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「スキーワックス」とは何なのだ?

スキーワックスを理解する上で、「ワックス」という定義の広さが取っ付き難くしていると思う。しかも、私はナチュラルワックスなんて言葉を使っている。少しでも理解して頂ける方を増やしたくて、簡単に説明にしたい。

「ワックス」とは、一般的に「常温で固体、加熱すると液体となる有機物」。
日本語では蝋とも言う。
熱をかけると溶ける固体とイメージしてもらったらよいと思う。

スキーワックスは一般的に石油を分解していって作られたものが大半だ。
石油系ワックスは、「パラフィンワックス」や「マイクロクリスタリンワックス」がメインで使われる。それぞれ組成が大きく異なる。

「石油系ワックスとは?」

石油系スキーワックスで一番使われているのは「パラフィンワックス」。
ロウソクと同じ成分。直鎖状炭化水素が主成分で、炭素数、分子量が比較的に小さい。炭素の数により固さ(融点)が異なる。

「マイクロクリスタリンワックス」は、分岐炭化水素やシクロパラフィンで構成されている。結晶が小さい為、滑走面に浸透しやすい特徴がある。分子量が高く、炭素が分岐しているのでサラっとしている。その分パラフィンよりも更に生分解性が悪くなるデメリットもある。

少しマニアックになると「合成ワックス」と呼ばれるものもある。石油由来であるエチレンを重合させていき、ポリエチレンワックスと呼ばれるものになる。オレフィン系の近い為、滑走面素材であるポリエチレンとも相性がよい。

「天然系ワックスとは?」

一般的には、油脂(トリグリセライド)と高級アルコールによるエステルを示す。

メジャーな天然系ワックスでいうと「カルナバワックス」。ブラジル北部に自生するカルナバヤシの葉から抽出精製されたもので、脂肪酸エステルが80%。残りが遊離脂肪酸、遊離アルコール、+αと言う組成になっている。
使われている分野は、カーワックスやヘアワックスなどで融点が高い為、耐久性撥水性が求められる繊維分野にも使用されるケースがある。

これ以外にも「木蝋」、「蜜蝋」「イボタ蝋」など様々な種類がある。植物だけでなく、動物や昆虫由来もあったりすので一言に天然系と言っても、組成が大きく異なる。同じワックスでも産地によっても違うなんて事もあるのだ。。石油系以上に選択の幅は広い素材と言ってよいと思う。しかし、滑走性を示すものが以外と少なかったりするので困りもの。

スキーワックスの開発をするに際し、個人レベルである各種特許等を調べてみた。すると海外では1980年代から天然系の取り組みは試行錯誤されていた。日本でも動物系油脂をワックスに取り入れている人も確認できた。
古くは蜜蝋を滑走面に塗ってスキーを楽しんでいたと言われている。

このように既に先人が多くの事例を試している。その知恵を引き継ぎながら、新しい知識を加え、自然を尊重できる製品開発を目指したいと思う。


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