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終の住処を探す旅 松山の住宅事情

昨日、一昨日のさらに続き。

興居島の海が大変気に入ったわたしは、松山を終の住処と決めてもいいんじゃないか、と思った。

しかし、夫は慎重だ。

「便利なのはいい。海も近くて面白そうだ。しかし、ゴミ出し方法や、町内会の義務労働の多さなど、引っ越した後に後悔しそうなことも、きちんと調べておくべきだ」

夫は、完全に私に洗脳されている。

私の方は、先輩ライターさんが
「地方には地方の、財政的な事情などがあって、ゴミ出しにも住民の協力が必要なんだと思うよ」
という説明を聞いて納得し、ゴミ袋に名前を書くのも、さほど抵抗が無くなったいる。
それに、町内会の仕事の多寡なんて、住んでみなくてはわからないものだと思うし。

「いやいや、街を歩けば、そこに住む人たちの暮らしぶりは、なんとなくわかるものだ。自由で心に余裕がある人たちが暮らすところは、雰囲気もいい。俺にはわかる。なんと言っても、見る目があるからな」

夫は言い張る。

しかし。
例えば私と一緒に街を歩いている時、曲がるはずの細い路地を見落としたり、そこそこ混雑した電車の中で、2人がけの座席が空いているのを見つけられなかったり、行きたい店が目の前にあるのに見えていなかったりするのは、たいてい夫の方だ。

彼は、注意力が散漫なわけではなく、むしろ、目的方向に注意を全集中して見ているため、周囲のものが一切目に入らないのだろう。
視野がとても狭いのだと思う。

「あれは、なんだろ?」「これ、妙だな?」と、あちこちに目が行き、注意が逸れまくる私の方が、いろんなものを見つけやすい。
だから、どちらかというと、私が街ブラ担当になった方が良いんじゃないか?

けれど、街ブラ担当ではない方は、不動産屋で家賃相場を調べるという地味な仕事だったため、夫はなんとしてもこれを回避したいらしい。

しかたなく「自称・街の雰囲気を読む達人」であるところの夫が、松山北部つまり、興居島に近い住宅地を見に行くことになった。

私は自動的に、不動産屋担当。
春の転勤、進学シーズンで、予約もせずに話を聞いてもらえるとは思えないほど混雑した、アパマンショップに向かったのだった。

松山でのお部屋探しの結論。

とんでもなく、素晴らしい!
どう素晴らしいのか、一例をお見せする。

この広さ、この間取りでこの価格!
神奈川では見たことがない。

びっくりしていると、手が空いた営業のお姉さんが
「すごいですよね。私も神奈川にいたことがあるので分かりますが、神奈川だとこの家賃でワンルームだったりしますよね?」
と言った。

首が外れて飛んでいくほど、うなづく。
いや本当にそうだ。

「松山って、都会のわりに、全国トップクラスの家賃が安い街なんですよ」
お姉さんが続ける。

しかし、家賃が安いのには、それ相応の理由があるはずなのだが、私には納得のいく理由が見つからない。

これまでの三日間で見てきた印象では、人は優しく親切だ。
路面電車の運転手さんは、荷物を抱えて困っていたお母さんを助けるため、わざわざ降りてベビーカーを載せるのを手伝ってあげていた。
私が道を尋ねた人たちは、例外なく太い通りまで一緒に来て、わかりやすいルートを教えてくれた。
いい人しかいない。

街の中心にはなんでも揃っている。
飛行場も近くて、どこに行くにもアクセスがいい。
大島てるに聞いても、特段、事件が多い街ってわけでもないだろう。

敢えてマイナスを探すと、本州と繋がっていないから、大きめの離島扱いなのだろうか?
それとも、瀬戸内海気候で雨が少なく、夏場にすぐ断水したりするのだろうか?
ほかに、可能性としてありそうなのは、バブルの頃に暗躍した「悪徳土地転がし」が、松山にはいなかったとか?

……よくわからない。

昼に夫と合流すると、住宅街の雰囲気も良く、ゴミ袋に名前を書く必要も無さそうとのこと。
本屋の品揃えも大変良かった、と満足そうだ。

この街に決めていいかな、と思う。
その場合は、夫が定年を迎える9月下旬に合わせて、8月ごろから物件を探せば間に合うだろうとお姉さんは言っていた。
一つ肩の荷が降りた気がする。

このまま、なにか大逆転が起きなければ、次の秋から、私は四国の住人になる。

この先、何歳まで泳げるのかはわからないし、泳げなくなった後も、松山に住み続けるのか、そこは決めてない。
先のことはわからないけれど、とりあえず、今は楽しみで、ワクワクしている。

新しい環境にワクワクできるうちが、花だ。
動けるうちに、存分に楽しもうと思う。

**連続投稿412日目**

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