第10話「赤ちゃん金魚と夏祭り」
とても不思議なことなのだが、年に一匹だけ赤ちゃん金魚が産まれて増える。
気がつくのは、梅雨明けの時期で、生まれたのはもっと前なのだろうけど、小さすぎて気づかず、ある程度の大きさになって初めて気づく。最初は、色が黒くて、それが大きくなるにつれて赤くなっていく。怖がりなので、小さいうちはなかなか見えるところに出てこなくて、時折見える姿に一喜一憂する。
卵は、いっぱい産んでいるはずで、稚魚も沢山生まれているはずなのだが、毎年、何故か一匹だけ増えていく。きっと、大人の金魚に食べられてしまうのだろう。まだ、メダカより少し大きいくらい。池に多分いるだろうヤゴに食べられないで生き延びて欲しい。
さて、梅雨があけて屋久島に本格的な夏がやってきた。気温は、大都市の様に暑くならず、猛暑日もほとんどないのだが、陽射しは強烈である。すると、自然と泳ぎに行きたくなる。
小さい頃には、よく海に行き、網に入れて海で冷やしたスイカやトマトそしてキュウリなどを泳ぎ疲れた時に食べたものだ。今、僕らは川の大きな秘密の淵で泳ぐのだけど、今年はスイカをもっていこうか?
横浜のマンションでは、毎年、納涼祭を行ってきた。自治会のみんなが手伝って、焼き鳥、カレー、ミニコンサートやゲーム、そしてビンゴ大会などを子供達のためにやるのだが、自治会のメンバーが皆高齢者になってしまったのも、時の流れを感じる夏の一幕でもある。
さて、屋久島の宮之浦町では、やはり夏祭りと花火大会を行う。村落ごとで夏祭りをやるのだが、宮之浦の夏祭りが一番大きく、各村落からバスを仕立てて集まってくる。いろいろな屋台とにわか作りの舞台では、自慢の園芸大会が続き、焼酎やビールを飲みながら楽しむのだ。
メインイベントは、巨大な火おこしである。矢倉の真ん中に太くて長く大きな丸太を立てて、ロープを巻きつけ、海側と山側に100人ぐらいが綱引きの如くロープをもって、号令に合わせて引き合うのである。「海引け!」ごろごろごろ、「山引け!」ごろごろごろごろと何度もやっていると火がつくのである。なかなかの迫力で、その火を矢につけて射るのだが、風が強いと目的の山神様を模したところに届かなかったりして、それは面白いのである。(今年は、残念ながら密を避けるため綱引きの火おこしは見送られてしまった)
さて、夏を皆さんは如何に過ごされるのだろうか?都会から離れて、観光地ではなくてもいいので、自然の中に浸るその贅沢が日本にはあるのでは無いだろうか?
蚊取り線香の香りの中での線香花火も粋なものである。
と書いていると、今年は赤ちゃん金魚がもう一匹いたとの連絡が来た。ビデオを送ってくれたのだが、確かに2匹いる。既に赤くなって来ていて、1匹はまだ背鰭が黒い。更に、メダカの赤ちゃんがたくさん産まれていた。
とても可愛くて、何度もみてしまう。
良い夏を過ごされますように。
森の黒ひげ塾
塾長 早川 典重
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