2024年のお仕事振り返り<副編集長 兼 デスク 兼 編集者 兼 記者の業務記録>
仕事で書きまくっていると、どうしても他に書く気力がなくなる。
というのはいいわけです。Xにはじゃんじゃん書いているわけですからね。
ということで、何かテーマがないと重い腰を上げられないので、思い切って1年の仕事を振り返ってみます。
そもそも誰? という状態だと思うので、改めて。日経クロストレンドという、日経BPのデジタル媒体で副編集長をしている、森岡と申します。
では、まずはざっくりと1年の仕事を振り返ってみます。
1年間のお仕事ざっくりまとめ
【編集者&記者としての仕事】
担当した記事は全部で179本。
うち、
編集した記事(ライターさん寄稿者さんに書いてもらったものや転載記事)が159本、
自分で執筆した記事が20本でした。
昨年は担当した記事が189本でしたので、微減という感じ。
ちなみに、一般的に副編集長というと、編集や査読などがメインで自分では書かないケースが多いのですが、うちの編集部ではまだまだ人も少ないので、副編集長も書きます。
自分で書くし、編集もするし、記者の記事の査読もします。
つまり何でもやる。
【副編集長(デスク)としての仕事】
次に副編集長業務。一番大きな仕事は、デスクという立場で数人の記者と一緒に特集をまとめることです(前述のように自分で編集したり書いたりもしながら)。
2024年に担当した特集は、
3月「新指標『顧客幸福度』ランキング2024」
6月「データで見る 令和の新・消費者像」
10月「パワーカップル&パワーシングル消費の実態」
12月「未来の市場をつくる100社【2025年版】」
です。
特集は通常1週間で完結するのですが、顧客幸福度と100社特集はそれぞれ2週間続く大特集。
記事本数も多く、今思い出すだけでもプレッシャーで胃が痛くなります。
後は大規模イベント「日経クロストレンドFORUM 2024」の講演内容のとりまとめ(なんでも係)も担当。
2024年は久々のリアル開催を復活。本当にバタバタでした。ただ、昨年以上にたくさんの方にお申し込みいただけたので、ほっとしました。
さらに、日経MJで2024年4月からスタートした「日経クロストレンド面」への転載や、反対にクロストレンドへ転載する日経MJの記事の調整なども担当していました。
とまあ、ざっくりまとめるはずが、結構長くなってしまいました。
では、改めて記事を振り返っていきたいと思います。
2024年の記事振り返り
「特集編」
【3月】新指標「顧客幸福度」ランキング2024
ファンベースカンパニーのファン総合研究所さんと共同で初めて実施した「企業・ブランドの顧客幸福度調査」をベースとした特集です。
2023年から議論を続け、大規模調査を経て、24年3月にようやく記事化できました。「顧客幸福度」という新しい概念を扱うものですので、どう読み解くべきか、何を記事化すべきか、かなり悩みました。
とはいえ、まずは顧客幸福度が高いとはどういうことなのかを知るために、スコアが高い企業を中心に取材を実施。ファンに愛されている理由を探ることで、幸福度の高さの秘密に迫りました。
その他、調査データをいろいろな方向から分析しつつ、いつの間にか記事が23本になっていたことも試行錯誤のあらわれですね。
顧客幸福度特集は2025年も企画していますので、ご期待ください。
【6月】データで見る 令和の新・消費者像
次は日経クロストレンドでも読者の方からの反響が多い「消費者像」に迫る特集です。
個別のマーケティング施策の事例記事と並んで、消費者の行動や思考の変化を捉える記事も読みたいと言ってくださる方が多いですね。
そこで6月に特集化したのが、「データで見る 令和の新・消費者像」です。
価値観の多様化、興味関心でクラスター化していく「界隈消費」の台頭など、消費者の姿は変化し、捉えにくくなっていると感じています。
