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麒麟がくる 勇者は泣きながら魔王を退治した

昨夜リアルタイムで見られなかった「麒麟がくる」を今見終わり、突如として滂沱と嗚咽が止まらなくなった。

「こんな丸顔で撫で肩の信長なんて絶対嫌だ」と思っていたのに途中から

「こんな孤独と狂気で人を魅せる信長は他にいないかも」に変わり

最終回はもう信長オンステージだった。

唯一信長を手放しで褒めてくれた帰蝶にも愛想を尽かされ、戦続きで夜も眠れず、誰が心を開ける味方なのかわからず疑心暗鬼になり、

こんな暗がりの中で生きる生活に終止符を打ってくれる人を求めていたのだなというのがよく分かる。

「是非もなし」は、そういう意味だと感じた。

そして自害するまでの殺陣のかっこいいこと、かっこいいこと。

死ぬかもしれない戦闘の最中に、満面の笑みで弓を番える。

弓、槍、刀と武器を持ち替え、それらの扱いすべてに腰がきまっていて、画面から風圧を感じるほど。

真っ白な寝巻きが矢、刀、鉄砲と次々に傷を負って、死に向かって赤く染まっていく。

ゾクゾクして目が離せない。

私にとって「麒麟がくる」は完全に信長の話になってしまった。

それにしても。

大好きだった人を諌めるために殺すしか選択肢が残されていなかった十兵衛の気持ちを思うと、本当に心がちぎれるようだ。

出会った頃の無邪気な信長との回想シーンが、2人の顔のアップに重なる。
同じ「大きな国」を作る夢を見ていたはずなのに。

十兵衛は信長のコップに「信頼」という水を注ぎ続けた。
ひたすら誠実に。

十兵衛の大切にしてきた友情や信義を、信長がどこまでも蔑ろにし、足蹴にしても、それでも注ぎ続けたのだ。

だが心を閉し、人を信じない魔王の渇きはそんな水では足りなかったのだろう。

ラスカルなら森に返せばいい。
のび太の恐竜は白亜紀に送り返せばいい。

でも、魔王は勇者に退治される運命なのだ。

かくして、信長は最も誠実な部下に退治されてしまった。

あぁ。

人はどうして変わってしまうのだろうね。

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