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陰謀論に取り憑かれた大切な人といかに向き合うか

著者:ケイヒロ、ハラオカヒサ

はじめに

いまから順を追って一から説明します。疲れたら休みながら気が向いたとき読んでください。すべてを信じる必要なんてありません。少しだけだったとしても参考になるものがあれば幸いです。

─・─

奇妙で迷惑な考え方に取り憑かれた人が、消しゴムをかけたように元の状態へ戻ることはほぼありえないと考えてください。

引き返せた人はいます。かなりきれいに消しゴムがけした人もいます。でも痕跡が残ります。またあなたは消しゴムがけの手伝いすらほとんどできないと思ったほうがよいでしょう。目の前にそっと消しゴムを置いてやるくらいしかできることはありません。

あなたはどこまで許せるのか、どの程度なら安心できるのか自分自身を見極める必要があります。相手をどうにかするのではなく、自分が何をするか、何を許せて何を許せないのかが課題になります。

ゴールは
「あなたのここまでは許せるけれど、
ここからはついて行けない。
これは、あなたが他の人の考えを許せない変えたいと
考えているのと同じだ」
というあなたと相手を仕切る境界線上にあります。

あなたが主体です。あなたがどこまで相手を許容できるかを考えてください。

はじめに


まず整理しよう

こんがらがった糸をほどくところからはじめる。

ご家族や愛する人、人生で欠かせない人が別人のようになって奇妙な考え方に取り憑かれてしまうと、それまでの生活がいっぺんして苦労するだけでなくすべてを失ってしまう不安に陥ってしまいますね。

誰かの陰謀や策略で自分は被害を被っている。たとえば、このような理由で当人がワクチンを接種しなかったりマスクをつけないだけでなく、周囲も同じように考えて同じように行動しろと強く働きかけがちです。いくら説得しても相手は聞く耳を持たず、感情もあらわに激しく反論したり、場合によっては攻撃的になったりします。自分の殻に閉じこもったり、生活パターンが変わるのもよくあることです。

奇妙な考えに取り憑かれて言動が変わった人にはいくつかのパターンがあります。まず整理してみましょう。

奇妙な考えが言動に現れている人は経験から次の4種に分類できます。

・信じている
・利用している
・悪ふざけ
・精神の病気

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・信じている
本心から奇妙な考えを信じています。「信じている」のは間違いありませんが、私たちが世の中の仕組みをまるで疑わないのと同じように、ごくごく当たりまえに奇妙な世界で暮らしている気分になっています。信じるとか信じない以前の問題になっていて、特に考えたりしないでも世の中がそのように見えている状態です。

・利用している
奇妙な考えは行動と結びつきます。たとえばワクチンを打たない、マスクをつけない、自粛をしないといった行動です。こうした行動をしたいだけなのですが、本当の理由を知られたくないし、知られると損をする、知られると恥ずかしいと考える人が陰謀論のせいにします。そうすると得をしたり、恥ずかしい思いをしないで済むと思っているのです。

・悪ふざけ
奇妙な考えを信じているふりをすると誰かがびっくりしたり関心をもってくれると期待する人がいます。または誰かに嫌がらせをする目的で陰謀論者のふりをして、奇妙な考えに基づいた攻撃をしている人もいます。その奇妙な考えに基づいた攻撃が効果的であると考えるからです。

・精神の病気
主に統合失調症です。陰謀論特有の誰かが、集団が自分を攻撃している、自分は被害者であるという説は統合失調症の症状に似ていると同時に、統合失調症の人が共感しやすい世界観をもっています。これは病気によって奇妙な考えを信じて、奇妙な行動をしているのだから治療しなければなりませんし、適切な治療をすれば改善されます。

─・─

これら4パターンのなかで ・利用している ・悪ふざけ は陰謀論とは別のところに原因や理由があります。心配や不安がある、生活や仕事がうまくいっていない、思い通りに生きられない、誰かが妬ましいなど様々です。

奇妙な考え方を利用している人のなかに、ワクチン接種の注射が怖いのですが大人なので本心を言えず「陰謀がある」と言っていた人がいました。子供のとき注射を打ち血管迷走神経反射で意識を失い、その通りに告白しても怒られながら説得されるだろうし、怖いと言えば馬鹿にされると思っていたそうです。

・利用している ・悪ふざけ の2パターンは原因や理由さえわかれば対処は難しくありません。例外はありますが背景に甘やかしてほしい、構ってほしいという願望が強いのも特徴です。過去から今までに把握している相手の性格、問題が発生したときの行動パターン、いま何が起こっているかで推察できるかもしれません。


