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7日間のブックカバーチャレンジ Day2

2冊目は、保坂和志さん『この人の閾(いき)』。100ページもない短編なんだけど、いままで1番衝撃を受けた小説。
主人公は、編集者の男性。作家先生との約束で小田原まで行ったのにすっぽかされ、ぽっかり空いた夏の平日の午後に、映画サークルの先輩(真紀さん)の家を訪ねて、草むしりしてビール飲みながらだらだらおしゃべりしている、だけの小説。
(小説全体の雰囲気は、真紀さんがいうところの、ラテンアメリカの小説なんかに出てくる、村中が微睡んでる、ポヤ〜っと物憂く気怠い感じ)
保坂さんの小説観自体もすごく衝撃的で、「ひとは本来、波が寄せたり返したりするのや、木々の葉がざわめいたりする動きにも、面白みを感じる。そういう感情の動きをすくいあげるのが小説だ」といっていて、保坂さんの小説はまさにそんな感じ。ついでに大仰な悲劇や激しい感情表現に「頼る」小説をこけおろしてもいる笑。地味〜なようでいて、すごくラディカルでロック。
(ロックって使うのちょっともぞもぞするんだけど、でもわたしの拙い言語能力では他に形容詞が浮かばない。。)
ひとの髪型、着こなし、ちょっとした仕草や動作、表情、言葉の選び方なんかで、わたしたちは日頃常に相手を「判断」しつづけていると思うんだけど、そういうこまか〜いところがさらっと描写されてる。ものすごいことだと思う。
この真紀さんていうのがとっても不思議な女性で、社会が個人に押しつけてくるいろいろな抑圧やプレッシャー、価値観みたいなものから、とことん自由。だけど、そういうありかたをまったく外に対して主張したり表現したりせず、ただただ内にとどめたままで、淡々としている。主人公が彼女のその佇まいに静かに地味に感動しているのにのっかって、わたしも何度読んでも心うたれてしまう。
なんかうっかり気持ちだけ高ぶって長々書いたわりにまったく伝わらない文章ですみません。。とにかく本当にすごい小説です!
今日のバトンはなし。この小説との出会いをくれた、大学の友人に心からの感謝の気持ちを捧げます。

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