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「証言=証拠ではない」~草津町長町冤罪事件から考える~

今から5年近く前の2019年11月、群馬県草津町の町議会議員の女性Aが、町長から町長室で性加害を受けたと告発し、草津町自体も「レイプの町」として汚名を着せられる、という出来事があった。ところが町長は「指一本触れていない!」とこれを事実無根であるとし、逆に女性町議Aを告訴する。

草津町付近というのは火山帯でもあり、すぐに非難行動がとれるよう町長室の扉というのは常時開けっ放しにされていた上、ガラス張りですぐ隣に応接室もあったともいうから、とても性加害の現場であったとはそもそも考えにくい。また、女性町議Aの証言というのもコロコロ変わり、レイプされたと言ってみたり町長を好きになったと言ってみたり他にも被害者がいると言ってみたり、とにかく一貫性に欠けるものだった。

女性町議Aは町民の信用を失いリコールされるが、その後Aは日本外国特派員協会で記者会見を行い、今度は世界に向けて町長から性加害を受けたと発信し始めた。「草津町では女性はモノ扱い、女性は権力者の愛人になれば湯畑周辺で店を持たせてもらえる」とも発言し物議を醸した。これにより日本一の自然湧出量でもある草津温泉を持つ草津町は「レイプの町」として世界中に発信されてしまったのだが、日本のメディアはもちろん、海外メディアまでこうした証言のウラを取らず「女性の被害者が勇気をもって訴えているのだから嘘を言うはずがない」という前提で一方的に垂れ流してしまった。

その結果A元町議を支援する会が結成され、フラワーデモまで行われ、草津町をボイコットするような運動が過激化していく。草津町の施設に爆破予告まで出る始末で、小中学校は臨時休校を余儀なくされた。町長はこれに対しついに虚偽告訴罪(罰金刑はなく懲役刑のみの重犯罪)で A元町議を告訴、そこでようやく性加害は町長を政治的に失脚させるための「嘘」であったと認めるに至った。

A元町議は性加害を受けたというならなぜまず警察に被害届を出さなかったのか、という素朴な疑問があるわけだが、これに対しA元町議は「警察は信用ならない」と言ったらしい。だが性加害自体が嘘だったのだから当然何の証拠もなく、被害届を出さなかった理由は恐らくそれだろう。マスコミは性加害が嘘だとわかった後も積極的な訂正は行わず町長を非難していた人も謝らず、甚大な報道被害と風評が残ることにもなった。

性被害において女性でも男性でも被害者というのが声を上げられず、権力者に黙殺されてきた面はもちろんある。しかし、何の証拠もなく証言だけならどんな虚言を言うこともできてしまうわけで、それでマスコミを巻き込んで拡散させれば誰でも犯罪者に仕立てることができてしまう。それは法治国家を無法な魔女狩り村へと堕とす事にほかならず、この件はその象徴的な出来事だったと言える。証言=証拠ではない。



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