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Colaboへの平身低頭写真が ハラスメントへの取り組みを 昭和に逆戻りさせた 【短信】

追記 2023.12.16 14:10/文末に面談と取材について。
変更 2023.12.16 20:20/文末追記の[非公開であった面談の事前または事後に謝罪の様子が撮影された]が誤読を誘発しかねないため、[面談そのものは非公開であったが事前または事後に謝罪の様子が撮影された]へ変更。
追記 2023.12.17 12:28/撮影者の位置と状況について。トリミングについて。

加藤文宏

 Colaboという団体が会計上の問題から追及されているらしいことについて私は触れずにきた。だからいま、何が、どうなっているか通り一遍のことしか知らない。
 このようなColaboについて、X/Twitter上で安田浩一氏のポストが目に止まった。

取材メモが流出した件について、NHKは本日、一般社団法人「Colabo(コラボ)」を訪ね、謝罪しました。

2023年12月14日 午後6:45

 同ポストに添えられていた謝罪写真の原版と思われるものが、神奈川新聞に掲載された。新聞に掲載されたものはコピー不可の措置がなされている様子なので、著作権法上の問題を回避するためトレース画で紹介する。安田氏だけでなく、神奈川新聞も見出しで「謝罪」としているのだから、まちがいなく謝罪中の様子なのだろう。

新聞に掲載されたノートリミング版写真をトレース

 他紙の報道でも、取材メモが外部に流出したため放送が取りやめになったことをNHKが謝罪したと説明されている。放映が取りやめになるのは珍しくもない。謝罪する相手は、取材内容などを拡散されてしまったインタビューに応じた人たちのはずだ。NHKはColaboに何か約束をしていたのか。などと考えたが、より深刻に心中へ去来したのは、過去に謝罪恫喝ハラスメントを受けたときのつらい記憶だった。
 以前はあたりまえのように、凡ミスやミスでさえない事案にまで取引先から謝罪の儀式を求められ、いつまでも相手方で語り草にされた。心の傷を自らえぐるのは自傷行為そのものだから、事情説明はこれくらいにしておく。
 私の世代だけではハラスメントをなくせなかったが、次の世代が引き継いでようやく是正されようとしている。トレース画で紹介した「異様な状態」をつくるのがコンプライアンス上もってのほかになっただけでなく、相手が一方的な謝罪をはじめたら止めるのがあたりまえになった。とうぜん写真を撮影したり、これを公開するなどあり得ない。
 Colaboだけでなく、なぜか非公開の場にいて撮影した神奈川新聞(文末に追記あり)と、写真を入手して公開した安田氏は、社会が培ってきたハラスメント対策への取り組みを嘲笑うかのようだ。
 「あれはNHKが勝手に平身低頭したのだから仕方がない」と言ったとしても通用しない。また「謝罪の様子を晒しものにしたわけではない」と言われても、どこからどうみても不快極まりない状況を写し取った写真でしかない。「有害なものかどうか、差別にあたるかどうかは、その不快や痛みを知っている者にしかわからない」というのが、この人たちの言い分ではなかったか。
 人道と人権に敏感であるはずの三者に、現代のコンプライアンス意識が欠如していたなら絶望的だ。高尚なコンプライアンス意識を持ちながら、こんなことをしたのだったら、その意図を厳しく問われなければならない。
 またNHKは、なぜColaboに謝罪をしたのか。事故や事件で放映が見送られたからといって、取材対象者に謝罪しかも平身低頭するのは、かなり異例なことである。これからNHKは、批判者や思い通りにならず不満を抱く相手に対して、同じように謝罪をしなければならなくなった。
 謝罪させたことを誇るかのような不快で心をえぐる写真。手に負えない者にはいっそのこと従うほかないと謝罪するような態度。古臭い力の論理に酔いしれる者たちが、現代を理不尽さに満ちた時代へ逆戻りさせた光景が、あの謝罪写真である。


追記/
1.面談について。各社報道が出揃った。報道内容から、NHKがColaboを訪問した名目が「面談」であり「謝罪」ではなかったこと、報道各社がColaboの事務所に集まっていたこと、面談そのものは非公開であったが事前または事後に謝罪の様子が撮影されたこと、事後に仁藤氏を囲み取材したらしいことがわかった。

2.撮影者の位置と状況について。トリミングについて
 神奈川新聞が掲載した「謝罪」写真は、狭い室内で被写体と撮影者が距離を取れず、さらに関係者3名とNHKの人物が左右に離れているため、超広角レンズを使用して撮影されている。このため天井が映り込みすぎたのか、レンズを下側へ向けたため垂直線にパース(遠近)がついて尻すぼみに描画されている。左端にあるドアの変形が著しく、左端の人物が背中側へ倒れて見えるのはこのためだ。
 このようにカメラが傾いていても写真中央の垂直線は垂直のまま描画される(ただし、カメラが右・左下がりに傾いている可能性がある)。つまり撮影者は右側のドアの前あたり立っていたことになる。この位置を元々の写真中央と仮定すると、あきらかに右側が足りない。写真は上下だけでなく右側が大幅にトリミングされたため、NHK側の人物1名になっているのではないか。

 Colabo代表はX/Twitterで紹介した別の「謝罪」写真を紹介している。こちらではNHKの人物は2名だ。

 この写真も縦横の比率(アスペクト比)が規格はずれなので、独自にトリミングしたものと思われる。一眼ミラーレスおよびレフレックスカメラなら2:3、コンパクトデジカメやスマホなら3:4、これらの横長モードなら9:16相当が普通だ。
 この写真の画角は新聞に掲載された写真のような超広角レンズのものではないため、遠近感の誇張や誇張されたことで生じる歪みがみられない。

 撮影された空間の全容がわからないが、見た目から略図を起こした。新聞に掲載された写真がトリミングされていないとしたら、上図の黒線が類推される[撮影された範囲と撮影者の位置]だ。トリミングされているなら、元々は赤線の範囲だったと考えられる。緑色の線は、Colabo代表が掲載した写真での[類推される撮影範囲と撮影者の位置]だ。
 いずれのパターンであっても、あたかも「撮影会」が行われたかのような印象を受ける。他社の記者はどこにいたのか、あるいは撮影時にはいなかったのか。紹介した写真の撮影者は、なぜ好位置ばかりから撮影できたのか。また、ここにいる5名全員を1カットの写真に収めたいため超広角レンズを使用したはずなのに、なぜ新聞掲載写真は右端をトリミングしたのか。NHK側の1名を除いた写真なら24mm相当の広角レンズで撮影できたかもしれない。

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