【1分エッセイ】チョコレートの温度

 チョコレートを食べると、「私はチョコを溶かす温度で生きているのか」と実感する。

 寒いところに置かれていたチョコは、口に入れた瞬間はひんやりとして、四角い形をしている。やがてじわっと溶けてくる。角が丸くなり、私と同じ温度になると、口の中のチョコはもうなくなっていて、やさしい甘味だけがそこに残っている。

 これが冬にチョコを食べる醍醐味なのかもしれない。冬は寒い。寒いので、電気ストーブに足元を温めてもらう。体が温まってほっとする。そしてチョコを口に含む。チョコは私に温められて溶けていく。温め合いの連鎖だ。誰かから受けた優しさを、他の人にも分け与える。私もそんな人間になれたらなあ。

 バレンタインを当日のうちに終わらせられる人がどれだけいるのだろう。スーパーマーケットではもうひなあられを売り出しているけれど、私は自分用に買ったバレンタインチョコを、まだまだ食べ終われずにいる。