moriyafumio

moriyafumio

最近の記事

ベンさんへの回答

今年の年明け、日本のインディーズ映画を海外に紹介するウェブ雑誌「indievisual」のベン・ディマグマリュさんからご連絡を頂き、コロナ禍での映画作りについての質問に回答を寄せた。先日、質問を投げた25人の映画作家の回答が出揃い、ようやく記事になったとメールが届いた。記事は全2回で、私の回答は2回目の方にある。 ベンさんには、昨年一度失礼なことをしている。 『すずしい木陰』公開時に、長文の記事を書いて頂いたのだけれど、英文の記事を、どのようにご紹介すべきか右往左往するうち

    • 『いつか、どこかで』の感想。

      誰かが運転する車に乗っていて、知らない町を通りがかった時、窓の外に見えたおじさんの険しい表情とか、いま自転車を降りかけたおばさんの変な姿勢とか、何十年もそこに建っている古びた家や、店の明かりを見ていると、こうして車で通り過ぎるだけで、この先、たぶん再び訪れることはないこの土地で、産まれて、暮らして、死んでゆく人たちがいるんだなあ、という気分になることが、たまにある。その気分は、映画のネタとか、映画を作りたいと思う気持ちと、どこかで繋がっているような気がするのだけれど、不思議と

      • 『凪の海』の感想

        ◼️『凪の海』を観ながら、この映画の題名が、なんで『凪の海』なのか、ずっとわからなかった。凪というのは登場人物の名前だ。凪さんは二十代の後半くらいの女性で、だから題名は「凪さんの海」、凪さんにとっては「私の海」という意味になる。◼️何年も経ってから人の気持ちに気付くことがある。その人についての断片的な記憶や、言葉にならない印象が、短くない時間を経て、自分の中で不意に筋道がついて、その人が抱えていた気持ちにやっと気付く。感情そのものに手が触れて「ああ、そういうことだったのか」と

      ベンさんへの回答