…家出したの?

学童3日目。いつものように校庭に出てあそぶ時間になり外へ出る。女子たちはきょうも砂場で、より大きく、より強固で、より美しいお団子をつくらむ!と、せっせと制作している。ふと逆の方向に目を遣ると、例の大人びた女子(だとわたしは解釈する)がひとり、校庭の端っこに座り込み、お団子制作をしている。なんとなく気になったし、きょうは勧誘もなかったのでそのコのところへ向かった。

彼女は、砂場で作ったお団子のベースに、グラウンドの砂をかけているところだった。こんなところでつくってるんだ?と声をかけると「固くてきれいなのにしたいから」と言う。砂場の砂の方が細かくてきれいに仕上がるわけじゃないんだ?と聞くと、「…うまくいくかわからないけど、これでうまくできたらうれしいから」と彼女。そのトライ、すばらしいですね。ほんと。

世間話をした。「ねぇ、犬だったら何が一番好き?」と聞かれたところから始まり、わたしは植物もまともに育てられないんだよねーとぼやくと「わたしも!!なんかさぁ、最初はいいなぁと思って頑張るんだけど、すぐ忘れちゃうんだよね〜」。そうそう!ほんとそう!とかそんな感じで話が弾み、お互いのいろんな共通点が見つかった。キョウダイ構成しかり、マンション暮らししかり、植物育てられないけど、いま豆苗にチャレンジしている、とか。「おなじ!」ということが、彼女はとてもうれしいようだった。「もうさぁ、こんなにおなじところいっぱいあるなら一緒に住んだらいいんじゃなぁい?」と、とてもうれしそうに、しかも本気で言ってくれているのが伝わってきて、うれしいやらかわいいやら、とてもいい気分にさせてもらった。

会話をはじめてすぐに、彼女はとてもしっかりと会話ができるコなんだと感じたので、「8才のコと話している」って意識を捨てることにした。どこまでいけるもんなんだろうと試してみたくなったからです。結果、もうほんと、ただの世間話。やっぱり子ども扱いしない方がお互い話せるなぁと感じた。それが妙にうれしかった。

「犬を飼いたい」と彼女が言うので、わたしのお兄ちゃんが犬飼ってるよというと、突然彼女が神妙な顔つきになって黙ってしまった。

え?
なに
どうした

彼女は数秒黙ったあと、真剣な表情でわたしの目を見てこう言った。

「…家出したの?」

一瞬、なにを言われたのかわからず、今までの会話を脳内プレイバックしてようやく彼女の思いがわかった。

そうか、「なんでお兄ちゃんと離れて暮らしてるの?家族といっしょになんでいないの?…そうか…家出したんだこの人…」

である。

心配させてしまったようなので、説明をした。

お兄ちゃんは結婚してるから別の家に住んでいて、おとうさんおかあさんとも一緒の家にいないんだ。

「じゃあひとりなんでしょ?」。
いや、ふたりだよ。
「だれと?」
彼氏だよ、と伝えると、突然顔つきが変わってめちゃくちゃニヤニヤしている。
「彼氏ぃぃ??!…でも指輪してないじゃん」
恋人同士は指輪がアイコンのようです。
結婚はしてないからねぇ、と伝えると
「じゃあ好きって伝えたことある??」とものすごく前のめりで聞いてきた。
あるよ。
「なんて返事されたの?」
え〜?おぼえてないなぁ〜と言うと、
「え?!そんなの愛情が足らないんだよ!」と本気で説教をされました。

そして、一間おいて
「…これはね、わたしの記録。」

地面に目を遣りながら、数秒黙ってしっかりためた後、彼女は家族で過ごしたひな祭りの日のことを語ってくれた。3日はおとうさんの帰りが遅いから、2日にみんなでお祝いをしたと言う。「だって、みんなでお祝いしたいじゃない?」と彼女は言った。

彼女は、自分がうれしかったことをちゃんと覚えていて、刻んでいるようです。
でも、ひな祭りの日のことを話終わったあと「こういうことだよ!ちゃんと大事におぼえてなきゃだめだよ!」なんて言わなかった。

でも、そういうことだよなぁ、と思ってけっこう反省しました。笑

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