【1分小説】人を信じない牛

お題:「人を信じない×牛」
お題提供元:なし(自作お題)
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 牛は人に懐きやすい動物だから、昔から家畜として飼われるようになった。

「花子、なあ、頼むよ」

 はずなのだけれど。
 返事の代わりに、白い尻尾が張り手のように僕に飛んできた。

「痛っ!」

 もおー!
 鳴きたいのはこっちだよ!
 白と黒のまだら模様の彼女は、黒い目でじっとこちらを見ている。

「なんだよ。どうしたんだよ、今日は」

 いつもは機嫌のいい奴なのだ。
 よく牧草を食べるし、乳しぼりの時は大人しいし、名前を呼ぶと返事をするのは彼女くらいだ。

「変なものでも食べたか? なあ」

 その巨体をぽんぽん叩いてやると、彼女は鼻を鳴らし、僕を突き飛ばした。

「なんだよ! 僕が何したっていうんだよ!」

 僕は悪態をつきながら立ち上がる。
 飲んでいた豆乳がこぼれちゃったじゃないか。