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組織の"腹落ち"を科学する

久しぶりにnote更新です。今回は腹落ちについて。

以前に比べると、随分対話の価値や組織状態を見えるようにした後どのように取り組んでいくべきか、浸透してきたように感じます。中原先生著のサーベイフィードバックでも見える化した後のガチ対話やアクションが重要だと述べられています。

対話に関しても、U理論や傾聴、問いかけなど、日々様々な良著が出版されており、少しずつ取り組まれている方々の総和は増えているように感じます。

一方で最近、"対話した後"の収束や意思決定の難しさについて課題感を持たれている方が多く、

・多数決で良いのか?
・全員が納得するまで話し合う必要があるのか?
・リーダーが独断で決めるのが良いのか?

など質問をいただくことが増えています。背景にはメンバーの腹落ちがセットになっており、決めることはできても腹落ちした状態にならない・結果として物事が前に進まないといった状況です。

この件に関して、アトラエの組織作りやWevoxのチーム運営を通じて感じていることをまとめてみます。

『腹落ち』は人によって異なる

人間というのは極めて主観的に物事を見ている生物です。同じ事を観て・聞いていても解釈が異なります。この辺の話に関しては、乾敏郎さんのポッドキャストがとてもおもしろいです。

対話や意味づけ、コーチングの背景にもあるように我々は、客観的に物事を見ているのではなく、周囲の言語や行動により影響を受けた世界を捉えています。

本記事ではカール・ワイク氏のセンスメイキング理論を参考に、実証主義的なアプローチではなく、社会構成主義のような相対主義を前提に考えています。

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出典:世界標準の経営理論

まさにガーゲン氏のこの言葉にあるように、我々は言葉を写真のように扱ってしまいますが、解釈は人によって異なります。

私たちはずっと、「言語」を「写真」であるかのように扱ってきました。科学者が世界について語る場合、私たちは、彼らの言葉が観察したものを「正確に描写している」ことを期待します。

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出典:「組織開発」を推進し、成果を上げる マネジャーによる職場づくり

例えば、組織づくりや事業戦略等を伝える際にも、同じ説明でもAさんは腹落ちせず、Bさんは腹落ちすることが往々にして起きます。

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人によって『腹落ち』が異なるのは、言葉に対する認知や意味付けが異なるから。同じ情報でもそれをどのように認識するかによって意味づけが異なります。例えば同じ話をしても、それがビジョンの実現に大事だよな〜と解釈を行う人もいれば、それは金儲けの為に必要な手段なのでは?と解釈する人も存在します。

多くの場合では、腹落ちしない人=頑固/理解が浅いということで、リーダー側が嘆いているケースが多いが、腹落ちしない=認知が異なっているという視点が非常に重要になってくると考えます。

腹落ちは『即座』ではなく『積み重ね』

『ミーティングではあまり腹落ちしてもらえなかった』と腹落ちは即座に起きるものだと認識されるケースが多いですが、それはコンテントの一部だと考えます。

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出典:組織のイノベーションは「プロセス」から生まれる

認知が異なることで腹落ちが人によって異なる訳ですが、ここで大事なのはその場での説得や合理性の説明ではなく認知を共通化していく動きです。そのミーティング内や意識的の中にある変数を最小化するための投資が重要になります。

例えば、組織が存在する以上、パーパスやビジョンが存在します。日々の意思決定やコンセンサスはあくまでも、HowやDoのレイヤーがメインになることが多いです。ここでの腹落ちをより効率良く行う為には、そもそも、パーパス/ビジョン/ミッションに対しての認知が揃っているかが肝になります。

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つまり、その場でメンバーが腹落ちしないというのは、そもそも感情的な部分で取れている合意形成が少なく、認知が揃っていないから、というのが考えられます。にも関わらず、合理的な説明をすれば、すべての人が腹落ちすると考えてしまい、なぜこの手段を取るのか、なぜこの指標なのかを合理的な面を中心にその場では説明してしまう。結果として、意味づけが異なり、組織の腹落ち度は低くなる。

例えばキングダムでは、国民の腹落ちを生み出す為に必ず、ビジョンやミッションの話をします。理性的なレイヤーではなく、感情的なレイヤーにて合意形成を取っています。

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出典:『キングダム』31巻 P60-61

繰り返しになりますが、その場での腹落ちを高める為には、感情面での合意形成が肝だと考えます。また組織が弱体化するときほど、この感情面での合意形成が取れていない。

アトラエでは、何をやるかよりも何故やるのか、どうやるのかよりも、何を成し遂げたいのか、というコミュニケーションが異常に多い会社です。先日も月に一度の全社対話会にて、行動指針でもある『Atrae is me.』について、

・なぜ必要なのか?
・そもそもどういうイメージ・意味付けを持っているのか?
・どうあるのが理想なのか?

対話を重ねていました。感情面での合意形成は時間がかかりますが、ここに投資するか否かで組織の日々のスピードは断然変わると感じています。

事業運営においても、感情→理性につなげる工夫をしており、僕の場合はサイバーエージェントの藤田さんを模倣して毎回スローガンを掲げています。

スローガンを創る際には、
・事業を運営する上で全員が感じているミッションや課題感
・何を強化すると事業としてビジョン達成につながるのか
を対話や日々のコミュニケーションを通して抽出していきます。

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※以前掲げていたスローガンです。

考えてみないと・やってみないと腹落ちしない

入山先生の世界標準の経営理論ではセンスメイキングの全体像を下記のように図解してくれています。認知が先か行動が先かという話がありますが、近年では行動が合って認知があると語られることが多いです。

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参照:世界標準の経営理論

ここではどちらが正しいということはさておき、学びと同じくやってみないとわからないことがたくさんあるという前提が重要です。

先程の話と重なりますが、感情レイヤーでの認知を揃えることで、行動に対する多義性を減らすことができ、結果として腹落ちする人が増える。

カール・ワイク氏が掲げているセンスメイキングの要素でも、

・回答・振り返り:やってみて始めて理解できる『腹落ち』が存在する
・説得性・納得性:対話(内省)してみて理解できる『腹落ち』が存在する

ことが書かれています。

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参照:世界標準の経営理論

このことからも、リーダーが語ることだけで腹落ちするという幻想を捨てる必要があります。

腹落ちを整理すると

・認知が異なるため、腹落ちは人によって異なる(認知が共有できている人ほど腹落ちしやすい。)
即座的なものではなく、積み重ねのもの。特に感情面での腹落ちが肝となる。
・その場でうまく腹落ちできなかったときは、意思決定の妥当性ではなく、それ以前を振り返る(過去のストーリーを語る)

・・・続きはこちらのpodcastで話しています!


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