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【ひらめき☆マンガ教室】課題1ネーム感想【第5期】

課題1「自己紹介を『物語』にして描いてください」で提出されたネームの感想記事です。


ひらめき☆マンガ教室について


ひらめき☆マンガ教室は一言でいうと、評論家・マンガ原作者のさやわかさんによる個性的なマンガ教室です。

【ひらめき☆マンガ教室とは(主任講師・さやわか氏より)】
ゲンロン ひらめき☆マンガ教室は、株式会社ゲンロンが2017年に設立したマンガ家育成スクールである。主任講師を評論家・マンガ原作者のさやわかが務め、第一線のプロであるマンガ家を多数ゲスト講師に招きながら、幅広くマンガ界で活躍する人材を育成している。 前身となった「ひらめき☆マンガ学校」は2009年に講談社で設立され、ふみふみこ、米代恭、谷川イッコといったマンガ家を輩出。技術論にとどまらない、作家に必要な自己プロデュース力(ひらめき)を独自のメソッドで鍛える点を特徴としている。同教室では毎年、受講生が同人誌を制作し、同人誌即売会「COMITIA」にて頒布する授業プログラムが実施されている。しかし第4期にあたる今年度は、新型コロナウイルス禍の状況を鑑み、同人誌はイベント頒布ではなくネット販売されることになった。受講生たちは機械的に3チームに分割され、それぞれ合同誌を制作。設定された期間中の販売数を競い合い、その部数によってひらめき☆マンガ教室内での成績ポイントが加算される。つまり、あなたがどの本を支持するかが、直接受講生たちの評価につながるのだ……! (さやわか)

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000034496.html

第1期の講義内容は下記の本にまとめられています。

主任講師のさやわかさんによる、スクール運営の裏側については下記の記事が詳しいです。

作品表記については、 作者名「作品名」 としています。(敬称略です。)
私の提出作品も下記にありますのでよろしければご覧ください。


以下、課題1「自己紹介を『物語』にして描いてください」で提出されたネームの感想です。


nonaka「入り船に良い風」

先輩に怒鳴られるシーンから始まる、アニメーターの職場の話です。

周りに人がいる所で平気で怒る先輩がいて、プライバシーがない職場の一つの逃げ道として屋外の喫煙所(ビルのベランダか踊り場)が描かれます。

オフィスから屋外に出た時から続く、ビュウビュウという風の表現が特徴的です。冒頭に怒鳴ってきた先輩が喫煙所ではふつうに話しかけてくる、ほかの先輩が結婚することを知る等、仕事から一時離れた場所で起きる淡々とした雰囲気やコミュニケーションが心地良いです。

主人公が着ている、「BIG WAVE」と前面に書かれたTシャツが何を意図したものなのかは気になりました。(タイトルからの連想とかですかね?)


aoki「ショータイム」

アニメーター(おそらく)である作者の語りを、控え室のプロレスラーの不独白で代弁する話です。

冒頭から読者に目線を向けるレスラーが、「一本吸い終わるまで ちょっとばかし話聞いて行って下さい」と言い、自分の半生(≒作者の半生)を語ります。

「オタク」である自分の生い立ちを、「ガンダム」「涼宮ハルヒ」など固有名詞を交えつつ具体的に語っていきます。内省的なセリフやタバコを持った手の演技と回想で、作者と読者が一対一で向かい合って話しているような感覚があります。

最後のコマでアニメーターである自分の職場(ラッシュルーム)に戻っているので、過去を振り返った後にそのまま今の自分と向き合うオチとなっていて良いと思いました。


あさかたこれ太郎「みなそこにねむれ」

「蟲」と呼ばれる生物に侵食された都市を生きる少女の話です。

緻密に描き込まれた絵で、死と隣り合わせの日常が描かれます。p06の少年のセリフによると、この世界では体を機械化しないと「日の目に当たらず石になるか、天寿を全うして植物になるか、それとも腐り果てて蟲になるか」とのことです。

はじめに世界観設定をして、その中で生活する人物を描く(都市自体が主人公)ものに近いので、この物語が即興で作り上げたものなのか、ライフワークとして長いスパンで取り組んでいくものなのかどうかは気になります。


