だってアルバイトだもーん

学童4日目。部屋に入った瞬間、このあいだマンツーで世間話をした女子がハグで出迎えてくれたので、ハグし合っていたら、すかさず別の先生が「〇〇ちゃん濃厚接触やめて!」と注意された。すんませーん。

しばらくいろんなコのところを回遊して、おやつの時間になった。みんな手を洗って準備しているが、ハグ娘がわたしの手を取ってなんとなくムズムズしている。
手洗ったの?と聞くと、「まだ」というので、洗って来たら?と勧めると「先生も来て」と言うので、ふたりで水場に向かった。

「あのね」

うん?

「さっき△△ちゃんたちと来年のクラスのこと話してて、一緒になりたくない人の話をしてたらね、△△ちゃんが××ちゃんとヒソヒソ話しだしたのね。それがすごいイヤだったの。わたし、ヒソヒソ話ってすごいイヤなの。だって、わたしのこと話してるかもしれないでしょ?」

あぁ、わかるわ。
イヤだよね、そういうの。

「おんなじだね」と彼女は言った。

そうか、だから彼女はひとりで絵を描いてたのか。なるほど。

おやつ終了。いつもなら校庭であそぶ時間なのだけど、きょうは卒業式があったせいか、校庭に数台車があるからという理由で、外遊びができないとのこと。数台しかないんだから問題ないじゃんと思ったが、まぁそういうもんなのだろう。文句を言わないこどもたちよ、もっと主張してもいいんだぞ。ちょっと車があったって、みんながあそべるように見守るくらいのことは、大した仕事じゃないんだから笑。

ということで、部屋で過ごすことになり、わたしは女子ふたりに誘われて(ヒソヒソ話をしていたというふたりです)お店やさんごっこをしていた。レジスターのおもちゃを卒業生が寄付してくれたらしく、女子ふたりはハイテンションである。でも、お店やさんごっこ好きのわたしからすると、レジだけあってもリアリティが足らんと思い、財布・食材売り場、小銭を作ろうと提案し、せっせと真面目に勤しんでいた。その最中、ハグ娘はたまにこちらに顔を出した。

小銭制作はなかなか手間がかかる。
よりリアルにと精を出すわたしは、自分の財布から小銭を持ち出し、鉛筆と写し紙があったので、フロッタージュ技法で(小銭の上に紙を置いて、鉛筆をこすって凹凸を浮き上がらせる)小銭の凹凸を写し取っていた。みんなこれは初めて目にしたらしく、前のめりになってトライしていた。「本物みたい!」とたのしそうだった。

ハグ娘がやってた。△△ちゃんが「手伝って」と静かに、さりげなく声をかける。あ、このコ、なんとなくわかってるんだな。

どうするのかなーと見ていたが、また離れていった。まだモヤモヤしているのね。どうしようかな、ちょっとそばへ行こうかなと思ったが、なんとなくやめた。来て欲しいと思ってるだろうなとは思ったけど、できるだけフツーにしていようと決めた。

しばらくして、ハグ娘がまたやってきた。
「わたしもやる」と一言。
やろうやろう、となった時、ちょうどお迎えが来てしまった。惜しい!でもまぁいいか。たぶんふたりとも、ちょっとホッとできたろうし。

そんなこんなで、お迎えラッシュ。人数が減ってくると、わたしのような補助員という立場のスタッフは片付けをなんとなくはじめることになっている。でもいつも、わたし以外の手慣れた人がかなり早い段階で済ましてしまうので、わたしはあんまりやることがない、ということが続いていた。でも、やろうとしているっぽいという感じは伝えておかないと面倒なので、一応気にして「あそこ掃除しますね」と声をかけている。が、もう済んでいる。え、もう終わってんの?ふーん。て感じが続いた。

とてもやさしそうな女性スタッフがわたしをトイレに連れ出して(トイレ掃除をしましょうってことでね)いろいろ話してくれた。「仕事はどうですか?ここはやることがハッキリしてないから、なにをしていいかわからないわよねぇ」というような寄り添いモードから始まり、そのあとなぜか「補助員の仕事はとにかく掃除なの」というフレーズを5分間に3回くらい繰り返していた。そして、「保護者とのやりとりは指導員がやるから、もし保護者に伝えて欲しいことがあったら、指導員に伝えてくれればいい。保護者との窓口はひとつにしている」といった趣旨の話をやさしくしてくれた。あー、でしゃばるなってことか。「あそんでばっかいないで、ほかの補助員みたいに掃除してくれ。保護者にも話しかけなくていい」ってことを伝えたいんだな、この人。

なるほど、そうなんですねー。
と連発して返した。

うん、役割っていうものはありますよね。この人はこの人なりに仕事と向き合っているし、かくあるべきというものもあるんだろう。わたしも一応、大手予備校でパート職員→管理職→校舎責任者まで経験してきた身なので、この程度の話はだいたいわかっているつもり。

だから思うんだけど、
カンケーないよね。わたしには。

補助員の仕事は掃除ですっていうのは、そうなんだと思う。その場ではそうなってるんだろうなら。
でもわたしは、学童でこどもを預かる仕事をするつもりでそこにいるわけで。
そしてバイトなわけで。
掃除を率先してやってくれる人が他にいるなら、わたしは無理にやらなくていい。何人もやってたら労力の無駄。そもそも、こどもがいる時間内に済ませようとするからそうなってるだけなんじゃないかしら。人件費をかけないように、スタッフが早く帰ることが優先されているんだと思う。そんなのはこっちの都合で、お金を払って通っているこどもには関係ない。

こどもより掃除。
親が迎えにきた時に、あいさつや会話をしなくていい。

へー。
変なの。

この日、校庭に6年生や中学生があそびに来ていた時に、ある補助員が(つねにこどもを注意し続ける人です)彼らと激しめの口論をしていた。なにがあったのか見てないから知らないけど、おそらく補助員が彼らになにか注意したんだと思う。
これは、学童スタッフの仕事じゃない。なにより、彼らには注意される筋合いがどこにもない。そりゃ怒るよ中学生。

というわけで、適切でもなく、おもしろくもない指示は、ニッコリ受け流します。
「あの人、返事はいいけど使えないわー」と思われても別にいい。そっちの方が都合がいい。
補助員は指示する立場にはないけど、出された指示に従うかどうかは自分が決めるべきだ。バイトだから従わなきゃいけない指示なんてない。むしろ、バイトだから従わなくていいよね、というのがわたしの考えです。

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