「クリスマスケーキ、まだありますよ~」 サンタ風の赤い服を来て、若いお姉さんが、駅から降りてくる人に声をかけている。 今日は12月25日の20時。残りのケーキを売りさばきたいのが伝わってくる。 年末の大仕事、お疲れさまです。 心の中で、お姉さんに労いの言葉をかける。 私は、毎年クリスマスの時期になると、ウキウキするのではなく、そわそわしてしまう。 生まれた時から、ケーキ屋だった。 実家は、ペコちゃんで有名な不二家で、その当時は、地域で唯一、ケーキが買える店として繁盛した
「……28,29,30。はぁはぁはぁ……」 こんなに、身体が重いなんて。 息を吸っても、吸っても、身体に入っていく感じがしない。 一歩ずつ足を動かしながら、数を数える。 30歩までかぞえて、止まり、呼吸する。 それで、ようやく10mくらい、前進する。 横には、友達のシェルパのマハビールさんがいる。 私のペースに合わせて、歩いてくれている。 ここまで来れたのも、彼がいてくれたおかげだ。 2度目のネパール。 1度目は、ブッダ生誕の地をめぐるツアーでまわった。その時に、現地ガ
「人間って、なんて、無力なんだ……」 人は、自分が状況をコントロールができると思うからこそ、自由に動ける。 しかし、私は今、身体が宙に浮くほどの無力感を味わっている。 あなたは、ブレーキの効かない乗り物に、乗ったことがあるだろうか? 3月のフィンランドの森の中。一面に、雪景色が広がっている。 念願のオーロラを見に、トナカイとサンタが住む町にやってきた。 オーロラを見れるのは夜なので、昼間は何をしようかと、ホテルが提供しているアウトドアプログラムの一覧を見ていると、犬ぞり体験
「ゴーッ……」 足元から、地響きがしている。 空気が静止していた洞の奥から、風が吹き込んでいる。 明らかに、何かが、変化した。 もしかして…… 隊長が話をしていた、過去の事故。 あまり想像したくない状況が脳裏に浮かぶ。 私は、集団行動が苦手である。 ところが、その当時の職場は、勤務命令の職員旅行が、毎年2月にあった。 そこで、私はなるべく一緒にいる時間を減らそうと、現地集合をアリにしてもらうため、近くの岩場でクライミングをしてから宿に合流、という方法を編み出した。 大ボス