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あの子の日記 「さめないで」

日本のどこかの、誰かの1日を切り取った短篇日記集

良くないことした。お酒に飲まれてたというか、雰囲気に流されたというか。佐伯さんには彼女がいるって知ってたのに、本当ごめんなさい。

今日みたいに大学サークルで仲良かった5人が集まるときは、楽しく飲んで健全な時間に解散するのがいつもの流れ。だけど今日はちょっと違って、こっそり佐伯さんと2人でバーに行ったの。

バーへ向かう道中ちょっと距離が近いなとは思ったけど、この距離感を楽しんでたのが正直なところ。

佐伯さんは大学時代から頼もしい先輩って感じで、老若男女問わず誰からでも好かれるタイプの人だった。恋愛感情を抱いたことはなかったけど、2人でいるとなんだかすごく落ち着いた。

彼氏と別れたばかりの私は、心にぽっかり穴が空いたとまでは言わないけど、多少なりとも喪失感はあったんだよね。それを何かで埋めたくて、佐伯さんを受け入れてしまった。

バーを出てから一緒に駅へ歩いて向かって、電車が来るまで改札前のベンチに座って話をした。もうこのまま電車なんて来なければいいと思った。

肩と肩が触れて、横を向くと佐伯さんの顔がすぐそばにあった。自然な流れで肩を引き寄せられ、キスをした。

どのくらい時間がたっていたのか分からないけど、はっと我に返ったときにはもう手遅れ。超えちゃいけない一線を超えてしまったから。

「ごめん」と謝る佐伯さんの切ない表情の向こうには、どんな気持ちが隠れていたんだろう。

私と反対方向に進んでいく電車に乗るあなたは、今どんなことを考えているんだろう。

あたまのネジが何個か抜けちゃったので、ホームセンターで調達したいです。