【1分小説】あいつのおっさん
お題:「あいつのおっさん」
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最近、A子が綺麗になってきた。いや、不自然なほど美しくなっていくのだ。
毎日見慣れないピアスをつけ、目がどんどん大きくなっていく。廊下ですれ違った時は、きついあまい香りがした。
「お前、なんでA子のことそんな見てんだよ」
友達のC男はあきれたように俺を見た。
「いや、誰が見ても最近のA子は違うって」
C男はふと、何かに気づいたように俺の顔を見て、急にニヤニヤしはじめた。
「ははーん? さてはB太、お前、A子のこと」
「心配なんだよ」
「は?」
「A子、何か悪い奴らと関わってないかって」
教室にA子が入ってきた。今日も派手だ。ふと目が合い、慌てて目を逸らした。
ついこの間まで、教室の隅で一人うつむいているような女子だった。
それがどうして、急にきらびやかに着飾るようになってしまったのか。
俺は以前のA子の方が好きだったのに。
最近ニュースで観た、パパ活のことが頭をよぎる。
*
「B太くん、気に入ってくれるかな」
「大丈夫だよ、きっと」
ヨウコおじさん、いや、ヨウコねえさんが、A子の左目に触れる。
息を止めて真っ直ぐにアイラインを引く。
そして彼女は、A子にアイライナーを渡した。
「やってみて。アイラインを綺麗に引けるようになると、好きな子が振り向いてくれるらしいよ」
「本当に?」
「私が実証済みだから」
そう言って、ヨウコねえさんは笑った。
「A子ちゃんも頑張って」