大久保どんぶり「夕方スペクトラム」

瞬間移動の能力を持つおじいちゃんが認知症を機にローカルヒーローを引退する話です。

自分の家に着いても自分の家だとわからなくなったおじいちゃんは、瞬間移動の能力が暴走して過去に飛び、同じく過去に戻った主人公とともにヒーローチームに助けられて現在へと帰ります。

暴走した自分の能力を消すことを選択したおじいちゃんがどういう思いでその選択をしたのか、主人公は詳しく聞くことはありません。能力を失っても家族の日常は続きます。

少し離れた関係性の、家族のやりとりを丁寧に描いていて良いと思いました。


俗人ちん「むっつり風紀委員の特別分析」

むっつり風紀委員と一緒にエロ本あさりをする話です。

学外においても風紀委員という役職を看板にしてエロ本へと向かう女子生徒と、素直にエロ本を求める主人公とのやりとりがコミカルで心地よいです。

冒頭1、2コマ目、「2000年代初頭 スマホなど無く気軽にエロを摂取することなどできなかった!!」「少年達はエロを求め 雑木林へと駆け巡った!!」のモノローグが作品全体のテンションとリズムを端的に表していて良かったです。

風紀委員の女子生徒の設定、最後のコマでAVを手にして「こんなの私の家じゃ流せないわ」と言っているので、性に対して潔癖な家庭環境で育ったために風紀委員を内面化するようになったんですかね。むっつりだから風紀委員になったのか、風紀委員を自覚的に行ってむっつりを加速させているのか、女子生徒のキャラ性が気になりました。


降原「カノンノさんがくる」

部屋作りにハマり出した独身男性の元にやってきた、お部屋のアドバイザーに顔芸で叱られる話です。

物がぞんざいに扱われているのを見て錯乱する癖、絵作りとしても効果的でいいですね。メイド服を着て、丁寧な言葉遣いでにこやかだったのが途中からひたすら顔芸劇場になっているのがおもしろいです。

マンガを読む際になんとなくキャラの声優が思い浮かんだりするのですが、今作の場合はお笑いコンビ インパルスのコント「悪魔祓い」を思い出しました。

アポなしでなかば無理やり部屋に入ってきて部屋のダメ出しと後日の材料費の請求をしているので、カノンノさんは家具を購入した店の正規のスタッフではなく、なにかアウトローな仕事をしている人なのかなと思いました。(顧客情報をどこかから入手し、ターゲットのお部屋能力上げと金を巻き上げていく流しの職人のような……)


はねむら「おひっこし退去費用バトル」

https://school.genron.co.jp/works/manga/2022/students/hanemura/23523/

賃貸物件の退去時、業者に請求された高額請求と交渉する話です。

机に座ってパソコンでメールでやりとりをする、動きがつけづらい場面設定ですが、主人公の心情の強調やメール画面の大きさのメリハリで画面がうまく構成されています。

はじめにずらぁーと登場した7人の業者や、直接やりとりをする兼池の心情や意図の描写がない分、今回の高額請求は相手を選んでふっかけているものなのか、その業者の通常運転なのかが見えづらいところが気になりました。


葉野 赤「こころのもののけ」

仕事で疲れた主人公が田舎町で「もののけ」の少女に助けられる話です。

小さい頃に弱虫で泣いていたときによく見えていた「もののけ」(モノノケ? 表記揺れあり)は自分の中の弱さだと思っていた主人公。「もののけ」の少女に町の黒いもの(憎悪?人を襲うタイプのもののけか)から助けれて自分の中の「強さ」を示されることで自分と向き合うことができるようになります。

少女との出会いから助けられるシーンまで、コマの大小や演出で話をビジュアルで展開されているのが良いですね。

少女に助けられる一連のシーン、p5の5コマめに少女が笑っているコマがあるので、主人公を景色の良い場所に連れて行った後に、主人公が何かに憑かれていることに気づいたんですかね。


hokke1973「制作理由」

美大を出てCM制作会社に就職した主人公が、絵を描くことにワクワクしていた幼少期を思い出して退職する話です。

冒頭4ページの流れ、絵を描くことが好きだった幼少期→美大でのしんどさ→絵をあきらめてディレクターとして就職の流れが端的に示されていて良い導入ですね。

陰口を言われる体育会系の職場、嫌ですね……。セリフの言葉遣いが一つひとつ考えられていて、情報の説明と絵とのリンクがうまいです。絵のタッチや場面の切り替え方が、なんか絵コンテっぽくて良いですね。

