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森下裕美X吉田尚記さんとの対談inマチ★アソビ(その3)

森下裕美X吉田尚記対談その3!
前回は少年アシベの連載が始まった頃までのお話でした。

今回は少年アシベの話から青少年アシベができるまでのお話。
さっそく続きをどうぞ!

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・キャラクター出しすぎってよく言われます

吉田
今回、この仕事をするにあたって改めてアシベを読んでみたんですけど、キャラクター量が圧倒的なんですよ。

森下
うん、キャラクター出しすぎってよく言われます 笑

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森下裕美『少年アシベ』2巻(双葉社)より

吉田
笑 で、いまでこそ、キャラクターに関するマンガ家さんと編集さんのやりとりってめちゃくちゃ緻密じゃないですか。一キャラクターについていっぱい設定作って、このタイミングで出しましょうとか、考えて作っていらっしゃると思うのですが、森下先生ってどうやってキャラクターを作っていらっしゃるんですか?

森下
そうですね、参考とかはなかったので、いつもノート持ってスケッチしたりとかしてますね。あと、こういうイベントのときに写真撮ってあとで資料に使ったりしてます 笑

吉田
え、そういう使い方するんですか!?なんと、ここにいる皆さんは知らないうちに作品に登場する可能性があるようです 笑
それじゃあ現実の人をモデルにしてるんですね・・・いや、でも現実離れしてる人ばっかりですね、

森下
あ、そっか!だから現実離れしているのかもしれないですね。現実にいる人をモデルにしているから。

吉田
・・・?。現実にいるからこそ現実離れしている?

森下
だから、それこそ作った人こそ現実的じゃないですか。

吉田
?・・・と言いますと、自分で架空の人格、キャラクターを作ったからこそってことですか?いや~でもそれでいきなり「ペッペッペ」とか名前のキャラクターは思いつかないんじゃないですか?絶対思いつかないですよ。

森下
笑 いや、辞書で変な名前がないか調べてたんです。イタリアとかスペインとかでないかな~と思っていたら、ギリシャは変な名前が多かったんです。

吉田
じゃあギリシャ人にしようと・・・。それじゃ、見た目がモデルの方もいらっしゃるんですか?

森下
いや、女の子はだいたい自分の好みで描いてるのでいないんですけど、男の子はほとんど資料を使って描いてますね。

・アシベは新幹線のなかで騒いでた男の子がモデル

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吉田
なるほど。じゃあアシベのモデルっているんですか?

森下
あ、いますね。アシベは新幹線のなかで騒いでた男の子がモデルです。

吉田
へえ~、そうなんですね。それって本人は知らないんですよね?

森下
知らない。私、彼の名前も知らない。2~3時間くらい同じ車両にいただけだから。

吉田
じゃあ、その子の名前がアシベになったのはなんでなんですか?

森下
なんでアシベになったんでしたっけ・・・、よく覚えてないですね。

吉田
・・・そんなに重要なことを 笑。

森下
あ、でも、私としては、ものつくり的にその時あったことを無駄にしないようにしてます。たまに旅先でひどい目にあったりしても、あ、これをネタにしてやろうと思いますね。たぶんアシベもそれで生まれました。

吉田
なるほど・・・その、アシベは新幹線の男の子がモデルっていう話でまだギリギリ理解できるんですけど、とはいえ、マンガをいっぱい読んできて、今までに見たことのないキャラクターだって、出てきたときに一番強く思ったのが、実はアシベのお父ちゃんなんですよ。すごい衝撃だったんですよ。見た目は赤塚マンガに出てくる感じじゃないですか。

森下
かぶっちゃった 笑

吉田
かぶっちゃった 笑、じゃないですよ!時代的に言うならば、明らかに赤塚先生の作品じゃないですか。で、赤塚作品に出てきそうなキャラクターがお金持ちの息子で、めちゃくちゃ教養高い大工って聞いたときに、えええ!って思ったんです。もう、今に至るまであの衝撃は忘れないですね。

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森下裕美『少年アシベ』1巻(双葉社)より

・お金持ちって変なことするなあって思ってましたね。

森下
あ~それはそんなに狙ってなかったですね。

吉田
え、そうなんですか!?それじゃ、どういう経緯で出来たんですか?

森下
ええと、うちの父が大工というか建築の仕事をしていたんですけど、超成金で、なんか知らないうちに象牙のでかいやつ買ってきたり、鎧買ってきたりしてたんです。お金持ちって変なことするなあって思ってましたね。お金持たせるとロクなことしない。

吉田
つまり、お金持ちは面白いということですか?

森下
うん、そうですね。昔からのお金持ちだとたぶんそうならないと思うんですけど

吉田
つまり、むしろ成金のほうが面白い?

