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【1分小説】青いレモン

お題:青い×レモン×未来
お題提供元:なし(自作お題)
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 進路希望調査の紙の上に、風に飛ばされないようにだろうか、青いレモンが置かれている。

 萩原の机だ。あいつは今日休みだったから、配布されたプリントを誰かが置いたのだろうか。

 体育の時間。誰もいない教室。
 体育シューズをロッカーから出して出ていこうとして、はっとする。

 あいつは昨日、車にはねられて重体で。

 午後の風を含んだカーテンが揺れる。

 青いレモンは本物のようだ。ライムのような緑一色ではなく、太陽が昇って来るのを待っている夜明けの空のように、ほんのりと黄色く色づき始めている。

 これは美術室にあったものだ。絵のモチーフとして、あいつが描いていた青いレモン。

 隣のクラスで笑い声が上がる。校庭で青葉がさらさらと風に吹かれている。

 第一志望は何度も消して書き直した跡がある。消えそうな文字で国立大学が書かれている。経済学部、と控えめな文字も。欄外に落ちた涙の痕も。消されたその未来こそが、彼が本当に望んでいた未来だったのだと。

 遠くから風に乗って聞こえる電車の音は、どこかの病室に横たわる彼の心臓に宿る鼓動の音のようで。

 これからじゃないか。だから、どうか。