ラブコメの先駆「翔んだカップル」を読んで
あの特命係長只野仁の作者、柳沢きみお先生による今作はラブコメの先駆作品だそうだ。
ラブコメといったら私の中では世代的に「いちご100%」である。
とりあえず15巻を読んでみた。
感想はすごいの一言である。今後のラブコメ作品のテンプレ設定が盛りだくさんでいかにのちの作品に影響を与えているのがわかる。
・美少女と同居
・活発な短髪女子と長髪のインテリ女子のヒロイン
・優柔不断な主人公だが、なぜか美少女にモテる
この辺りの設定は明らかに今作から始まっている。
ただこの作品の時代背景的にはおそらくフォークソングなどが流行り、若者の恋愛がどこか影を落として描かれている。
時代的なことでいうとスポ根ブームもあり、主人公はボクシング部や陸上部に入ったりと運動をする。そして部活仲間は大抵いいやつなのだ。スレていない人間性と若い活発な男性をうまく表現しており好感が持てる。
3巻以降から延々と2人のヒロインに気持ちが揺れ動きシリアスな展開の数々が待ち受ける。
・失恋によりノイローゼになった親友の事故死
・ヒロインを殺そうとしたヒステリー女
・教師との恋愛に悩み自殺した部長
ただこれらがアイコン的に組み込まれた話ではなくしっかりと人物描写が描かれていて優れた人間群像劇なのがこの作者のすごいところである!
あと上記で述べた「いちご100%」と違い作者が男性である分、とても人生観が男性的で何の為に生きているのか分からない若者の苦悩をロジックたっぷりに描かれている。
競争のない人間らしい人生とは?みたいな枠にとらわれずに生きることの難しさは最後の最後まで主人公を苦しめる。
活発だが、理性的な女の子と賢いが本能に忠実な女の子という外見と内面の違いを表した表現方法は人間らしさを生むテクニックか?
そしてこれを読んで思ったのが「いちご100%」は「翔んだカップル」とかなり似ている。
内容が似ているのはおそらく編集者の指示によるものか?
恋愛を明るく楽しむラブコメの方が現代では好かれるのだが、どこか嘘くさい。「翔んだカップル」は妙にリアルなのが良い。薬師丸ひろ子で実写化されているだけのことはある。
だからと言って今作を真似しようとは思はないし、おそらく真似しても失敗する。
ただ柳沢きみおの「翔んだカップル」はラブコメ界の永遠のイデアである。
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