【1分小説】人を信じない牛
お題:「人を信じない×牛」
お題提供元:なし(自作お題)
-----------------------------------------------
牛は人に懐きやすい動物だから、昔から家畜として飼われるようになった。
「花子、なあ、頼むよ」
はずなのだけれど。
返事の代わりに、白い尻尾が張り手のように僕に飛んできた。
「痛っ!」
もおー!
鳴きたいのはこっちだよ!
白と黒のまだら模様の彼女は、黒い目でじっとこちらを見ている。
「なんだよ。どうしたんだよ、今日は」
いつもは機嫌のいい奴なのだ。
よく牧草を食べるし、乳しぼりの時は大人しいし、名前を呼ぶと返事をするのは彼女くらいだ。
「変なものでも食べたか? なあ」
その巨体をぽんぽん叩いてやると、彼女は鼻を鳴らし、僕を突き飛ばした。
「なんだよ! 僕が何したっていうんだよ!」
僕は悪態をつきながら立ち上がる。
飲んでいた豆乳がこぼれちゃったじゃないか。