見出し画像

愛すべきミステリ作家、故小泉喜美子さんを偲んで

 私はファンレターなど書かない人間である。
恋愛然り、友だち然り、のめり込むことはない。
とはいえ、例外は付きものだ。
唯一書いた「小泉喜美子」さんのことを、書かせてもらおう。

 代表作は「弁護側の証人」。
海外ミステリの翻訳多数。全作品は127冊もあるらしい。
弁護側の証人はもちろん良質の小説だが、私はもっぱら翻訳もののファンだった。エツセイも愉しかった。

p.dジェイムス「女には向かない職業」、ジョセフィンティ「時の娘」、映画で知られる「ミスターグットバーを探して」、ユーモアミステリ「クレイグライスのシリーズもの」、読むだけで酔っぱらいそうな、これもクレイブ「素晴らしき犯罪」、アーウィンショー「ビザンチウムの夜」、ジェイムズクラムリー「さらば甘き口づけ」、レイモンドチャンドラーまでも妙訳で紹介しているのだ。

そのころは海外ミステリーに嵌っていて、月刊誌ハヤカワミステリマガジンを楽しみにしていた。
推理、いえ、探偵小説ばかり読んでいた。

チャンドラーについては、また別枠で書いてみたいと思っている。

 私生活のほうが華やかかもしれない。
江戸っ子で、頑張り屋さんで、呑んべえで、新宿二丁目のバーの階段から落ちてそのまま亡くなっている。ほんとに愛すべきひとである。

作家生島治郎氏と結婚、その後『ハードボイルドだど!』のコメディアン、ボートビリアン内藤陳氏と暮らしている。

 翻訳ものやエッセイを読み、珍しくお便りしたいな、返事くれそうな優しさも感じたので、感想などを送った。

忘れていた頃、突然自宅に電話がかかってきた。
お便りもらってとても嬉しいと。
電話は秘書に調べてもらったらしい。
取り次いだ娘も覚えているだろう。
しどろもどろの受け答えをしたはず。 

その後、明太子なんぞを贈り、そのころ私は喫茶店をやっていたので、ちなみに、屋号は「アガサ」、ハガキに商売繁昌と書かれていたことが記憶にある。
そちらでも飲んでおられますか?

 あれこれ確認のため、調べていたら突然、私と同じ誕生日だったことが判明。
なんだこれは… 絶句。
何という偶然、とり肌ものだ。
全く知らなかった。
その頃は女性の生年月日など書かれてなかった。

改めて縁を感じた。
あの時ドラキュラものを書きたいと言われてましたね、「血の季節」、復刊されたそうですよ。
幻の作品と言われていますよ。
小泉さん、ご冥福をお祈りします。


     ※「弁護側の証人」集英社文庫以外
       は、ハヤカワミステリ文庫

     ※フォト 小泉さんからのハガキと
          雑誌の切り抜き




この記事が参加している募集

#推薦図書

42,602件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?