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囲碁でビジネス感覚を養う 【第7回】サバキ - 困難な状況下での柔軟な対応

こんにちは、tocoです。

本連載は、囲碁の個別の戦術や概念について、
ビジネス戦略との共通点を探ることで、
ビジネスセンスを磨きつつ、囲碁への関心を高めることを目的にしています。

前回の「モヨウ」に続き、
今回は「サバキ」について解説します。

「サバキ」とは

囲碁における「サバキ」は、
不利な状況や危険な位置にある石群を、
柔軟に対応して生き残らせる、
あるいは有効活用する技術です。

直接的な対決を避け、しなやかに対応することで、
不利な状況を打開し、時には反転攻勢の足がかりを作る戦術です。

上図の通り、黒1のサバキによって活路を見出しています。
詳しくは、こちらを参照ください。

身近な例でイメージを掴む

料理における「アレンジ」を考えてみましょう。

  1. 冷蔵庫に限られた食材しかない状況(不利な状況)

  2. 既存のレシピにとらわれず、手持ちの食材を柔軟に組み合わせる

  3. 新しい料理を創作し、おいしい食事を作り出す

これがサバキの本質です。

制限された状況(限られた食材)の中で、
柔軟に対応し(創造的なアレンジ)、
最終的に望ましい結果(おいしい食事)を
導き出す戦術を表しています。

直接的な解決策がない場合でも、
状況に応じて柔軟に対応し、最適な結果を生み出す能力と言えます。

サバキとビジネス戦略の類似性

この概念とビジネス戦略の類似性について、
要素を分解しながらまとめます。

toco作成

ビジネス事例:IBMの事業転換

IBMの1990年代の事業転換戦略は、
ビジネスにおけるサバキの好例です。

  1. 柔軟性:

    • ハードウェア中心からソフトウェア・サービス重視へ業態を転換

    • 市場ニーズの変化に合わせて、事業ポートフォリオを柔軟に再編成

  2. 危機管理:

    • 1993年の巨額赤字を受け、大規模なリストラと事業再編を実施

    • コスト削減と同時に、将来性のある分野への投資を継続

  3. 資源活用:

    • 既存の顧客基盤や技術力を活かし、ITコンサルティング事業を強化

    • 特許ポートフォリオを再評価し、ライセンス収入を増加

  4. 機会創出:

    • クラウドコンピューティングやAI(Watson)など、新たな成長分野に進出

    • オープンソース戦略を採用し、新たな協業モデルを構築

  5. 長期的視点:

    • 短期的な収益性と長期的な成長性の
      バランスを取りながら事業転換を推進

    • 継続的なR&D投資により、技術的リーダーシップを維持

結果として、IBMはハードウェアメーカーからITサービス・ソリューション企業へと成功裏に転身。
厳しい経営環境を柔軟に乗り越え、
新たな成長軌道を描くことに成功しました。

実践のためのヒント

  1. 常に市場環境の変化に注意を払い、柔軟に対応できる体制を整える

  2. 危機的状況を恐れず、それを新たな機会に転換する発想を持つ

  3. 既存の資産や能力を多角的に見直し、新たな活用方法を模索する

  4. 短期的な成果と長期的な成長のバランスを意識した意思決定を心がける

  5. 困難な状況下でも、将来を見据えた投資や改革を怠らない

結論

サバキの概念は、ビジネスにおける柔軟性と
危機対応能力の重要性を示唆しています。

困難な状況下でも、柔軟に対応し、既存の資源を有効活用しながら新たな可能性を模索することで、危機を機会に変え、持続的な成長を実現できるのです。

次回は「コウ」について取り上げます。
大局的な攻防と交換の価値について考察します。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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