見出し画像

白球と野菜に追われた僕の青春、、、⑥

いよいよだ。どっくんどっくん。
明日は、この一学期の期間に誠心誠意、真心をかけて育ててきたスイカの収穫予定日だ。
結局のところ僕は2つ上手く育ち、赤点は免れた。そのうちの1つが明日収穫だ。
部活から家に帰り、夕飯をいただく。家族もまだみんな起きていてリビングにいた、ふとし(父親)のりこ(母親)たいき(弟)ももか(妹)そして、りょうすけ(僕)の5人家族だ。
僕「あ、明日スイカ持って帰るよー!」
たいき「マジい?」
のりこ「やっとだねー」
ふとし・ももか「へー」
基本、ふとしとももかは人に興味がない。それでも喜んでくれて、楽しみだねなど言い、その場は盛り上がった。
僕「明日もこの時間に帰ってくるから、スイカ食べようぜ」
と、約束をした。

そして、次の日の授業中にスイカを1つ収穫した。ツタを切る時に少し泣きそうになった、経験はないがへその緒を切る時の感覚だと思う。多分。このツタから栄養がいきここまで大きくなったんだ、ありがとうの思いを込めて切った。
初めて我が子を抱いた、ずっしりと重く、軽く叩くとポーンといい音がなり、表面は緑と黒の鮮やかなコントラスト。なんだか音楽を奏でそうな美しさ。もう可愛くてしょうがない。
スイカ「大きくしてくれて、いや、ここまで育ててくれてどうもありがとう。」
僕「何言ってんだよ、水くせぃ、こっちこそ、、、育ってぇ、、くれてありがとう。」
こんな会話をしました。確実にしました。絶対しました。

大事に抱えて、周作から教えてもらったトマト温室の銀のタライに水と氷を張り、その中にそっと浮かす。笑ってる。そして持って帰るまでキンキンに冷やすのだ。
家族の喜ぶ顔が目に浮かぶ。

そして、練習終わりに部室に戻ると野球から解放されたアゲアゲの3年生が荷物を片付けにきていた。この日は3年生の片付けの邪魔になるので、帰る準備をしていた。
あ、息子を銀タライ保育園に迎えに行かなきゃいけないと銀タライ保育園に迎えに行った。プカプカと僕を待っているかのように浮いていた。
僕「諸星ですーー、遅くなってすみません。」
銀タライ保育園先生「いえいえ、泣きもせず、ずっといい子でしたよ!」
僕「あ、そうですかー、それは良かったです!」
と息子を引き取り部室へ戻る。
息子を抱えて戻ると3年の先輩たちに絡まれた。

3年Aさん「うわあ!!諸星スイカ持ってるよーーー!!!」
その声に続々と3年が集まり出した、めちゃくちゃ嫌な予感。
3年Bさん「スイカ割りしよーぜえええ!!!」
3年Cさん「いいねー、バット持ってきて」
3年Bさん「おい、諸星!バットは?」

待ってくれ。頼むから待ってくれ。それだけは、、、
やめてください!!とも言えず、野球部は先輩に逆らったらどうなるかわかる。ゴリゴリの上下なのだ。スイカをブン盗られて、シートも引かずにグランドにセットされた、、、
公開処刑が始まる。目の前で息子がボロボロの汚いバットでボコボコにされている。あいつらは目隠しもせず、ただスイカ割る、せめて目隠しして楽しめや。まあ、そう願っても虚しいが。グッバイ。

砂がついた粉々のスイカを全部お盆に乗せて、お盆ごと水道で洗う。処理が慣れている。
3年Aさん「んー、糖度が低いな、後2日後だったな」
うるせえ!!!ケチつけんな!!!こんなにしやがって!!!
俺はそのスイカを食べることができなかった、いや可哀想で食べれなかった。
そして守ることもできなかった。親として情けない。

しょぼくれて帰宅、ヤバイ。昨日約束したスイカ。みんな楽しみに待っているはず。
のりこ「おかえりー、あれ?スイカは?」
僕「ごめん!みんなでスイカ割りしちゃったー!めちゃ楽しかったわ!もう一個あるし、来週には取れるから来週持って帰るよー!さ、風呂風呂!いやー今日も疲れたわー!!!」
湯船に肩まで沈み、ぷかぷか浮いてみる。スイカ、、、

読んでいただきありがとうございました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?