この作品からは離れますが、広告賞で受賞するCMは物語性強めでメッセージ主体のものが多い印象なので、マンガを描くときの参考にも役に立つかなと思いました。

↑コマーシャル・フォトの年間で2021CMベスト1に選ばれたCM


かわじろう「よりみち」

合理的でまじめな主人公が、スケボーと出会って「寄り道」を楽しめるようになる話です。

冒頭の「まじめなセバスは何があっても絶対に 寄り道しない」の1コマ、特徴的な顔の造形も相まって、端的に主人公の性格を表せていてよいですね。道の先にいるねこ(?)たちが思い思いの動作をしているのもかわいいです。

人生の中で「寄り道」をしたことによる充実感を表すために、ラスト2コマでマウンテンバイクやタトゥーの話も出てくる、というオチにしていると思います。が、スケボーをしているときの絵作りや描写が魅力的なのでもっとスケボーメインの展開も見てみたいな、と感じました。(まじめなセバスのきまぐれ生活みたいな感じで色々寄り道に手を出すのもよいかも)


柿谷孟「雨正月」

仲の良い中学生の女子生徒二人が、受験や大人になることを意識しつつ会話する話です。

オチや途中の所で強調されるポタージュの発音がツタージャで笑い合う部分、箸が転んでもおかしい年頃という慣用句を想起しますね。p10の「どうせ高校行ってもまた2人でグダグダしてるんだし」や、p11の「わたしとフクイちゃんしかいないみたい 世界で」の部分、将来への不安と、決断を先送りすることで発生する束の間のゆったり時間がないまぜになっていて良いです。

10年後また会ったとき、何気ない会話を自分は覚えているのに、相手はマルチの勧誘としてしか自分を見てこないの、切ないですね……



泉ころろん「繊細だけど、優しい君へ。」

気まぐれでワガママな主人公が、優しくていつも話を聞いてくれる「彼」のことを考える話です。

「彼は、優しい人だ」として彼の印象から始まり、「繊細だけど、優しい君へ。」で終わる。固有のキャラの性格の描写ではなく「彼」という代名詞を使っている分、全体がなんとなくj-popの歌詞のような印象を受けました。

繊細で優しいのは彼であると主人公は思っていますが、他者の気持ちを想像できる人でないとそう推測することは難しいです。私といつも話してくれる「彼」がそういう人だといいな、この時間や関係性を宙吊りにしたままともに時間を過ごしたい、という願望があるのでそう見えていて、固有名ではなく君という表現になっているんですかね。


小林 煌「おばあさんを助けたら、ウォンバットになっていました。」

異世界転生のフォーマットで現代社会のままウォンバットになる話です。

ウォンバット、知らないな……と思ったら、日本で6頭しかいないレアな動物なんですね。

ウォンバットの丸っこい形と整理されたコマ割りでテンポよく話が進んでいて良いです。

p2の下段、「あんた いいことするじゃん」のモノローグ? がありますが、このときに異世界転生のお約束(神や超越者に能力を授けられる)があって、ウォンバットへの転生と人間への再転生があるんですかね。平行世界の主人公はそのままトラックで引かれたままの世界線があるのでは……という心配が起こりました。



楓「未来のサナギ」

占い師と相談してハードな職場を退職した主人公が自分を見つめ直す話です。

観察していたサナギが死ぬ冒頭と対応する最終ページ、占いの描写や主人公の独白などが特徴的で良いですね。退職した職場の情報がモラハラ上司や職業選択の悩みぐらいしかないので、これからの主人公がどうやって蝶々として生まれ変わるんだろう……とは思いました。

占いに疎いのでこの占いの描写がどの程度フィクションなのかはわからないですが、まず相手に自由に答えられる質問をして話していくの、コーチングっぽいですね。


qjin「海外逃亡日記」

大学四年生が就活の時期にベトナムやインドでバックパッカーする話です。

冒頭、「大学四年春… 就活まっさかり」〜「そうだ。バックパッカーだ! 学生だけしかできないぞ! これしかない!」までの流れ、海外逃亡までの流れがコンパクトにまとめられていて良いですね。