・信じている ・精神の病気 は見分けがつかないと思います。

連続性

以下に挙げる統合失調症ナビのセルフチェクを見ると、統合失調症ではない人でも経験する心の動きや行動が挙げられているのがわかります。このように・ノーマルな精神状態(あなた) ・信じている ・精神の病気 との間には連続した濃淡の違いがあるだけで、精神状態そのものは地続きの関係なのかもしれません。

次の画像は本人が自分でチェックするための質問表ですが、ご家族や恋人として知り得た相手の変化で判定を求めてみるのもよいかもしれません。表の下に統合失調症ナビへのリンクを用意しました。この質問表を試すほか記事が豊富にあります。

統合失調症

統合失調症を疑うことや、疑いがあると判定が出ることはショッキングで冷静ではいられないかもしれません。しかし統合失調症の患者は人口比1%いるとされています。100人に1人です。

これを多いとみるか少ないと見るか見解がわかれるところですが、日本の大腸性潰瘍炎の患者は人口比0.1%程度なので、人口比1%の統合失調症は比較的ありがちな病気ではないかと筆者は思います。

そして治療法がある病気です。


もし既にやめようとしていたら

やめたくてもやめられない人がいる。

奇妙な考え方を信じている人は、同じ傾向の人とつながりを持っている場合がほとんどです。SNSで知り合うのが通例ですが、知り合った者どうしがリアルな世界でつきあいが広がっていても不思議ではありません。

こうした仲間同士で同調圧力が働くだけでなく、個人情報が知られているためやめるにやめられない人が多数発生しています。そのような場合は以下の記事を参考にしてください。この方法で多くの人が陰謀論集団から離脱しています。


相手と向き合う姿勢

逃げてもいい。そしてどこまでやるか決める。

向き合う姿勢

4パターンのいずれであっても、あなたが面倒くさく感じたり、つらさが増したり、怒りを感じたり、悲しくなったり、怖くなったりしたら逃げても何ひとつ悪くないと理解しておきましょう。

どうしたらよいかわからなくなってフリーズしたり、怒鳴ったり、泣いたりする前に、その場を離れましょう。相手がいない場所、気配がない場所、相手との思い出がない場所へ避難することをお勧めします。

こうした避難は相手を裏切り、相手を捨てる行為ではありません。いずれ手に負えなくなって別離を迎えるかもしれませんが、それまでにあなたが相手に対してやっておきたいことを最後までやりとげるためにも、自分の心と体の健康が第一番の優先事項です。

相手への対応は「へえ、そうなの」で十分です。十分なだけでなく、ひとまずはこれが正しい対応です。いきなり相手を説得できません。既に何度も説得しようとして失敗していませんか? 

次に何を目標とするかはっきりさせなくてはなりません。

精神的な病気なら治療へ向かわせるのが目標です。ではただひたすらに陰謀論を信じているなら、何が目標でしょうか。

奇妙な考え方がすっきり完全に消え、あのときは馬鹿なことを考えていたと反省できるのはかなり初期段階にいた人だけで、考えの一部が残ったり、そのような傾向が抜けきらない場合が多いです。

相手はいまどの段階にいるのか知りましょう。奇妙な言動のうちここまでは許せる、どこからがあなたを傷つけたり、人生の邪魔をするから許せないのか線引きします。ここまでが許容範囲、ここから先はさようならとあらかじめ決めておくのです。

手に負えなくなり自分の人生が台無しになりそうなときは緊急避難ではなく、相手と自分の人生を完全に切り離さなければあなただけでなく周囲にも不幸が広がります。

どこまで改善したら許せるか、どこまでが限度なのかを線引きをするときも、自分の心と体の健康が第一番の優先事項であることをお忘れなく。

連続性2


陰謀論と向き合う

相手をどうにかするのではなく、自分が何をするか。心にいつも“高田純次”さんを。

・利用している ・悪ふざけ の場合は言い訳が陰謀論というだけです。あなたの目の前で起こっているのは駄駄を捏ねたり、関心をひいたり、いじめをする行為などです。大人がこんなことをしているから頭を抱えてしまうのですが、幼い人がやっていることと思えば気が少し楽になるかもしれません。前述のように、注射が怖くて陰謀論を利用して逃げ回っていた人がいたのを思い出してください。

背景と理由がわかったなら、事実と解決策をはっきり言い渡すだけです。
「注射に恐怖心を持っているのはあなただけではない。いやな経験をした人はたくさんいる。だから接種会場には相談に乗ってくれる医師がいて、何かあればちゃんと対応してくれる。それでも嫌なのかな?」
「あなたがやっていることは、どんなに理由があっても嫌がらせでしかない」
などといった感じで。

多少の探りや相手の性格に合わせた会話をするとしても、いつまでも引きずるような問題ではありません。飴と鞭を使い分けましょう。ただし、はっきり言われることで激昂する人もいて、その地雷とも言えるポイントをあなたならわかっているかもしれません。ここでも自分の心と体の健康を第一番に考え、最悪の場合は逃げましょう。


