アイデア量産

はじめに

前回は新規事業のステップ1である「新規事業の目的の明確化」について投稿しました。
今回は新規事業のステップ2である「アイデア量産」の方法について書いていきます。

自由に発想するのは意外と難しい

実は、何の制限も無く自由にアイデアを出すというのは、かなり難しかったりします。
突然ですが、今から数分間で新規事業のアイデアを少し考えてみてください!






何か1つでもアイデアを考えられた方は、相当優秀な人です。
また、2つ以上アイデアを考えられた方は、頭が柔軟な人か変人(いい意味。新規事業界隈に多い、無茶ぶりに慣れている人)です。
そのため、何かしらの制限や切り口を勝手に設定した上で、アイデア出すというのが一番のポイントになります。
極端な切り口の例えになりますが、【宇宙空間に酸素があり呼吸出来る(=真空では無い)】としたら、何をしますか?や、【人間がエラ呼吸出来る(=酸素ボンベを背負わずに海に潜れる)としたら】、どこに行ってみたいですか?という感じです。
【】の中が切り口になり、これがあることでアイデアを出すのが少し簡単になると思います。
宇宙空間で何をするか悩みますが…海の中なら色々と行ってみたいところや、やってみたいことは多々出てくると思います。
・色々な魚と一緒に泳いでみる
・海底神殿を散策する、もしくは制限なく調査する
・深海魚の生態系を実際に見てみる
・フリーダイビングの世界記録(94m)を更新してみる
などなどワクワクすることが沢山出てくると思います。

切り口

切り口があることでアイデアを出すのが簡単になると言われても、その切り口はどの様に考えたり、決めたりすれば良いの?という悩みを抱えると思います。
そこで、私たちが普段使っている切り口の考え方をご紹介します!

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課題
以下の3つのイメージで切り口を決めます。
①自分の悩み事、日ごろ感じる課題を切り口にする
②同僚や先輩、友人のお困り事や課題を切り口にする
③複数人で集まって、皆が困っている事、社会的な課題を切り口にする

起点
ボトムアップ型とトップダウン型があります。
社員からの発案を切り口にして、アイデアを膨らませていく方法がボトムアップ型です。アイデアコンテストなどが分かりやすい例だと思います。
ここで注意が必要なのは、アイデアコンテストのアイデアがそのまま新規事業になる事はまず無いということです。
そのため、アイデアコンテストのアイデアは、切り口として活用して、大きく変化・ピボットさせるという割り切りが必要です。
次は、トップダウン型、いわゆる経営層からの依頼(お達し?)です。
社長室や経営企画部の方にとってはあるあるだと思いますが、「AIを使って何か考えろ!」とか「DXだ!」みたいな社長や役員命令が飛んでくると思います。
切り口を決める手間が減って楽なのですが、目的が不明確なので、目的に立ち戻りましょう。

技術
技術を使って何しよう?を切り口にして考えていく方法です。
新技術の場合だと、AI、5G、デジタルツインなどが挙げられると思います。
少し前だと、ブロックチェーンなどもありました。
私たちの経験上、新技術を切り口に新規事業を考えていくのは、凄く苦労します。
そのため、余りお勧めはしません。。。
一方で、昔の技術や使い慣れた技術を他に転用出来ないか?という切り口で考えていく方が、意外と簡単に進んだりします。

事例
海外や他業界の事例を参考に何か出来ないか?を切り口にして考えていく方法です。
新規事業界隈で良く言われる「アナロジー」は、このケースです。
例えば、エストニアで成功した電子政府を、自分の会社や業界で成功させるには?という感じで考えます。

持味
自社の強みを使うのか?それとも、強みは一旦考えずにゼロベースで考えていくか?を切り口にして考えていく方法です。
例えば、取引先との長いお付き合いが強みという会社の場合は、お客さんまたは仕入先さんと一緒に何か出来ないか?を切り口にすると、新しいことを始める業界や、出来そうな事が一つの制約になるため、アイデアが出やすくなります。
一方で、ゼロベースで考える時には、今の制約を取り払ったら何が出来るか?を切り口にして考えていくと意外と筋の良いアイデアが出てくる時があります。

融合
色々な物の組合せを切り口にして考えていく方法です。
例えば、一度実現性を忘れて、強みの技術×新技術でどんな物が作れそうか?というのを切り口にすると、面白そうな製品のアイデアが湧いてきます。