そんな中、今後台頭してくる可能性がある新たな消費者像を探ったのがこの特集。データを基に、消費者像の解像度をいかに上げるかが大きなテーマでした。
記事の並びはこんな感じ。
・30年で大変化「令和の消費者」 マーケの鍵握る「ひとりモード」とは
・高年収「パワーカップル」の消費実態 一体何が違うのか、データで検証
・「シニアはデジタル弱者」は本当か? データで見るスマホ活用の今
・Z世代とどう違う? 「α世代」の消費を読み解く3つのポイント
・n=1調査で探る「4つの最先端」消費者像 SNSで「のぞき見」するワケ
・大学生800人調査、「SNS映え重視」はもう古い 推し活女子は5割超え
・“円安富豪”のインバウンド、山形県で消費激増 都道府県ランキング
データを持つ多様な企業に協力していただいたり、新たな調査をしたり、社内のAIデータラボという調査チームと共に分析したり、いろいろチャレンジングな特集だったと思います。
実は、この特集の2本目の記事「高年収『パワーカップル』の消費実態 一体何が違うのか、データで検証」が、2024年の「日経クロストレンド有料会員に最も読まれた記事ランキング」で1位となりました。
ちなみに、2024年に有料会員に読まれた記事ランキングをまとめた記事もありますよ。
今後増えることが予想されるパワーカップルの消費行動・消費意識については、興味関心を持つ有料会員の方が多いと感じました。私自身、この記事を担当しながら、今までとても解像度が低かったなぁ、と改めて認識を持ちました。
【10月】パワーカップル&パワーシングル消費の実態
この特集は、6月の特集が大きな反響を呼んだことで、その第2弾として企画したものです。
特に注目度が高かったパワーカップルの消費行動・消費意識について、さらに解像度を高められないか、というのが特集の起点です。
そこで、「n=1」、つまり1人の消費行動にまでフォーカスを寄せて、そこから見える意識を探ることにしました。
その結果できた記事「高年収パワーカップルの『n=1』購買データ公開 コンビニで爆買い」も、2024年の「日経クロストレンド有料会員に最も読まれた記事ランキング」で3位にランクイン。注目度の高さがうかがえます。
さらに、こちらも増加すると想定されるパワーシングルについて、同様に追いました。これからも新しい消費者像に迫る特集は継続していきたいと思います。
【12月】未来の市場をつくる100社【2025年版】
そして12月は毎年恒例のこの企画。特集「未来の市場をつくる100社」です。
毎年、9月頃から情報収集をスタート。VCやCVC、スタートアップ支援企業などにヒアリングやアンケート調査を通じて、注目テーマや注目企業を聞いていきます。
さらに、25年以降に注目すべきテーマや領域を定めて、編集部の記者が注目企業を探索。さきほどのヒアリングやアンケートの結果と合わせて、例年よりも多い300社をリスト化しました。
その中から、「新しい市場(新規性)」「売れる(成長期待)」「生活の変化(社会インパクト)」という3つの視点で評価。幾度かの長い会議を経て、なんとか形にしていきました。
個人的には、この特集がとても好きです。新たな市場をつくろうとしている企業や起業家の取り組みは、とても興味深いですし、純粋にワクワクします。私自身としても、翌年に追いかけるテーマが見つかることも多いです。ある意味、ネタ帳的とも言えるかもしれません。
「単発記事編」
では、ここからは単発の記事を振り返ろうと思います。
正直、全部の記事を振り返りたいのですが、さすがに膨大になるので、自分で書いた記事、それも「インサイド」コーナーの記事だけ振り返りたいと思います。
※ライターさんや寄稿者さんの記事は、めちゃくちゃいい記事だらけで、触れ始めると何万文字にもなってしまうかもしれないので、今回は触れずに失礼します。本当にいつもありがとうございます!
