見出し画像

回顧手記「もっと話したい」 2007.06.22

 日本語の塾を始めてもう五年たつ。もちろん日本語教師の資格を持っているし、日本語学校でも教えていた。
 これまでも幾度かこんな質問を受けたことがある。
 「日本人は十年近く英語を勉強しているのに、なぜ話せ ないの?」
 日本語を学ぶ外国人は、片言でも一生懸命話そうとする。間違ったり、言葉が出てなかったりしても、昨日のことや週末の予定を楽しそうに話す。 初めのころはとにかく下手である。何を言ってるのか判らないときもある。 それでも、「話したい」 という思いを大切にし、私は耳を傾ける。 一年もすれば、談笑ができるほどになる。
 以前、日本語を全く知らないフランス人が泊まりに来たことがある。
 私はフランス語はできない し、彼の英語も怪しい。でも、 三泊するうちに、お互い英語混じりのフランス語と日本語 で会話をし、何度も聞き返したりはするが、何が言いたいか分かるようになる。
  言語を学ぶ上で、この「話 したい 伝えたい」ということが最も大切なのかしれない。文法や単語力などの正確さではないと思う。
 さて、宿ではできるだけ日本語を使うようにしている。 それはせっかく日本を旅行し ているのだから、日本語に接する機会をたくさん与えようとする、私なりのおもてなしである。
 決して「英語が苦手だから」 という理由ではないとしておいてください。

北海道新聞 夕刊 えぞふじ 2007年6月22日(金) 掲載

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?