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お部屋を片付けなくても綺麗にする方法

カーテンの揺れ方が発狂している。
なんかめちゃくちゃな方向に揺れ続けている。
その動きが「おんまかちん!まかちん!!」みたいなわからない無意味なことを永遠に言われ続けているように感じる。
それが人間だったらもう殴ってる。
こんな状態が続けばこっちも発狂してしまう。
その動き、頼むからやめてくれないか。
布のくせに。
普通がいいな。
普通に揺れてほしいな。
もっと軽やかに。
スピッツの歌みたいに。
カーテン君はひょっとしてパンクか?
そんなことを心の中で問うてるうちに花子がそっと部屋を出て行く音が聞こえた。
何も言わずに。
さっきまで彼女が包まっていた布団が今ではじゃばじゃばと支離滅裂にめくり上がっていてそれ自体が「二度と戻らないわ」とメッセージを残し伝えているかのように見えた。
そのあとすぐに吐き気がきた。
花子…、花子…、花子!
焦燥感に駆られた私はその布団をいったんベットメイキングしなおして、一から布団のめくれで「好きだ」という言葉を表現しようと必死にもがいた。
嘆き苦しみ、涙と鼻水を垂れ流しながら一心不乱に布団を練りめくりまくった。
しかし出来上がった作品はどうしても「すきやき」になってしまうのだった。
ああ、私には布団の才能が無い。
ワナワナとしながらテッシュペーパーで鼻水を拭く。
そのテッシュのクシャっぷりを見るとなぜか「あきらめろ」というメッセージのように見えてくる。
私はただ立ち尽くす。
冷蔵庫のように。
荒れ狂うカーテンと悲惨な布団のこの部屋は子供の落書きのようにも見え、しわでくしゃくしゃになった老人の顔のようにも見えた。
すべてを失った私は”ジ・エンド”と同じ意味でうどんを食べ始めた。
そしてカーテンを見つめながら発狂するのを待つ。

おわり

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