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坂田昌子さん連続講座「植生のサインからの土中環境の読み解き&適した改善造作の実践レクチャー」開催しました‼︎

こんにちは。森と踊るのタケです。
7月22日を皮切りに4回にわたって坂田昌子さんの連続講座が開催されました。単発で坂田さんにガイドツアー等をお願いしてきたことはありますが、このように連続講座を開催するのは初めての試み。
ちなみに坂田さんのことを知らない方のために、プロフィールは以下です。
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生物多様性ローカルアソシエーション代表、環境NGO虔十の会代表、CEPAジャパン理事。地元の東京都高尾山の自然保護を行いつつ、生物多様性条約締約国会議や国連持続可能な開発会議などにも継続的に参加。ローカルとグローバルをつなぐ環境活動に力を入れ、日本各地での講演活動や地域の生物多様性保全の取り組みへの協力を行っている。
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とにかく日本中を飛び回って、各地で環境に関すること、生物に関することを説いたり、具体的な環境改善活動をサポートしたりと、とてもお忙しい方。それぞれの土地で必要な知恵と技術をその場の自然の様子を見立てながら伝えている人です。

その講座をちょっと振り返っておきたいと思います。

まずは初回(7/22)。
これから4回にわたって手を加えていく森や沢がどんなところか、その場所にある植生や土の様子、日当たり、周囲の地形や水の流れなどから読み解いていきます。

この1本の木の周囲だけでも、多様な植物が生えていて、なぜこの植物がそこにあるのか、そのことによって何が起きているのか、といったことを見えている部分だけでなく、土の中や菌といった見えない世界にまで意識を向けて推察していきます。この写真の場所だけでも、生物多様性の宝庫。メモしきれないほどの見立て方を教えてもらい、森から沢の奥に向けて、現場を見ながらさらにたくさんの知恵を浴びるように受け取った1日でした。
自分としては、この場所以外で何度も坂田さんのガイドに参加しているものの、忘れていることが多く、自分の記憶力のなさに少々ゲンナリもしました・・・笑

第二回(8/11)は沢に実際に手を入れていきました。
この森には、流れがあるものの、途中からその流れが地下に潜り、枯れてしまっている沢があります。その沢をよりよくするための方法を実際に作業しながら学んでいきます。

沢の両岸に溜まった泥を掻き出し、そこに杭を打ち込んでさらに深い地下との接点をつくり、その杭を土台として柵を組んでいきます。

今回の講座は実践者向けだったので、参加者の多くはこういった作業についての経験者。坂田さんのアドバイスを受けながら、流れ作業のように進みます。そして出来上がったのが下の写真。沢の片側に見事な柵(しがらみ)が造られました。それだけでなく、手前のコンクリートとの境目は一度掘り下げ、杭を打ち込んでから柵を組み、落ち葉をたっぷりと詰め込むことで、潜ってしまった水の流れとの接点をつくっています。雨が降った時に沢を流れてきた水は、今までは泥で目詰まりして地下に潜らず、地表を流れるだけでした。それが、今回の造作で沢の地下に流れる水とつながり、本来地表と地下を行き来している水の流れが回復するのです。
自分も柵づくりの作業をしましたが、落ち葉を奥に詰め込む時に突き指したりして、力まかせにやっていることに気づきました。力ではなく「無理なく」やらなきゃな〜と思いました。まあ、その加減が難しいのだけれど。。

泥に埋まっていた沢の岸が見事な柵に・・・これでもまだ柵としては未完成で、まだまだ落ち葉や枯れ枝をその中に組み込んでいくことで、強くてしなやかな柵になっていきます

第三回(8/27)は階段づくり。
人が森に入ると、何かしらの影響を与えます。そのひとつが地面を踏み固め、斜面の土砂を崩してしまうこと。階段をつくることはその影響を弱め、造り方によっては、その場所の水や空気の循環を助けることができるのです。現代社会の人間は、コンクリートで斜面を固め、土を閉じ込めることで自然の脅威をコントロールしたかのように感じていますが、昨今の災害がそれは単なる私たちの錯覚であることを示しているのではないでしょうか。
本来人間も自然の一部。こうやって丁寧に自然と向き合い、自然物を活用する昔ながら知恵を活かしていくことでその場所の自然をより豊かにしていけるということを見せてもらいました。

丸太だけでなく、竹も活用する。日本のあちこちで邪魔者扱いされている竹も活躍できる場面はたくさんある。ここから枯れ枝を組み合わせながら柵を組み、その中に落ち葉をたくさん詰めていくことで人が踏んでも自然に与える影響を和らげ、一方、降った雨水をゆっくりと地下に染み込ませる階段ができあがる

そして最終回(9/9)。
雨が降った直後の沢を少し上流に遡り、変化のない平坦な流れを変化に富んだものになるよう、手を加えていきます。
流れに変化があるということは、さまざまな流れがあるということであり、その流れごとに違った生き物が棲む環境があるということになります。早い流れを好む生き物がいれば、淀みの中を棲家にする生き物もいる。いろんな生き物がいれば、それを餌にする生き物も多様になる。そうやって多様な生き物が暮らす環境をつくっていくことで、豊かな自然が育っていきます。
初回と今回は直接、沢に手を加えていく作業でしたが、へー、こんなやり方があるのか〜と、驚くとともに、そこに理にかなった知恵があることに納得でもありました。

沢の一部にこのような淀みができるようにこのような「わんど」を敢えてつくる。そういった場所を好んでやってくる生き物たちの棲家になっていく。
沢のところどころに石を並べて、流れに変化をつくる。同じでないこと、均一でないことこそが多様性への入り口。

この4回の講座を通して、さまざまな知恵や技術を学びました。そのどれもが、そもそも古来の日本にあった技がベースになっていて、必要な資材も丸太、枯れ枝、落ち葉、竹、石といった野山や沢の中にあるものばかりでした。
何か私たちは足元にある大切なものを見失っていること、すでに私たちはすばらしいものを持っていることを再確認させてもらった気がします。
スピードや効率といった現代社会で「是」とされていることを一旦横に置いて向き合ってみる。「沢がどう流れようとしているのか。」「どうやると、より多くの生き物たちにとって居心地のよい場になっていくのか。」「土はどうすると崩れないのか。」
ほんの数十年前までの私たちの前の世代が当たり前にやっていた自然とのつきあい方を改めて見直しながら、手を加えては自然からの答えを待ち、その答えをもらった上でまた手を加えていくことで、かつてのつきあい方を取り戻していくのだろうなと思います。
幸いにも今回、参加してくださった方々や、同様に活動している方々が各地にいます。そんな人たちと力を合わせながら自然の一部である私たちとしての生き方を取り戻していくことが、今、最も大切なことなのでしょう。

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