作中で起きるエピソード、具体的に描写されていて状況が想像しやすくておもしろいです。ですが、主人公の自発的な行動がきっかけで起きた失敗でなく巻き込まれて発生しているものなので、場面の転換や困ったときの反応で主人公の性格や海外逃亡で得たものが示されているともっと良いかもしれません。


くたくた「見失いガチ」

就活中の元女子大学生が女子高生に会って相談する話です。

就活がうまくいかない主人公と彼氏と別れた女子高生がひたすら身の内を話す会話シーンが主ですが、舞台の移動やカメラ位置の工夫で会話シーンのテンポが良いです。

初対面時の「あなた」「お姉さん」呼びから最後まで名前が明かされずに進む分、脳内にいるバーチャル女子同士の会話っぽいな……とは思いました。



中西ゆかり「ヤクザから出世を約束された男」

サラリーマンがぼったくりにあう話です。

冒頭2ページでのめくりを意識した主人公の紹介やオチの土下座シーンなど、コマ割りの工夫とセリフ回しで読みやすいです。

p11で主人公が新卒で入って4日目だとはっきりわかりますが、この人21歳なんですね……。ぼったくりに会ったときの対応やクレジットカードで50万払おうとしている所から見ると、特殊な環境で鍛えられて今の性格や態度ができたのでしょうか。

平凡なサラリーマン、どこの会社にでも存在するような普通の男、という言葉は実際の主人公の行動を見せた後や本人の自意識でないと成立しないと思うので、やるときはやる男な感じの描写や展開があるとオチに至るまでの流れにより共感しやすくなるかもしれません。



sakom「わたしという沼」

釣りキチっぽい主人公が沼の変なヌシを釣る話です。

p2ではじめにヌシを釣る動きのあるコマや主人公のストレートなものいいと表情など、絵に見所があってよいですね。

自己紹介に悩んで半魚人になった滑川が新しい沼のヌシになったと気づくことで悩みが消えるの、なかなか不条理でいい感じです。もう人間には戻れない……

p7でそれぞれの滑川が自己紹介をしていますが、人間の社会にいて人間相手にしている自己紹介なので、過去の失敗した自己紹介を繰り返し思い出して、沼の中で延々とうまくいく自己紹介を考えているんですかね……。p10の2コマめで他にも変なヤツがいることが示されていることから、この作中では人間と妖怪のようなものの区別が曖昧で行き来可能なのかもしれないですね。


鷹鯛ひさし「汚い犬」

和菓子屋で上司に頭を踏まれる話です。

幼少期に犬を傷つけた加害者としての自分の記憶と、日常的に起こっている上司からの怒鳴りと頭を踏まれる被害者としての経験が照らし合わされて表現されています。

朝起きて仕事に行くシーンから退職願を出すシーンまで、読んでいてずっと「つらい……これはつらい……」となりました。怒られるようになった直接の原因や和菓子屋に務める経緯などがない分、理不尽な被害の経験が直接伝わってくるようになっています。

p13で上司を殴ることを考えつつも幼少期に犬を傷つけた経験を思い出して殴らないことを選択しますが、この上司がどんな人間なのかがわからない分、物語としては少しでも反抗しておいた方がつらさからは逃れられるかなと思いました。


いとしろ たかや「大人になったら」

近所のお兄さんのことが好きな主人公がいい大人になろうとする話です。

小さい頃に言われた「いい大人」になったら結婚することを考えるという発言で、主人公がいい大人になるために周りに相談や自分なりの努力をするところ、健気で良いですね。キャラ主体でのコマ割りで、表情中心に追うことができて読みやすいです。

冒頭「わたし、先生のお嫁さんになりたい」から始まって、学校の先生や直接何かを教わっているの関係性なのかと思ったら、有名な画家なので先生と呼んで親しくしているんですかね。


谷なすび「大盛り or DEAD」

実家に帰省して両親と焼肉食べ放題に行く話です。

実際に起こっている出来事としては焼肉食べ放題で両親がひたすら食べていた、ということですが描き方がコミカルで楽しいです。玄関でランニング後のストレッチをしている母親、馬に乗って登場する父親などのボケに対して主人公のローテンションなツッコミが心地良いですね。

p12で主人公が大盛りと並盛りでの道の心象風景が出るシーン、ここまでで帰省する前の生活や境遇の描写(「大盛り」にして後悔した体験)がないので、作中で主人公が何を選ぶことを「大盛り」と呼んでいるのかは推測しづらいとは思いました。



