会社。今の住民はもちろん、かつてモテアマスに住んでいた人達もメンバーには多くおります。同じ時期に暮らしていたり、モテアマスで一緒に飲んだことがあったり、接点は生まれやすいと思います。

仕事でつながる人間関係の強度

ー モテアソブのメンバー同士の関係性が少し見えてきました。ひとつ伺いたいのですが、モテアソブはモテアマスから生まれた会社、ということはつまりシェアハウス的な会社なのでしょうか。

カズキタ 面白い質問ですね。モテアソブを始めてから気づいたことのひとつに「モテアソブとモテアマスは人間関係の性質がまったく異なる」というものがあります。

ー ふむふむ、詳しく聞かせてください。

カズキタ 以前も話しましたが、モテアソブはぼくが「友達と仕事したい」と思って設立した会社です。モテアマスの住民や元住民とたくさんの案件に取り組む中で、次第に「住民としてのつながり」と「ビジネスパートナーとしてのつながり」はずいぶん違うものだな、と感じるようになりました。

ー 具体的にはどういった違いでしょうか。

カズキタ まず、モテアマスは暮らしを中心としたコミュニティです。一緒に生活する家族のようでありつつ、シェアハウスという特性上、入れ替えも多いもの。暮らしという軸がありつつ、緩やかな広がりが生まれています。

ー 生涯同じシェアハウスで住む人は稀ですものね。

カズキタ 一方、モテアソブは仕事でつながるチームという側面が大きいです。プロジェクトにコミットするため、小さなチーム単位で生まれているのはタイトなつながり。仕事には共通の目的があるので、それが軸になっていると思います。

ー つながりの質がほぼ真逆ですね。

カズキタ そうですね。その上で、遊びだけのつながりは徐々に薄れていくものなのかな、と思っています。モテアマスの住民もそう。一緒に住んでいる頃は毎晩のように飲んだり、旅行に行ったりと密な関係だったけれど、いざシェアハウスを出てしまうとめっきり遊ばなくなる…ということはよくあるケースです。

ー 学校を卒業したら、同級生と会う機会が減るのに似ています。

カズキタ 同じ「遊ぶ」という行為でも、仕事が加わるとまた変わります。モテアマスを離れた元住民達でも、モテアソブで一緒に働くメンバーはつながりが切れない。むしろタイトな結びつきになるようです。人間関係の強度は、一緒に仕事をすることでぐっと強くなります。

ー モテアソブは、仕事を通じた強いつながりがプロジェクトごとに生まれているということですね。

カズキタ はい。少なくとも、遊びだけの関係と比べればつながりの強さは歴然です。

問いとお金で仕事は生まれる

ー 今日のテーマの冒頭に戻ります。モテアソブは、お互いに顔の見えない面もあるとのことでした。この組織は、これからどうなっていくのでしょうか?

カズキタ 段階を追って変化していくのだと思います。今は秘密結社的なところがあるかもしれませんが、仕事の幅はもっと増やしていきたいですし、住民の関わりしろもまだ可能性があります。

ー 今後はどんなことをやっていきたいですか。

カズキタ これまで以上に住民のタレント性を仕事につなげていきたいですね。イラストレーターやデザイナー、エンジニアといった職種に限らず、多くのタレントが活躍できるフィールドをモテアソブとして作っていきたいです。

ー すでに何か構想があるのでしょうか。

カズキタ 今期に生まれた「グットニート養成講座」はそのひとつですね。そのほか、案としてはいくつかあるので形にしていく予定です。

カズキタ また、そろそろぼくのキャパシティもオーバーフローしてきました。これまでとはまた違った仕事の生み出し方を実験しているところです。

ー おお、それはどういったものでしょうか。

カズキタ 「“問い”と“予算”を与える」という形式です。

ー “問い”と“予算”、ですか。

カズキタ はい。これまではぼくが案件を持ってきたり、プロジェクトの内容を考えたりしてきました。しかし、それではぼくのキャパの限界が、そのままモテアソブの限界になってしまいます。そこで、メンバーが自由に考えるための指針としての“問い”と、それを実行するための予算を提示して「あとは好きにやって」というものです。

ー ずいぶんと雑な依頼に思えますが、実際はどうなのでしょう。

カズキタ たとえば、モテアマスの6周年を記念してフリーペーパーを制作するという取り組みがありました。このとき、ぼくがしたのは「フリーペーパーを作って欲しい」という“問い”と、6万円の“予算”だけ。あとはやりたい人達にお任せしました。

カズキタ 結果、64ページにも渡る大作が生まれました。コンテンツも面白いものばかりで、6周年を彩るフリーペーパーとして申し分のないものができあがりました。

参照:モテアマス6周年記念フリーペーパー制作秘話
今まで「三茶のインド」という謎な情報しか表に出てこなかったこのシェアハウスを、一冊のフリーペーパーにまとめるプロジェクトが発足し、その作成秘話をまとめました。

カズキタ そのほかにも、このnote。今はぼくがSlackに「モテアソブのnoteに書いてほしいテーマリスト」を掲出していて、書きたいテーマが合致する人がいれば執筆依頼。記事ができたら、その分の執筆料をお支払いしています。

ー なんと自由な!

カズキタ ぼく1人では生み出せない作品がどんどん生まれています。この「みんなのアイデアを実現し、仕事に変えていく」というのは非常にモテアソブらしいと思いますし、ぼく自身もどんなものが生まれるのか、日々ワクワクしています。

ー そういった取り組みが続々と生まれるのも、モテアソブというハコがあるからこそですね。

カズキタ そうですね。最近は特に、この作品作りの側面を大事にしたいと感じています。

ー “問い”と“予算”…なかなか奥深いなと思いました。

カズキタ モテアマスというシェアハウスで一体何が起こっているのか、思い出を後世に残すというのもモテアソブの重要なミッションの1つです。ぼくたちは、来たるべきアフターモテアマスの世界に向けて、着々と準備を進めています。

ー あ、アフターモテアマス、ですか?

カズキタ はい。モテアマスがなくなった後の世界のことです。

次回:「いつかシェアハウスがなくなっても」モテアソブ発起人が語る、仕事と友達の関係性。(4/8公開予定)

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