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【ミャンマークーデター】二重政権に?CRPHとSACについて解説

今回は、ミャンマーの情報を追っている方なら聞いたことがあるかもしれない、
「CRPH」と「SAC」についてです。

1、CRPHとSAC政権とは

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2月1日にクーデター発生以降、ミャンマーでは、

CRPHという独自組織
「ミャンマー連邦議会代表委員会
(Committee Representing Pyidaungsu Hluttaw)」

が発足されました。

CRPHは、アウンサンスーチー氏率いる
NLD政権(国民民主連盟)の議員で構成されている組織です。

正式な「政権」というよりも「臨時政府」としての存在です。

昨年2020年11月の選挙で
NLDに当選した議員15名と
少数民族政党の議員2名
で成り立っています。

今は、CRPHは少数民族の武装勢力を味方につけようと
Dr Sa Saという人物(次期大統領候補?)と動いています。

Dr SaSaに関してはとても面白い人物!
なので別の機会で改めてご紹介します。

ちなみに、CDMを促進しているのもCRPH側です。

SACとは、
「国家行政評議会」のことで
ミンアウンフライン国軍最高司令官が
トップとする最高統治機関
です。

SACのメンバーは、軍人8人、文民8人という構成で

文民が半数を占めているのが特徴的です。

文民メンバーには、元NLD党員や少数民族出身者が含まれています。

過去のクーデターでは、軍人のみの評議会結成でしたが、

今回は文民を含み、多様性を配慮しているようなアピールも行われています。

ただ、この文民メンバーの方がSACの中でどのくらい決定権を持っているかは不明です。

なので、表面上は文民を含んでいるものの、決議等は軍人中心、となっている可能性の方が高いかもしれません。

簡単に伝えると、

・SACは国軍側
・CRPHはNLD含む民主側

というSAC政権・CRPH政権の二重政権という構造が今のミャンマーでは生まれました。

2、二重政権状態と国際社会の反応は?

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もちろん、国民は、CRPHを支持します。

外国人含め軍側のSACを支持する人がいるとは思えません。

欧州は、CRPHを支持すると表明もしています。

国民側は、国際社会にCRPHを支持してほしい、
とfacebookやTwitterで訴えています。

この軍の暴走がエスカレートした段階で
「SACを支持する」
ということがあるのだろうか・・・・

と思いますが、

国際社会では、CRPHを正式政府として認めるにはまだ至っていません。

その理由としては、

・NLD政権の閣僚の大半が拘束中で組織に加わっていない

・構成メンバーがNLD所属者に偏っている

・行政機構がない

などが挙げられています。

これらを受けて、
「全ての少数民族が参加する組織」
になることが国連や国際社会に正当な政府として認められる

ということもあり、DrSaSaという医師が少数民族との対話を進めている真っ最中です。

しかし、
「拘束中の閣僚が加わること」
が正式政府としての条件であれば道のりが長いですね。。

仮に、CRPHが正式政府として認められても国軍の弾圧が収まるとも思えないので難しい問題です。

今は、国際社会にCRPHが正式政府として認められるよりも
国連の武力による介入を求めている傾向にあります。

国軍側としても国連に政府として公認されず、
国内統治もままならず
CRPHを反逆罪として弾圧を強めています。

CRPHの議員・閣僚・NLD関係者を
血眼で夜中探し回る・・・

ということが起きています。

弾圧でしか国を治めることを考えない政府が公認されるわけにはいきません。

3、CRPHの政策と二重政権の影響

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実際に、CRPHが行なっていることは
何でしょうか。

大きなことはこの3つ。

・少数民族武装勢力との和解・協力
・CDMの促進
・2008年憲法の廃止と新憲法の制定

です。

*少数民族との和解・協力

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先にも書いたDr SaSaという人物が
中心となって動いています。

ミャンマーには138の民族がありますが、
ロヒンギャ問題など含め少数民族との争い、内戦は、戦後から長く続いていました。

今は停戦中という位置付けです。

一例ですが、

国軍(ビルマ族)VS カチン族(など少数武装勢力)

という、少数民族にとっても
国軍は敵です。

しかし、だからと言って多くのビルマ族に好意的かといえばそういうわけでもないそうです。

少数民族に関してはあまり詳しくないので専門の方に聞いて、別で記事を書こうと思います。

現状は、

共通的(国軍)に対して
CRPH(民衆側)と少数民族、少数民族の武装勢力と
協力体制を作る

ということで
DrSaSaを中心に動いています。

まだ正式な決定はないと思いますが、

CRPHの後ろに、
少数民族の武装勢力がつく

ということです。

CRPH側が「武力」を持つということを意味するので内戦になることも囁かれています。

(ただ、少数民族は自分たちのエリアから出てまでは内戦することはない、という意見もあります。)

