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BOOK REVIEW vol.016 ジャスミン

今回のブックレビューは、ロジャー・デュボアザンさん『ジャスミン』です。こちらの絵本は、かなえさんが開かれた読書会に参加した際の“課題図書”だったことがご縁で出会いました。

ジャスミンから学んだことは
「私はこうしたい」という思いを信じて行動する勇気

主人公は、農場で暮らす雌牛のジャスミン。農場の庭で、羽飾りのついた素敵な帽子を拾うところからお話は始まります。

「め牛が、人間の貴婦人のように、きれいな帽子をかぶってはいけないなんてことは、ないでしょうよ」と素敵な帽子を頭にのせるジャスミン。その後も「私はこうしたい」という思いを貫く姿にとても勇気をもらえます。

読み始めて早々、とても胸に刺さるフレーズに出会いました。

わたしには わかっているわ。わたしが なにを好きで、わたしに なにが似あうかも。あなたたちが どのように思おうと、わたしは 気にしないわ。

わたしは、わたしが こうしていたいと思うように するわ。だれにだって、その人らしさというのが あるはずですもの。

『ジャスミン』本文より引用

帽子をかぶり、他の動物たちに大笑いされたジャスミンが言ったひと言。他の動物たちは「気はたしかなの?とんでもなく おかしいわよ!」だの「みんなと違うことをしているのは嫌でしょ?」なんて言ってくるけれど、余裕の表情で楽しげに農場を歩き回るジャスミン。

もしも私がジャスミンだったら…ソッコーで帽子を脱ぐと思います。その前に、帽子をかぶったまま、みんなの前に出る勇気すらないかもしれません。人の目が気になる私にとって、人と違う行動をとることはとても怖く、周りからの揶揄には耐えられないからです。いくらその帽子が気に入っていたとしても。

ジャスミンはどんなに冷ややかな目で見られても、陰口を言われても、帽子をかぶり続けます。その後は、そんなジャスミンと、ジャスミンの一挙一動に右往左往、振り回される周りの動物たちとの対比が面白く描かれています。

私にはない強さを持つジャスミンに憧れる一方、共感するのは周りの動物たちの方でした。今までずっと同じでいた集団の中で、突然みんなとは違う行動をとる人が現れたら…心がざわつくのもよく分かります。

そして、そのざわつきの正体は、“うらやましさ”だったりするのかなと思いました。一人だけ素敵な帽子をかぶって目立つジャスミンがうらやましい。(このうらやましい気持ちを素直に認められないからスネちゃま化するのですね…)このお話の中に出てくる動物たちも、本当はジャスミンのようになりたかったのではないでしょうか。

ジャスミンも目立ちたかったわけではなく、自分の中の「こうしたい」という思いを守っただけー。人の意見に流されるのではなく「私はこうしたい」という思いに素直に従うことが、“その人らしさ”や“個性”に繋がることを知っていたジャスミン。人と同じ行動をとり、自分の意見を押し黙って生きるのではなく、自分がしたいことを選択し、それを表現することの大切さを学びました。そしてその個性に優劣などはないことも。

『ジャスミン』は10年以上前に出版された本ですが、今の変容の大きい時代に読めて良かった。絵本だけれど、多くのことを経験した大人の私たちの方が響く内容かもしれません。圧迫感を感じさせない淡い色調のイラストも素敵で、ページを開くたびに「あなたならどうしますか?」と静かに問われているような気がしました。

私もジャスミンのような強さや勇気を持ちたい。『ジャスミン』を読み終えた時、心の中に一本の支柱ができたような気がします。

この一冊に出会えてよかった。
いつも心にジャスミンを。

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