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都知事選と情報戦と敗者蓮舫さんの前途

加藤文宏


はじめに

この記事を公開しようとしたとき、選挙集会で演説しているトランプ前大統領が銃撃されたと第一報が届いた。銃撃事件は「その瞬間の出来事」だけでなく、さまざまな「情報」が大統領選のみならずアメリカ社会の動向に影響を与えるだろう。同じように、7月7日に終わった都知事選から無数に放たれた情報が、東京都のみならず日本に大きな影響を与えるのは間違いない。

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 6月23日に『都知事選で見ておくべき候補は蓮舫・石丸・清水・安野・ひまそら【短信】』を公開した。
 この5名は、従来からの選挙戦同様の戦いかたをする者と、あきらかに違う戦いかたをする者を比較するうえで、サンプルとして興味深い人々だった。
 清水国明は有権者に接近して隅々まで巡り歩く従来型あるいはドブ板選挙型だった。安野貴博はプレゼンテーション型とも言えそうな方法で有権者に情報を届けた。暇空茜は街宣活動を行わず、SNSとYouTubeで培ってきた情報発信法そのままに選挙を戦った。石丸伸二について、前掲の記事で作為的な都知事候補者と指摘したが、東京都との関係に必然性が薄く、都民に知名度が低いなか、動画配信などで情報を大量に投下した。
 選挙結果から従来型のドブ板選挙だけでは勝てないものの、プレゼンテーション型の情報発信のみでも将来的にも勝ち目はないだろうと思わされた。そして情報の大量高密度投下によって石丸は現職に次ぐ得票数を得ても、奇抜な手法は瞬く間に彼を陳腐化させ、ものすごい勢いで反感を増殖させた。こうしたなか、暇空茜が11万票獲得したのは驚くべきことだった。
 では、蓮舫はどうか。彼女は共産党主導の情報戦で選挙を戦った。そして、自らの情報戦に首を絞められ、現職に猛追することもなく、得票数3位に終わった。浮動票層に「負の気付き」を与えてしまい、共産党と立憲民主党の組織票頼みの選挙になってしまったうえに、これら組織も分裂したため十分な票を集められなかった。
 しかも、ただ負けただけでなく、その後の「Rシール」騒動含め、全てを失うのではないかと思われるほど評価を落としている。
 浮動票層の負の気付きは、扇動への不快感に基づくものだった。共産党、立憲民主党、市民連合(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)、左派・リベラルといった存在を忌避すべきものと意識させてしまったのである。
 こうなることは投票日の1週間以上前からわかっていた。

嫌われるだけでなく小池への関心を高めた事前運動

 では蓮舫の情報戦が失敗した原因をデータから読み取っていこう。

Google.com の検索ビックデータから読み取る3候補への関心

 前掲のグラフはグーグル検索で各候補がいかに検索されたかを示している。1番目のグラフは6月11日から7月6日までの検索数の推移、2番目のグラフは同時期における各候補者の「社会的分野での関心」の推移を表している。
 社会的分野での関心には、各候補者について、さまざまな社会現象や課題、福祉等との関係を知りたくて検索した人々の動向が反映されている。「候補者名で検索して、表示されたサイトの中から社会的分野について書かれたページを選択した人」と「([小池百合子 政策]のように)候補者名と社会的なクエリを入力して検索した人」たちの動向と考えてよい。

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