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歴史と文化の共存 長崎ビンデージビルヂング

「時空の歩き方」 長崎ビンデージビルヂング


2022年10月15日の公共建築の日に「時空の歩き方」が開催されました。これは長崎ビンデージビルヂングと長崎県共催で開催され、旧長崎警察署と旧魚の町団地が公開されました。

長崎ビンデージビルヂングとは、長崎のあちこちに残るビンデージな建物を発掘し、みんなの居心地良い場所とすることを目指す団体です。2年前の公共建築の日に発足しました。

旧魚の町団地(長崎市魚の町)

昭和23年築の旧魚の町団地は平成31年まで「県営魚の町団地」として使われていました。戦後の公営住宅としては、現存する最古のうちの1つです。今回はDIYやリノベーション、昭和空間の再現など、各部屋を活かして様々な空間がつくられていました。

昭和23年築の魚の町団地、建設当時は最新の団地
参加型ワークショップ
レトロなキッチン
オカズ・イシグロによる空間表現。ノーベル文学賞作家カズオ・イシグロ氏の作品の中に団地が出てくる。当時、長崎市に住んでいたイシグロ氏。作中を読み解くとこの魚の町団地ではないのかと推測をしている。
部屋は素敵な空間にリノベーション
カラフルな内装。事前にワークショップで壁塗りを実施。外壁とのギャップがある
オカズイシグロによる表現

旧魚の町団地は最近まで使われていたこともあり、綺麗ですぐにでも活用できそうでした。部屋が区切られているので、様々な表現が可能な空間だと思います。これからサウンディング調査を行うそうで、ぜひとも様々なアイデアが出て欲しいと思います。

旧長崎警察署・旧長崎県庁第三別館(長崎市江戸町)

旧長崎警察署について

長崎市江戸町にある旧長崎警察署(旧長崎県庁第三別館)は大正12年(1923年)に第3代長崎県庁舎の隣に建てられました。昭和20年に原爆の影響で第3代県庁舎は消失しましたが、長崎警察署は残りました。昭和43年に警察署が移転してからは第4代県庁舎の第3別館として活用されましたが、平成30年に尾上町に移転して以降は使われていません。

大正12年(1923年)築の旧長崎警察署。間もなく100年を迎える
大正12年7月に竣工。竣工当時の写真。奥に見えるのが第三代県庁舎
第三代県庁舎。戦時中に全焼した

構造・デザイン

構造はRC造とレンガ造で外壁は白灰色のタイルで覆われています。石張りの舗装や階段、塔野の丸窓、内部の床や建具、装飾が大正の雰囲気を漂わせます。地下1階、地上3階、床面積1200㎡、高さ16m 。
長崎警察署の時は、1階が事務、応接、宿直。2階が会議、医務、刑事。3階が武術道場、倉庫。地下室に留置場や炊事場があったそうです。因みに今も地下には木造の留置所があります。

正面玄関
どことなく気品を感じる内装

階段。柵の一部は竹となっている。当初は鉄だったが戦時中の金属徴収で竹に代わった。
部屋の一部。優しい日の光が照らす


旧長崎警察署 活用か?壊すか?

今回、参加者の方に簡単なアンケートをとりました。
旧長崎警察署を未来ではどうするか?来場者にご協力いただきました。
A活用する B保存する C壊す



結果は A.活用する 52票(87%)、B.保存する 5票(8%)、  C.壊す3票(5%)
となりました。多くの方から「活用」という声を頂きました。
活用の中には、「クリエーターの集積」、「オフィス活用」、「交流拠点」、「ノスタルジックだけど最先端の学校」など様々なご意見を頂きました。勿論、活用に当たっては費用を要します。どの様な活用が展開できるか更に議論を深める必要があります。2年前に長崎県県庁跡地推進室にて活用のサウンディング調査が行われました。また大学生の提案など様々な議論がなされています。その様な声を大切にし、歴史と文化のまち・長崎として大切な資産を生かしていきたいですね。

今の都市開発に思うこと

都市再開発は都市の利便性向上、新陳代謝に必要なことではある。一方で地方都市は歴史文化、生活の営みにより成り立っているため調和も求められる。

今、長崎は100年1度と言われる大規模再開発が行われています。しかし都市に残された空間も創造の場として再び都市の発展を支えるのではないかと考えます。

効率よい容積を上げる再開発は都市の利便性向上に必要なものです。しかし、一方で都市の合理性の中で効率が悪いものは淘汰される傾向にあります。しかしその不合理とは一側面から見たものではないかと考えます。都市の残された空間に、創造的な活動を担う多様な人材による活動を促すことが、成熟縮小期の都市の可能性を見出すのではないでしょうか。

長崎の歴史的資源を活用し展開できることが文化的なまちであり、国際的な支持を集めるのではないでしょうか。100年に1度とは先だけを見るのではく、100年前も見なければならず、時代を紡ぐ作業が今このまちに必要だと考えます。

イベント後にまちを見ると違って見える




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