勝手に芸人思い出note14【SAKURAI】

今回はSAKURAIさんとの思い出について書いていく。

僕が初めてSAKURAIさんを認識したのはSMAに入って2年目くらいかな。

当時SAKURAIさんは背水の人というコンビでとよとさんという方とコントをしていた。

両国でガチャライブというライブのオーディションがあって僕はモンチャック、SAKURAIさんは背水の人として参加していた。

背水の人のコントはタクシーの設定でとよとさんが馬鹿な運転手、SAKURAIさんはそれに振り回される客。

オーディションだから誰もそんなに笑ったりしないんだけど背水の人は爆笑を取っていた。

僕が背水の人のコントで衝撃だったのがSAKURAIさんの声の小ささ。

僕は人生でこんなに小さな声で突っ込む人を見るのが初めてでめちゃくちゃ凄いと思った。

本当にディスっている訳じゃなく本当に新しいと思った。

結局、ガチャライブはモンチャックは落ちて背水の人は受かっていた。

背水の人はその後解散してSAKURAIさんはピン芸人SAKURAIさんになった。

ちなみにそれまでの芸名は本名で桜井だったのかな?あんまりその辺は知らない。

ピン芸人のSAKURAIさんは色んなネタに挑戦していた。そして今だから言えるが結構滑っていた。

特に「バカ滑りの歌」というリズムネタは印象深く、R-1ぐらんぷり一回戦で僕はSAKURAIさんのオペレーターとして音響ブースにいた。

このネタはライブでそんなにらうけていなかったのでかなり心配だった。

そして僕の予想は的中しバカ滑りの歌はバカ滑って一回戦敗退した。

まあでもこの時はまだSAKURAIさんは自分を見つめ冷静さを保っていた。

それから数日後。下北沢のライブで事件は起こった。

「MORIYAMA!今日ネタやるから後ろで見といてよ!」

SAKURAIさんは僕にそう告げた。

そしてSAKURAIさんのネタが始まった。ネタはまさかの「バカ滑りの歌」。

R-1でバカ滑ったネタ。下北沢でも当然うけない。

なんとなく気まずくなってきた瞬間。

SAKURAIさんは後ろで見ている僕に向かって突然叫んだ。

「MORIYAMA!!!お前が見ているから集中できないんだよ!」

僕は訳がわからなかった。SAKURAIさんに見てくれと言われて見ていただけなのに突然そんなこと言われてしかもお客さんは状況が掴めずポカンとしている。

しかもこのネタは音響を使ったネタだからそんなアドリブ入れたもんだから音だけはずっと流れ続けている。

まさにバカ滑りカオス状態。

ただ怖いのはここからで。

ライブ終了後SAKURAIさんが僕に一言。

「今日のネタどうだった?」

「いや!ネタとかそういう問題じゃないでしょ!何訳分かんないアドリブ入れてんすか!」

僕はそう言った。

するとSAKURAIさんはまさかの一言。

「そんなことあったっけ?」

SAKURAIさんは完全に自分が何をしたのか覚えていなかった。無意識のアドリブだったのだ。

もうホラーだ。

そんな天然のSAKURAIさんだがめちゃくちゃ兄貴肌で僕が代田橋に住んでいた頃わざわざ代田橋で降りて僕の家の近所の飲み屋でよく飲みに付き合ってくださったりした。

僕はそんな優しくてカッコいいSAKURAIさんが大好きだ。

MORIYAMAという芸名もSAKURAIさんから真似てつけているくらい。

SAKURAIさんはいつか売れるのか?いや、売れるなんてことはもう夢のまた夢。売れることは考えていなかったかもしれない。

SAKURAIさんに対して僕は失礼ながらそんな感情を抱いていた。それは周りの芸人も同じだと思う。

しかしSAKURAIさんは2020年ついに売れた。

共にR-1を戦いSAKURAIさんは僕の目の前で決勝に行った。

お客さん5人の下北沢の小さな劇場で見たあの恐怖の光景とはちがう。

なんばグランド花月という日本一の劇場でSAKURAIさんは爆笑を取り、「決勝進出者はSAKURAI!」と呼ばれ、僕は敗退し客席に残った。

もちろん悔しい思いはあるけどそれ以上に嬉しい気持ちが勝った瞬間だった。

この世界にいるとそんな夢のような出来事に稀に遭遇する。

だからやめられないんだろうな。芸人も。そしてお客さんも。

今はコロナの影響でなかなかR-1の恩恵にあずかれない状況だけどきっとそんなの関係ないと思う。

だって20年も地下で我慢してきたんだから。

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