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競泳ドライランドの弱いところ

一般的に補強トレーニングと言われる自重メインでのトレーニング。
競泳では「ドライランド」と表現されます。
実施内容は大きくは変わらず、つまりは陸上でのトレーニングです。
競泳は水中で身体を思い通りに動かす必要があることから
ドライランドトレーニングは重要視され今ではジュニアからマスターズスイマーまで当たり前に実施されています。
数年前、約10年ほど関わった大学水泳部トレーナー活動を離れましたが
そこで体験し、今でも考えるドライランドについて考察します。

  1. ドライランドの目的と歴史(簡単に)

  2. ドライランドで起こっているマイナス面

  3. 結局何が必要なのか?

以上の内容でまとめていきます。

1、ドライランドの目的と歴史

正直にいうと何十年も前のことはわかりません。
把握している内容で言うと、日本に補強トレーニングが浸透してきたのは
2004年のアテネオリンピックが終わり、2008年の北京オリンピックを目指してきたあたりからだと思われます。
当時、競泳といえば腰痛か肩の痛みに悩む選手が多かったことから
日本代表で活動していたドクターや理学療法士がエクササイズを考案しそれを普及させていったことを確認しています。
競泳は水中という、かなり不安定な中で力を発揮させる必要があること
重力の関係で腰が落ちてしまい、腰痛者が頻発していたことから
「腹圧を高める」としてドローインエクササイズが主流となりました。
もちろんそれだけではありませんが、このエクササイズはおそらく今でも行っているところは多いのではないでしょうか?

実際、この期間から腰痛や肩の痛みを訴える選手が減ったとのことで
強化というよりは障害予防のエクササイズがまずは前に出てきたという動きがあることを認識しておいてください。
最近では、強化系トレーニングも充実してさらにタイムの向上が進んでいる競泳界になっています。

2、ドライランドで起こっているマイナス面

自分が大学生になりチームでのドライランドを経験し
その後、チームトレーナーとなりドライランドを深めることをしていく中で1つの疑問点をいただきました。
「動き固くないか?」
これがスタート地点でした。
大学を卒業し、専門学校中で後輩たちをサポートしていた頃に何か不思議に感じたのを今でも覚えています。
自分の専門は自由型でしたが、当時平泳ぎ専門だった選手が思うようにタイムが伸びなかった中でアップから一緒に考え進めていった際に
「お腹の力抜けば良いやん」と声をかけたところ
ここから泳ぎが変わっていきました。

「腹圧を入れる」ことがお腹を固めるに近い動きをしていたため
体重移動が出来ず、元々持っていたスムーズな動きを阻害していた可能性があったのです。
これは真面目な選手ほど陥りがちな、意識しすぎることで力の抜き方がわからず
脱力が出来ない、さらには必ずと言って良いほど
「後半に大きく失速する」選手を多くみた経験がありました。
これは、ドライランドの目的が
「腰が反らないようにお腹に力を入れる」としていたからと考えています。
腰を反らないのは腰痛の原因がそこにあったからでしかなりません。
つまり、あくまでも身体のラインは抵抗の少ない一本ラインをキープすることのはずなのに
目的がどこかですり替わっていることがトレーニングの中では起こり得ます。
人間は、トレーニングでやったことをシンプル学びます。
それが動きにマイナスにならないように
あの選手がやっているから、あの本に書いてたからやってみよう
は時としてマイナス面を生むことになるでしょう。

3、結局何が必要なのか?

競泳サポートを通して、必要だと感じたことはどの競技も同じことで
「その人の身体と動きに必要なことを行う」
という当たり前のことでした。

ここで考えておきたいのは
あくまでも「泳ぎありき」ということです。
ボトムアップとトップダウンという表現を使いますが
競泳のサポートを続けてきて感じたのが
ボトムアップで考える人が圧倒的に多いということでした。


ボトムアップ→身体の機能(小さいところ)から動きに繋げていく
トップダウン→動きを分析して、徐々により小さく具体的にみていく

エクササイズを考える場合、起こりやすいことがあります。
それが、「ここが固いから、動かないから」行うということ。
ドライランドのほとんどが動きを出すために行われています。
もちろん、それはすごく大切なので否定することはありませんが
何となく足りない気がしています。
例えばこのトレーニング。

トランクローテーション(胸部の可動域エクササイズ)水着のため黒で加工しています。

一般的には手をついて骨盤を動かないようにして上半身を回旋させる。
という方法で行われます。
その方法は全く問題もなく、エクササイズとして有効であると考えます。

しかし、こんなことを考えました。
特に自由型の場合、「呼吸の時は伸びている手が重要なのに、なぜついている手を意識しないのだろう」と。
つまり、どこから身体を動かすかで起こりうる効果はいくらでも変えることが出来るということです。
これは、あるところでは「支点揺動」と呼び
どこを支点にするかで、その動きを実現するために使われる部位を変えることが可能になります。
少しわかりにくい表現にはなってしまいますが
「固いから」「動きが悪いから」「弱いから」だけで動きを判断すると
時として、本来必要な動きを妨げる可能性があること。
もっというと、同じエクササイズでも適切な効果を得ることができないことが起こり得ます。
ちょっとした意識を変えることで得られる効果大きく変わること。
特に動きをかなり意識する競泳ならでは問題点にはなりますが
だからこそ、トータルから分析して必要なトレーニングを導くことが大切になります。

今回は少し抽象的にはなりましたが
競泳チームによく起こる例を元にまとめてみました。
ボトムアップだけで考えず、泳ぎそのものにも目を向け
動きを実現するためにどうしたら良いか?
を考えるのも重要な視点になりますよ。

お読みいただきありがとうございました。

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