【1分小説】失恋
お題:停滞、氷嚢、生まれつき
お題提供元:お題bot*(https://twitter.com/0daib0t)
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恋が破れた。
例えばだけど、心が、氷のうみたいに、透き通った液体が薄い膜に包まれているようなものだとしたら、失恋というのは、針で刺されて、さっと膜が破れて、液体と共に心に秘めていた愛しいガラクタと、宝物が、外の空気に触れたとたんに錆びついていくのをただ見守ることしかできないような、そんな、あっけない、透き通った悲しみの色をしている。
雨はいつの間にか上がっていた。マンホールの周りのくぼんだ地面に雨水がたまっていて、もうどこへも行けない、そんな停滞した時間を映し出すようだった。
恋は生まれつきだ。異性でなくとも、あるいは人でなくとも、そこに思慕は生まれる。にんげんはにんげんのかたちになるまえに心が欠けたまま生まれてくる。
私は拾う。もういちど。錆びついてボロボロになったガラクタを、宝物を。もう一度あなたと踊るために。
錆びた月が雲に磨かれてもう一度ひかりだす。