写真は一度きり
写真の専門学生だった当時、よそのゼミの夏季課題に「毎日一枚だけ撮る」というものがあった。たしか36枚撮りのカラーフィルムだった。
八月に脳神経の疾患で休職することが決まってから、あの課題をやってみようと思い立った。
記録を残すための名目ではあったけれど、変わり映えのない日々にせめてもの刺激がほしかった。
フィルムカメラは持っている。しかし肝心のフィルムがない。近所のカメラ屋では入荷待ちだったから、代わりに写ルンですを買って帰った。
写ルンですの思い出といえば、中学の修学旅行で班ごとに渡された写ルンですを現像したら、妙なものが写り込んでてちょっとした騒ぎになったことと、社会人になってから河津の辺りを旅行した時に、一つの写ルンですを友達三人で回し撮りしたことだろうか。
シャッタースピードや絞りを調節できない不自由さはトイカメラで体験済みだし、それも含めて好きだったけれど、父親のお下がりのフィルムカメラやお小遣いで買ったデジタル一眼レフの方が馴染み深かった。
そんなこんなで十年ぶりの写ルンですは、昨日までとの変化を狙いすぎて一枚も撮れない日や、シャッターを切ってから「フラッシュ焚けばよかったな」と思う時もあった。
私の好きな写真家の人に言われた言葉がある。
「写真は一度きりなんだから」
今この時、この瞬間は一度きり。やり直しはない。
失敗も含めて写真は楽しい。
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