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大人が習うピアノ

はじめに


 
 
「この曲が弾けるようになりたい」と先生に告げて「ではまず、この曲から始めましょう」と聞いたこともない作品をやらされたことがある方は少なくないはずだ。
そこで「どうして、この自分のやりたい曲ではなく、この聞いたこともない曲を弾くのですか?」と聞けば「この、あなたがやりたい曲を弾くためには、基礎的なスキルが必要で、それを養うためにやります」と返ってくる。
耳を傾ける必要はない。
 
もしも、キミの親や先生が「こんな曲、お前に弾けるわけないだろう」と言ったなら、彼らのことは軽蔑した方がいい。
もしも、貴方が子供や生徒達に対して、そのような言葉を過去に一度でも吐いたことがあるのなら、猛省し、彼らに正面から謝罪した方がいい。
 
「ピアノ教室を辞めた理由」を見ると、1位が「自分がやりたい曲をやらせてもらえないから」である。

それがいかに残酷な行いなのかが分かる。

「お前に弾けるわけがない」
この言葉は、「夢」を殺す作業だ。

ある親は言った。
「私はピアノが上手くならなかったから、この子には是非、上手になってほしい」と。
 
なぜ上手くならなかったかと聞けば「センスがなかった」とみんな言う。

断言する。
センスがないのはその当時の先生だ。

やりたくもない曲をやらせて、ピアノへ向かうモチベーションを減らして、上手く弾けないことを生徒のせいにして、「センスがない」という幻想を抱かせて追い出す。
そんなことがもう50年100年続いている。

なぜ、貴方は諦めた?
答えは分かっているだろう?
答えはシンプルで「楽しくなかったから」だろう?

だったら、なぜ、それを子供達になぞらせる? 
 
逃げるな。
今、現代のピアノ教室に足りていないのは『希望』だ。
希望をもつためには、「好き」を経験して、「好き」を習得するためのスキルを学ぶ必要がある。
子供は勿論、子供に背中を見せなければいけない大人もだ。
耳障りの良い話はしない。
好きな曲を弾くための本当の話をする。
 
 
諸江史耶(サウンドフリージョイ)


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