・精神の病気 が疑われる場合は専門家の指導を仰ぎましょう。これは医学の領域です。筆者は医療関係者ではないので責任あるアドバイスはできません。迷わず(素人カウンセリングではない)カウンセリングの窓口や医師に相談しましょう。

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さて、ここからです。

・信じている 人への対応前に<相手をどうにかするのではなく、自分が何をするか>の目標設定と、自分を守る用意をしておきます。

整えて臨む

1.相手の言動で感情を引きずられない。いつも「へえ、そうなの」の気持ちを忘れずに。

2.つらさが増したり、怒りを感じたり、悲しくなったり、怖くなったり、フリーズしたり、怒鳴ったり、泣いたりしそうだなと思ったら、その手前で終了する。「そうかあ、よくわからないよ」で切り上げる。

3.感情がざわざわしたりコントールできなくなりそうと感じたり、そうなってしまったら相手から避難する。そのための避難場所を用意しておき、とくに女性の場合は夜であっても自宅を出て隠れられる場所を想定しておくと便利。

4.すべてを忘れて現実から逃げられる楽しみを(飲酒以外で)見つけておく。

5.さあ用意はできている。何があっても自分は相手から傷つけられずに済む。ここからスタートです。

6.[へえ、そうなの精神]で会話をして、いっさい期待しない。しばらくは「へえ」と「よくわからないよ」の間を行き来して話を聞く程度でかまいません。どんなにがんばってもわからないものはわかるはずがありません。テキトーなほうが正直でむしろ誠実なのです。筆者は相談者に「高田純次さんになったつもりで」といつもアドバイスしています。

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7.あなたは何がどうなれば安心できてひとまず落ち着くことができるのか、ゴールを決めておきましょう。あとからゴールが現実的でないと気づいたり、いつまでも待てないと感じたらゴールの設定を変えてもよいのです。(例 / 政府が悪い、金持ちが悪い、陰謀があると言うのは許せる。私に同じ考えや行動をしろというのは許せない。)

ゴール


ここから先は決定打となる解決策がありません。つまり医師がいて治療法と薬がある精神の病気より対応が難しいのです。ではなぜ[へえ、そうなの精神]で話を聞かなければならないのでしょうか、これが何かの役に立つのでしょうか。

今あなたは相手との関係を清算しようとは考えていないはずです。相手が大切だからなのか、あるいは別の理由があってなのか、とにかく関係を維持しようとしています。だから苦しいし悩んでいます。相手との関係を維持するうえでも、あなたの負担を小さくするうえでも、共感を求めている相手をなだめる必要があります。

相手があなたに求めているのは陰謀論と陰謀論を信じている自分への共感や同調です。しかし、それができないからあなたは「へえ、そうなの」とかわすほかないし、否定しなかったことで相手を刺激せずに済みます。

また小さな可能性ですが、相手をなだめることができたら解決の糸口がみつかるかもしれません。きっかけ、誘っている仲間、集団など背景を理解できれば取るべき対処療法の方向が明らかになります。

聞き役になって会話を続けるうちに、もっとも許せない部分は何か、どこまでなら相手を許して妥協できるか、線引きを探ることができるでしょう。

そして「あなたのここまでは許せるけれど、ここからはついて行けない。これは、あなたが他の人の考えを許せない変えたいと考えているのと同じだ」と言えるチャンスが巡ってくるかもしれません。このとき相手がどのように反応するかは、また別の問題として。

だから心にいつも“高田純次”さんを。テキトーだから、むしろ誠実なのです。

一般論で語れるのはここまでです。まずはここからです。

最後に。

相手もあなたもさまざまな経験を積んで今があります。一人として同じ人はいません。だから進むべき方向ははっきりしても、答えはひとつではないのです。あなたと相手の結びつきもさまざまで、あなたの心の主人はあなただけなのだから、相手を捨て去るのがもっとも確実で簡単だとわかっていても私はこれを真っ先に勧められません。あなたが考え決断するための手伝いと、勇気を励ましというかたちで手渡すことしかできないのです。
────ケイヒロ

陰謀論にかぶれてデマを信じてワクチンを打たないと言っている人がいるとしたら、今年も来年も接種は無理とあきらめてください。もちろん心変わりしてくれたら御の字ですが険しい道のりだと覚悟してください。本人にとって晴天の霹靂とも言える大異変でもない限り無理です。これを前提に生活を整え、もしあなたの接種を邪魔しているならこっそり隠れてワクチンを打ってください。一番大切なものは、あなたの心と体の健康です。
────ハラオカヒサ

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