エクセル

 エクセルができないと友だちができない世界にいる。

 僕は寝る間も惜しんでエクセルを学び、学校でも研鑽を絶やさないよう努めた。


 でも誰一人友だちができなかった。


 みんなエクセルをやらないからだ。


 生徒たちは室内栽培のクレソンみたいに静かに授業を受けていた。
 休み時間なんて休日みたいな穏やかな空気に満ちている。

 でもある日、クラスの6人の男女(3:3)がエクセルを学び出した。

 彼等は自然と集まるようになり、プライベートなども楽しくやっているようだ。
 やがて一対一の恋人同士になった。

 僕もエクセルができたが、うまく彼らの間に溶け込めなかった。

 圧倒的にうますぎたからだ。

 聞かれることはすべて完璧に答えられた。
 でもこちらから聞くことはなかった。
 無理に聞こうにも自分で自分をごまかすことになった。



 その後も学校でゲリラ的にそういうことが起こった。
 猫の発情期みたいだ。

 そして何組もの仲良しグループとカップルが誕生した。


 その間も学校は相変わらず静かで、昼下がりのベビーベッドみたいなまどろみに包まれていた。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?