価値
提供する価値(ウリ)を切り口にして考えていく方法です。
BtoB企業の場合は、「お客さんの売上を向上させられるものは?」か「お客さんのコスト削減になるものは?」を切り口に考えていきます。
BtoC企業の場合は、「使う人が安心出来るには?」「時短になるものは?」「使う人がくつろぎや安らぎを感じるものは?」などを切り口に考えていきます。

枠組
枠組(フレームワーク)を切り口にしてアイデアを考えていく方法です。
これについては、フレームワークの紹介と共に、使い方の概要をご紹介します。

アイデアを出す枠組

上記の切り口の中で、アイデアを比較的出しやすいフレームワークとして、以下の様なものがあります。

ブレスト(ブレインストーミング)
ご存知の方も多い方法だと思います。
複数(1チーム4~5人ぐらいがベストです)の人が集まって、テーマに沿ったアイデアをなるべく多く出す方法です。
この時に大事なことは、4つです。
①切り口・テーマは事前に決めておく
 →ブレストの中で、切り口・テーマを決めない
②実現不可能なアイデアでもOK!
③チームメンバーのアイデアを否定しない
 →例えば、「ここが難しいんじゃない?」の様な発言をしない
④チームメンバーのアイデアを借りて、さらに発展させる
 →ブレスト中は、自分のアイデアをチームメンバーに盗まれても、チームメンバーのアイデアを自分が盗んでもOK!
この4つを守れれば、驚くほど色々なアイデアが出てきます!

クロスSWOT分析

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具体的な使い方は別の機会にご紹介出来ればと考えていますが、この4つの方向性で戦略を考えます。
基本的には戦略を出すフレームワークですが、戦略では無くアイデアを出すときにも活用出来ます。

ファイブフォース分析

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こちらも具体的な使い方は別の機会にご紹介出来ればと考えていますが、このフレームワークは、基本的に業界内の競争の強さを分析する時に活用するものです。
競争の強さが分かれば、競争を回避する方法が見えてくると思います。
その方法をベースに新規事業のアイデアを練っていきます。
私たちが定義する新規事業という観点からは、以下の視点を追加するのがポイントです。
・買い手に新しい価値を提供するには?
・代替製品を超える新しい製品は作れないか?
・新規参入者を減らす、拒む仕組みを作れないか?

バリューチェーン

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このフレームワークは、企業活動を機能別に分解して分析する時に活用するものです。
自社の活動の中で、競合他社と比較して強い活動と、弱い活動があります。
強い活動が利益の源泉であり、弱い活動が利益を伸ばしきれていない要因となります。
そのため、強い活動をさらに伸ばすには?、弱い活動を改善するには?という問いでアイデアを出していきます。
新規事業という観点からは、以下の視点を追加するのがポイントです。
・新しい技術を作れないか?使えないか?(技術開発に着目)
・川上統合出来ないか?(商品製造の内製化や、原材料の製造が出来ないか?)
・川下統合出来ないか?(直接販売(D2C)や、サポートの内製化が出来ないか?)

オズボーンのチェックリスト

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こちらも具体的な使い方は別の機会にご紹介出来ればと考えていますが、このチェックリストは、上の図の9つの観点からアイデアを出して行く方法です。
新規事業という観点からは、以下の4つを中心に検討することになります。
・今の技術やノウハウを転用できないか?
・今の技術やノウハウを応用した新しい使い道は無いか?
・製造、業務、商流を逆にしてみたら?
・今の技術や製品に新しい物をくっ付けてみたら?又は取除いてみたら?

PEST分析

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「政治」「経済」「社会」「技術」の4つの大きな視点から、業界の置かれている状況や環境を分析するフレームワークです。
PEST分析は視点が大きいため、新規事業に繋がるアイデアを出すために使うというのが直感的にイメージしにくいと思います。
そのため、このフレームワークを上手く使えるとトレンドに乗った新規事業や、競合他社が入ってきにくい新規事業を創ることが出来ます。
こちらも具体的な使い方は別の機会にご紹介します。

まとめ

今回は、アイデア出しを行うための切り口とフレームワークをご紹介しました。
1つの切り口からアイデアを出すのでは無く、様々な切り口やフレームワークを活用しながら、まずは沢山の新規事業のアイデアを出してみて頂ければと思います。
アイデアが沢山出てきたけど、次はどうしたら良いの?と悩まれると思います。
そこで、次回は新規事業のステップ3の「アイデア絞込」の方法をご紹介します。
また、上手くアイデアを出せないという場合は、私たちにお気軽にご相談下さい。
アイデア出しのコツの詳しいご説明や、アイデア出しのお手伝いを致します。

著:NS.CPA森本 晃弘

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