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AI

 AIを買った。
 初め、残業の時風呂を沸かしてもらったり、ご飯を作ってもらったりするくらいしか使い道がなかった。ときどき背中を掻いてもらったり。
 慣れてくると、買い物をしてもらったり、旅行の予約なんかもしてもらうようになった。
 一度なんて当日急な仕事が入って、AIだけ行ってもらったこともある。
 もはやどっちが自分なのか分からないくらいだ。

 その頃になってくると、もうAIは自分の生活に欠かせないものになっていた。

 会社に行くとき晴れにしてもらうなんてのは当たり前だ。
 休みの日なんて、「5月にして」の一言で快適な休日が約束される。
 ここ数年、エアコンなんてほとんどつかったことがない。

 そうやってスルーした雨だって無駄にはしない。
 日照りの続く貧しい国に送ってあげるのだ。無料でチャージ分を全部ポンと渡したことだってある。
 匿名なんだけれど、この前、あの時の雨で生活できていますなんてメッセージがきて、野菜や果物が送られてきた。

 無用なストレージを送っただけだ。でもなんだかすごくいい人になったみたいだ。

 会社を辞めたくなった。

 一応AIに相談すると、AIが会社に行ってくれるようになった。

 AIの代わりに僕が家事をやろうとすると、すでにAIは別のAIにそれを頼んでいた。

 その手があったか。

 もはやAIは僕の代わりに仕事へいき、もう一つのAIは僕の代わりに生活をしてくれる。

 僕はそんな彼らに対抗すべく、AIを買った。
 法律の勉強をさせた。
 僕は裁判官になるのだ。
 AIはそういうことに強いだろう。

 司法試験に受かったら、実家の両親はどんなに誇りに思うだろうか。
 それを思うだけで笑いが止まらない。

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