朝のまどろみ
「起きなさい」
母の言葉と共に私の朝は始まる。私は朝が弱く、自分の力で意思で起きるのが難しい。だから誰かの力が必要なのだ。声の力が必要なのだ。
「起きなさい」
また母の声が私を呼ぶ。引っ張られるように。声の引力に。私はその引力に引っ張られるように体を起こす。まどろみの中、意識を取り戻し、そして周りを見回す。そこには誰もいない。ただ何もいない空間の中から母の声が私を呼ぶ。
「起きなさい」
と。私の母は既にこの世にいない。けれど声だけは昔のまま私を呼び起こす。永遠に。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?