森下
そうですね。

吉田
あ~確かにオーセンティックなちゃんとしたお金持ちだとちゃんとした文化事業とかしそうですしね。マンガに登場する人がそれやられても・・・ですよね。マンガに登場する人は何の意味もなく変なところにプールつくっちゃったりした方が面白いですよね?

森下
そうそう、ゼリーのプールとかですね。

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森下裕美『少年アシベ』1巻(双葉社)より

吉田
ああ、お父さんそういうことしてましたね!で、そういう成金の姿が純粋に面白くて、そうだったらいいなと思って、アシベのお父さんは作られたんですか?

森下
そうですね。なので、アシベのお父さんはうちの父がモデルです。建築業を真面目にやってるけど、お金をもったらロクなことしないっていう感じのおじいちゃんでしたね。

吉田
一番初めのきっかけとしてキャラクターが出来上がるのは分かりました。その他の部分は、言い方あれかもですけど、そんなに苦労せずできたんですか?

森下
そうですね・・・。一人の時間が長かったんですよね。子供の時からいつも物語作って遊んでたんです。5時間くらい。その延長でやってるので、物語作れっていわれたら、『ガラスの仮面』の北島マヤが演じるみたいにいくらでもやれますよ。

吉田
へえ~~~!!それでいうと、森下先生の特徴って、四コマもストーリー物も描くところだと思うのですけど、森下先生はどちらが好きというのはありますか?

森下
いや、そのとき描きたいものがあれば、どの形にあうか探して、四コマならば四コマ、ストーリー物ならストーリー物にします。

吉田
あ、じゃあ作品の物語が先にあるんですか?

森下
そうですね。たとえば今の編集さんが、形式は好きにしていいよっていう感じだったので、『青少年アシベ』はストーリー物になりましたね。

吉田
なるほど。
あと、それに関連してもう一つ気になることがありまして、そうやってストーリー物も四コマも作られていると思うのですが、どちらも「ムダ」がないんですよね。ギャグって、てにおは一個ちがってもギャグにならないんですよ。でも、アシベとか読んでて「これ余計だな」っていうものを全然感じないんです。

森下
それは、ちゃんとハマるように訓練してるんです。ハマってオチができるように。

吉田
物語が、ぱんってハマるように、訓練してるということですか?

森下
はい、そうです。訓練して、ストーリーは山もあれば谷もあって、ちゃんと落ちるようになっています。
あ、でも、私、実は誰かにこれをやれって言われたら絶対できないタイプなんです。好きにやっていいよって言われたら、ちゃんとできるんですよね。そのせいか、編集も何も言わないですし。

吉田
それは・・・森下先生に対する信頼かもしれませんよ。この人は最後バチっと合わせてくれる。だからもう、そういうところを直すのが編集さんの仕事だったりするので、編集が必要ないからこそ、ば~んって投げちゃう・・・ていう風に判断されたのでは?

森下
うん、でもそれ、好きにしていいって言ってもらえなかったら、全然なにもできなかったですね。いま、双葉社なんですけど、いいですね。みんな優しい。

・ネットで勝手にアシベを青少年にしてBLを描いてたんですよ。

吉田
ぼくもすごく向いていらっしゃるなあと思って拝読しています。
そのなかで、『青少年アシベ』をいままさに制作中でいらっしゃると思うのですが、これはどういう経緯で始まったんですか?

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森下
いや、本当は「青少年」って銘打つ気はなかったんです。実は、作画をしてくれてる笑平さんっていう人が、ネットで勝手にアシベを青少年にしてBLを描いてたんですよ。

吉田
え、BLですか!?あの、笑平さんって、それこそ他にもいろんな作品を手掛けていらっしゃいますよね?

森下
そうですね。はじめは趣味で、遊びで描いていっぱい上げてくれてたんです。それを私が発見して、「お金ももらわないでそういうことするんだったら、私がストーリー考えるから漫画を描いて」ってお願いしたんです。

吉田
・・・また全然規格外の話がでてきた!笑
いやいや、個人的には金田一が大人になったとかいうやつの流行りに乗っかったのかと思ったんですけど、勝手に描いていた方を原作者がネットで発見して・・・商業に引き上げたってことですよね?

森下
そう。私、BLが全然分からなくて、男の子同士の恋愛というか、そういう世界があることも知らなかったんです。長いキャリアを持っているんですが。で、絵が上手かったんです。ここまで再現してくれて、それで、キャラクターにも深い愛情を持ってくれていたんで、この人を放っておいたらいけない、自分のものにしたい、描いてほしいって思ったんです。

(その4(最終回)へ続く)


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