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#書評

「琉球独立論」で露呈する、日米の歴史的悪意|『実現可能な五つの方法 琉球独立宣言』(松島泰勝)

「琉球独立論」で露呈する、日米の歴史的悪意|『実現可能な五つの方法 琉球独立宣言』(松島泰勝)



沖縄に核兵器が配備されていたことが明らかになる写真が公開されました。配備されているのではないかという噂は以前からありましたが、それが白日の下にさらされました。

アメリカが沖縄の軍事的役割をいかに重視していたかがよく分かります(もちろん今も重視しています)。それは日本も同様です。「17世紀から今日にかけて、日本は琉球の軍事的、政治的、経済的、外交的利益をいかにして得るかという物欲的な関心でしか

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やはり江戸庶民の味方だった名奉行の実像──岡崎寛徳『遠山金四郎』

やはり江戸庶民の味方だった名奉行の実像──岡崎寛徳『遠山金四郎』



市川新之助、中村梅之助、市川段四郎、橋幸夫、杉良太郎、高橋英樹、松方弘樹、松平健のみなさんがテレビで演じたのが『遠山の金さん』シリーズです。古くは片岡知恵蔵主演の映画もありました。

お白洲の前でも悪行を認めぬものたちに、片肌(時には両肌)を脱いで、悪人どもに見覚えのある桜の入れ墨を見せ、見事な裁きをするというこの「金さん」シリーズは時代劇の定番ともいえるものでした。事件の決着の付け方はどこと

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触れた人でないと分からない個性丸出しの芸人たち──吉川潮『芸人という生きもの』

触れた人でないと分からない個性丸出しの芸人たち──吉川潮『芸人という生きもの』



30人の〝芸人〟についてその素顔、隠された一面を綴ったミニ評伝とでも言ったらいいのかもしれません。〝芸人〟とはいっても第二部では玉置宏、島田正吾・緒形拳、勝新太郎、小沢昭一さんたちという人たちも取り上げられています。いわゆる〝芸人〟ではありませんがぬきんでた〝芸人的素養〟の持ち主として取り上げられています。

とりあげられたどの人にも吉川さんの愛情があふれています。芸人の世界に生まれ、その中で

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「生き残った者が平和のために尽くす」「ヌチドゥ タカラ!!(命は宝なんだ)」から!──横山秀夫・三枝義浩『戦火の約束 漫画でよめる! 語り継がれる戦争の記憶 』

「生き残った者が平和のために尽くす」「ヌチドゥ タカラ!!(命は宝なんだ)」から!──横山秀夫・三枝義浩『戦火の約束 漫画でよめる! 語り継がれる戦争の記憶 』



戦争は人知を超えた悲劇をもたらします。戦争をコントロールすることなどできるわけがありません。それは人間集団が他の人間集団を完全にコントロールなどできないのと同じです。逆説的ですがイラク支援にあたって当時の小泉純一郎総理が「どこが戦闘地域で、どこが非戦闘地域か、今、私に聞かれたって分かるわけがない」という答弁が国会でなされましたが、戦闘も戦争も始まってからでは誰もコントロールできないものだと思い

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才気あふれる一大衆として生きた戦前、戦中。そして自覚した大衆として生きた戦後──津野海太郎『花森安治伝―日本の暮しをかえた男―』

才気あふれる一大衆として生きた戦前、戦中。そして自覚した大衆として生きた戦後──津野海太郎『花森安治伝―日本の暮しをかえた男―』



「民主々義の〈民〉は庶民の民だ

ぼくらの暮しを なによりも第一にする ということだ
ぼくらの暮しと 企業の利益とが ぶつかったら 企業を倒す ということだ
ぼくらの暮しと 政府の考え方が ぶつかったら 政府を倒す ということだ」
雑誌『暮しの手帖』の創刊者、花森安治さんのエッセイに記されている言葉です。
「この雑誌に企業広告はのせないと最初から決めていた」という独自の編集方針のもと、厳格な〝

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混乱した非常時が抱かせる〝強さ〟や〝英雄待望〟こそがファシズムの誕生を促すものなのです──片山杜秀『国の死に方』

混乱した非常時が抱かせる〝強さ〟や〝英雄待望〟こそがファシズムの誕生を促すものなのです──片山杜秀『国の死に方』



「政治的判断能力なき大衆が気分で投票しては、そのあとの展開があまりに選挙時の話と違うので当惑し、次の選挙で怒りをぶちまけようとする。しかし相変わらず判断能力は劣ったままなので、選挙を重ねれば重ねるほど、国のかたちが狂ってゆく」

このような片山さんの一文にドキリとしますが、この文はこう結ばれています。
「それが昭和初期だった」
と……。けれど現在の日本により当てはまっているように感じてしまいま

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