この少数民族と武装勢力の動向は今後注目するべき点かもしれません。

*CDM促進について

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国軍側は、CDM(市民不服従運動)に
参加する公務員に対して
弾圧、拘束、発砲をしていますが、

CRPH側は

「徹底的にCDMを行うように」

と公務員に通達しています。

CDMに参加しない公務員は国軍側とみなしたり、
市民が公務員を出勤されないようにしたりなども一部あります。

CDM参加する人
=CRPH側

CDM参加しない人
=国軍側

という少し極端になりつつもありました。

公務員の大半は、CDMしたいし、CRPH側でもあるはずですが、
やはり国民のための業務ももちろんあります。

外国人にとっても例外ではありません。


ミャンマー在住外国人にとっては
ビザの申請は入国管理局に行く必要がありますが、

CDMされてしまうとビザ更新ができません。

期限切れてしまえばこれまでのように罰金で済まなくなるかもしれません。

不法滞在として逮捕される可能性もあります。

先週、入国管理局に行った際は全員私服で、
奥の小部屋で一見わからない場所で申請手続きが可能でした。

隠れてこっそり、CRPHに怯えながらも業務を遂行している

という雰囲気でした。。

彼らにとってもCRPH側につきたくても、公務員業務を行うことで
CRPHからは国軍派だと思われてしまうからです。

急遽クローズになることもあるそうです。

そんな中、外国人のビザ申請やってくれて本当に感謝です。

私個人としても、CRPHは支持していますし、CDMによる効果も実感していますが

やはり最低限の業務は必要ですよね。。

CDM参加が、周りや上からの同調圧力ではなく、
自分自身の信念に基づいて決めることが
民主主義のあり方ではないか、と
思います。

なので、ここ最近のCRPHの極端な通達には若干の違和感も感じていた部分でもあります。

*新憲法の制定

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4月1日にCRPHは2008年憲法の廃止を、新憲法の草案を発表しました。

今後、具体的に新憲法のドラフトや国民会議に入っていくと考えられます。

2008年憲法は、国軍優位の憲法の内容となっており
今回のクーデターの諸悪の根源となっているものです。

・クーデターを起こすことができる
・議会の25%は軍人が占める
・75%以上の賛成がないと憲法改正は認められない

などです。

それらを廃止し、

・統一政府を作っていくこと
・国軍を政治関与させないこと

を新憲法には盛り込んでいくと考えられます。

しかし、憲法の制定には、国民投票が必要ですが、

国軍の政治関与を認めない新憲法を
国軍が認めるわけありません。

何らかの形で国民投票が妨害されたり、

新憲法を認めない動きをするでしょう。

また、少数民族との関係性も気になります。

今は、共通的が国軍であるので、協力し合う方向にありますが、
共通的がいなくなったら、お互いの目標は異なります。

少数民族武装勢力:自治権が欲しい
CRPH(大多数のミャンマー人):統一政府を目指す

など、目標とするものも異なり、少数民族側は
ビルマ族に対して嫌悪感も抱いているので
そう簡単に和解し、統一政府となるかは疑問です。

それらを踏まえると
今後の新憲法の制定には、

・国民投票ができるかどうか
・少数民族との和解、協力、統一政府

が、課題になってきそうです。

CRPHの通達として他にも、

・国軍をテロ組織と認定
・国軍兵士や治安警察を
 国家公務員ではないと通達
・2月以降の電気代支払い免除
・税金猶予など(納税を延長)

国民側にたった通達が多く出されています。

影響は多岐に渡りますが、外国人にとっては

法律的に、どちらの政権の指示に従うべきか
悩みどころでもあります。

法律家の意見としては、
CRPHが出している法律は法律として認めるには
現実的には弱い
、という面があるとのこと。

・法人税を納税しなければ
 次のビザの更新や会社の存続ができない可能性

・クーデターによって休業/撤退したいが
 その手続きはどちらに従うべきか。

・銀行のCDMによって
 給料支払いできない

・納税すべきか、しないべきか

・新規投資案件の中止

など、経営者にとっては

ビジネスの存続以外の悩みの方が
今は大きいかもしれません。

以上、CRPHとSACの二重政権について書きました。

国際社会がCRPHを認め、CRPHが本格的に憲法制定に動き出せば、
国軍側も黙っていないでしょう。
さらに弾圧が過激になる可能性もあります。

私たち日本人ができることとしては、

・日本人の税金で国軍の利益になることを止めること
・日本政府にCRPHをミャンマーの政府として認めてもらうよう議員に動いてもらうこと

この2つを国会・議員の方々に訴え続ける必要があります。

幸いにも、議員連盟とCRPHの対話があったと聞きました。

政治と個人は繋がっています。

毎週末ビラ配りや、国連・外務省前でのミャンマー人のデモ活動が
議員を動かすことに繋がっているのではないでしょうか。

ぜひ、日本在住の方も、ミャンマー人個人の方の声を聞いていただけたら嬉しいです。

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