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日本の食卓から薬味を撲滅したい

私は薬味が嫌いだ。
大人になった今では、平気なふりをして食べることもできるが、子どもの頃は見るのも嫌だった。

たとえば、お寿司。
私が小さかった頃は、「サビ抜き」などという素敵なサービスはなかった。
昭和の子どもは、あのツーンとくる刺激に耐えねば、食事にありつけなかった。

祝い事があって出前の寿司を取ると、ワサビ落とし作業が待っている。
ネタとシャリに分解して、スプーンで1ミリも残さないようにこそげ取るのだが、配達の間にワサビが染み込んで、ミクロの刺激物が取りきれない。
刺身も酢飯も好きなのに、ワサビの破壊力に邪魔をされ、悲しくもないのに涙が出る。

サビ取りがだんだん面倒になると、小学生の私は、卵と穴子しか食べなくなった。
偏食なわけではない。
ワサビが私の邪魔をしてくるので、関わらないようにしていただけだ。
握り寿司を台無しにしてしまう、ワサビの存在が許せなかったのである。

他にも、冷奴に添えられる生姜やネギも嫌だ。
小さな子どもは、豆腐なんて好きじゃない。
好きじゃないから、先にノルマをさっさと片付けて、他のおかずを食べたいのに、くさいネギとビリビリする生姜が、それを阻止しようとしてくる。

どちらも火が通っていれば、まだ許せる。
匂いも刺激も、いくらかマシになるから。
海原雄山だって、言っていたではないか。
「人間は生野菜が嫌いな生き物だ」って。
なのに、それをコンボでわざわざ豆腐に載せる料理を考えるとは、変態の所業である。
食に苦痛を持ち込んで、なにが楽しいのか。

こんなことを言うと、必ず「食育の敗北」だの「日本の食文化への冒涜」だの「文化伝承の破壊者」だの言われるが、そもそも薬味が「文化」に潜り込んだのは、衛生的な観点からではないのか?

足が早い生魚などのタンパク質を、少しでも安全にたべる知恵が薬味だったはず。
ワサビもネギも生姜も、殺菌効果をもつためにメイン食材の側仕えとして登用されただけで、味という本来の才能が評価されたわけではないだろう。
そもそもワサビは、山奥の水の綺麗なところに生えるもの。
海のそばに住む人が、釣った魚をさばいて食べる時に、わざわざ山奥まで味のためだけにワサビを取りに行くか?
いや行くまい。

あれは、海から遠いところに住みながらも「生魚が食べたい。でも、鮮度も気になる」というわがままな人のために添えられたものであって、文化として定着してしたのは、せいぜい江戸時代だろう、知らんけど。

平安貴族は、塩漬けまたは、干して魚を食べていたわけだし。
そこには、わさびもネギもいなかったはずだ。

だから、薬味ごときで文化がどうのと言うのは、お門違い。
あれらは機能性食品なのだ。
摂るも摂らぬも個人の自由、少なくとも私の食卓からは撲滅してくれて全然構わない。

同じ気持ちの方は、ぜひ「SEYJT(The Society for the Eradication of Yakumi from Japanese Dining Tables:日本の食卓から薬味を撲滅する会)」にご寄付をお願いしたい。

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