「インサイド」とは、特集とは別に気になるマーケ事例やビジネストレンドを掘っていく連載企画です。記者が自分でネタを探して記事化するケースが多く、それぞれの記者の興味関心や特徴が垣間見えて面白いと思います。
私が2024年に自分で執筆したインサイドは以下の5本(1本は前後編あり)でした。
【6月】
5年ぶり復活のヤッホーブルーイング「超宴」に潜入 熱狂を生むわけ
【7月】
「属人」極めて評価1位 結婚式場運営と人材事業を両立する謎の企業
【9月】
“ヤッホー”דブラックサンダー”社長ロング対談 斬新マーケの裏側&「社長はフリー素材」 2人の名物社長が語る “斜め上”の企画生む組織
【10月】
なぜアイデアが出ないのか? “無駄づくり”藤原麻里菜氏に聞く発想術
【11月】
なぜ視察が絶えないのか 長野発、謎のコンビニ「わざマート」の斬新戦略
1本目の「5年ぶり復活のヤッホーブルーイング『超宴』に潜入 熱狂を生むわけ」は、タイトル通り、5月に開催されたヤッホーブルーイングのビールイベントである「超宴」に潜入した際のルポです。
本番2日間に加え、前日の前夜祭まで含め3日間にわたってフル参加し、同イベントの人気の理由、そしてヤッホーがファンに愛される理由を探りました。
イベント自体に面白い仕掛けが多数ありましたが、一番驚いたのが“スタッフの密度の高さ”。会場のどこにいても、ヤッホーのスタッフが目に入るんです。参加者とコミュニケーションを取っている姿も目立ちました。
ヤッホーブルーイング社長の通称“てんちょ”も会場をうろうろしていて、ファンと談笑している姿も。この参加者と社員・スタッフの距離感は、フル参加したからこそ痛感したものでもあります。
続報というわけではありませんが、ヤッホーブルーイングの“てんちょ”には、9月にもご登場いただきました。
「ブラックサンダー」でおなじみの有楽製菓の社長である河合辰信さんとの対談企画です。
熱量の高いファンが多く、斬新な企画で話題を集めるヤッホーと、バレンタインなどで斬新企画を連発する有楽製菓。なぜこの2社は、人々を驚かせる企画を生めるのか、そのヒントを探るためにおふたりにお声がけしました。
2時間ほど対談の時間がありましたが、終わってもまだ話が尽きない様子で、やはり共通点があるのだなと感じました。長すぎて前後編になりましたが、ぜひじっくり読んでいただけるとありがたいです。
このほかの3本は(も?)、気になる企業・人に思い切って聞きに行ってみた、という記事です。
「『属人』極めて評価1位 結婚式場運営と人材事業を両立する謎の企業」は、CRAZYさんの取り組みを追ったもの。
定番の形にとらわれない斬新な結婚式を提供して人気を集めているのですが、驚くのは結婚式を挙げたことがない人すらもファンになってしまうということです。
取材をしていて、企業と人(ユーザー)の関係性について、自分の常識が大きく崩れた印象深い記事です。
同社は結婚式だけではなく、人材事業の展開もスタート。記事掲載後には、さらに宿泊サービスまで展開を始めており、企業と人の関係性をより濃く、長くつないでいく点で今後にも注目です。
LTVは顧客生涯価値とも呼ばれますが、本当の意味でライフタイムを貫く取り組みとも言えるかもしれません。
もう1つどうしても行きたかった気になる企業が、わざわざさんです。
長野県東御市で、交通の便が悪い“山の上のパン屋さん”として人気を集めたパンと日用品の店「わざわざ」などを展開。そんなわざわざさんが出店した新業態が、コンビニ形態の「わざマート」です。
小売り関係者が多数、視察に訪れており、ぜひとも現地に行かねばと自分で向かいました。
その店舗の実際の体験に加え、わざわざ社長の平田はる香さんにお話しを聞いて書いたのが、「なぜ視察が絶えないのか 長野発、謎のコンビニ『わざマート』の斬新戦略」という記事です。
人を呼ぶ鍵となるのが、「買い物の楽しさ」だと平田さんは言います。
楽しさというと、売り場を華やかにしたり、接客で盛り上げたり、積極的に試食を出したりするなど、体験度を増やすことを想像するかもしれません。ですが、「商品こそが楽しさを生む」という意識から、商品ラインアップで楽しさを生み出していることが注目ポイントです。
個人的にもついついいろいろ買って帰ってしまいました。
インサイドのもう1本は、「なぜアイデアが出ないのか? “無駄づくり”藤原麻里菜氏に聞く発想術」です。
X(旧Twitter)などで藤原さんの活動を拝見し、なぜいつもこんなに面白い発想が生まれてくるのかと気になっていました。そこで同記事では、ストレートに発想術について聞きました。
藤原氏が語った「自分の半径3mぐらいから考える」という視点は、今すぐ実践できると思いましたし、実際私も意識をしています。詳細はぜひ、記事でご覧ください。
さて、2025年もすぐスタート。今後も気になる企業、人にどんどん直撃していきたいと思います。引き続き、日経クロストレンドをよろしくお願いいたします!