とみた「幸運こわい」

突然意識を失って入院した主人公が自分を生かしてくれた人たちに感謝する話です。

48分の心肺停止の後に蘇生した「幸運」を祝福する周りの人たちと、自分に起きる幸運がこわいと思っている主人公とのテンションの差がテンポよく進んでいて読みやすいです。p13、自分が使っていた鞄が重いことに気づくことで、自分が助かったという幸運に感謝をすることができる、という展開がビジュアルでの見せ方が良いと感じました。

冒頭からp12までバックが黒塗りで過去の回想として描かれていますが、p1で蘇生したシーンの続きからさらに過去に戻ってp5で蘇生したシーンの続きになるので、この物語を語っている主体や読む際に少し戸惑うな……とは思います。

意図的だとは思いますが、作中での「とみた」さんの感情の変化を考えた際に、意識を失うに至った飲み会自体の描写がない(入院するまでの「とみた」さんがどういうキャラなのかの説明)ので、この主人公が幸運に感謝できるようになるまでの変化は推測しづらいかもしれません。


たにかわ つかさ「リベンジヒーロー」

ヒーローになることを諦めた主人公が、幼馴染に励まされてもう一度ヒーローになることを目指す話です。

ヒーローを諦めた理由について詳しく話す主人公と、それまでの経緯を理解した上で激励してくれる幼馴染、いいですね。主人公が自分の飛べる能力の活かし方について、幼馴染からの期待と活かせる機会があることで気づくという展開、まっすぐでわかりやすいです。

冒頭幼馴染がイケとナオの2人出てきていてどちらも特徴的ですが、ナオはその後メインのセリフないので、「ナオはどこ……」となりました。



千住ちはる「寝ない子誰だ」

子供が寝付かないことを諦めて座禅組んだら寝ていた話です。

絵本の読み聞かせをした後に電気を消したp6以降のシーン、コマの割り方や子供の描写に動きがあってよいですね。一つひとつのコマに入っている人物の動きや表情がよくコントロールされていて読み心地がよいです。

p9の「もう 無理じゃないか……」とあきらめた後、黒ベタ多めに小さめの白文字で「無理じゃないか……」と再度入って強調される部分、主人公のあきらめと座禅へと向かう心情が汲み取れて良いコマだと思いました。


よこうただ「空にすむ」

空に浮かび続けるボールを観測するものたちの話です。

p2-3、地面に落ちた影に気づいてから空を見上げて浮かぶボールに気づくシーン、カメラの位置が子気味よく動いていてよいですね。

空に浮かび続けるボールのことを浮遊と呼んでいると思うのですが、現状浮かんでいる高さだと雲の高さほどではなく地面に影を落とすぐらいなので、作中世界の中でどんな理由で長く観測され続けているのかや実際に起こっている現象がどのようなものなのかは推測しづらいと思いました。


KenTa「甘ちゃん」

甘やかされて育った主人公が宿題を父にやってもらう話です。

正面と横顔でのシンプルなコマ割りで構成している分、話の流れがわかりやすいです。同じ構図の中でも目線や手で動きをつけているので感情も読み取りやすいですね。

表彰されるような絵を父親に描いてもらったというオチで真正面から絵を写しているので、「図工の絵の宿題」という情報で父親はどのような絵を描いたのかは気になります。


晃てるお「その仕事を続ける理由」

仕事で失敗した主人公が同じ職場で働き続ける話です。

仕事でミスが多く先輩からも見放されてきている主人公が最後辞めるオチになるのかなと思ったら先輩の方が他課へ移動するオチで、切なくなりました……。

セリフメインで主人公の感情が示されていない分、ふだんの仕事の中で起きる出来事や場面での起伏が出ていて良いですね。p1の説明部分で「技術部発注」とこの会社での固有の出来事が入っているので、登場人物の名前は仮名で何か設定した方がよりキャラの区別がつきやすくなるかなと思いました。


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